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対立:誤解

 夜。俺はクレアの諜報能力を知ってなお、外に出ていた。

 いや、言い訳をさせてほしい。

 だってリカルドの働きぶり気になるじゃん!?

 幻惑の瞳の効果を信じていないわけじゃないよ。

 でもなんていうか、上に立つものとして?

 あと俺が覇者として単に裏で動かれるよりも自分が知っておいた方が、全てがうまくいったときに気持ちいいし?

 それにリカルドの動きってのは把握しておいた方がいいと思うんだよね、影の覇者として。


 さーて、リカルド……また俺のご都合主義パワーが発動して運よくリカルドを一方的に――お、いたわ。

 ふ、俺も主人公が板についてきたな。

 さてさて、リカルドのヤツは……お、やっぱり同じ方向に向かってるな。こりゃ地下の方向だ。

 ふ、配下の働きぶりを見るのも覇者としてのつとめ。少し……いやかなり眠いが体にムチ打ってでも見に行くべきだな。

 はぁ、俺って配下思いで優しすぎるぜ。ま、リカルドは昼間も俺のためにしっかり働き、しかも影の覇者ムーブの手助けともいえるべき素晴らしい毒舌を披露してくれたしな。

 ここまでの忠犬、多少は報いてやる必要がある。この俺がリカルドの行動を見てやる、という最高の褒美を、な。


 おっと危ない。

 リカルドが振り向く直前に足がもつれて影に隠れたままになった。リカルドには俺の様子は見えていないだろうな。

 勘が良ければもしかしたら尾行されてるかも、となるかもしれないが俺とはわからないはずだ。

 こういう偶然、それが主人公ムーブができる才能だな。

 まあバレてしまっても良いんだが、できれば覇者としては配下の自主性というものは大事にしたい。

 俺に見られて俺の指示を待つ……そんな配下はいらない。だからこそ、俺は影に見守るに徹したいのだ。

 さて、ここまで同じ道ってことは、昨日の地下に行くんだろうな。ならば俺も配下の自主性というやつを尊重してやろう。

 影からの褒美だ、受け取れ。

 そして同時に俺に仕えることの喜びも味わわせてやるとしよう。


『幻惑の瞳』発動。

 リカルド、お前望むまま、俺のために行動するのだ。


 そう念じるとリカルドはさっそく俺の方を見るのをやめて地下へと進んでいく。

 うむ、素晴らしい忠犬よ。

 そのままがんばれよ、リカルド。


 さて、自主性を重んじるというのも大事だし、俺はそろそろ戻るとするかな。さすがに二日連続は眠いぜ。

 昼寝……? 別腹だ。





 夜は遅く朝が早い。

 転生してからというもの、俺の体が16歳の女の子であるためか、夜遅いと凄く眠い。

 つまり何が言いたいかという、朝から下らない人類滅亡対策会議(笑)に駆り出された俺は今すごく眠いということだ。

 そういえば昨日は途中で退席したけど、昨日から配置変わってたか?

 オッサンばっかりだからわからないけど、もしかしてこいつら会議室から動けない呪いでもかかってんのか?


「……アリシア様、とても眠そうですね」

「あ、クレアわかる? そうなんだよね。会議退屈だし」


 長年(二日)の付き合いのあるクレアにはさすがに俺の眠気はバレてしまったか。


「そうですか、アリシア様。あとでお話がありますので」

「え? 今話しなよ」

「いえ、後にさせて下さい」


 なんだよ、気になるじゃないか。

 やれやれ、焦らしプレイか。俺は恋愛経験ゼロだからそういう高度なプレイはできないんだぜ?

 気になってソワソワする。


「それはそれとしてアリシア様」

「なに?」

「たとえ退屈であっても会議の内容はしっかりとお聞きください。人類の状況はわかっていますよね?」


 そりゃわかってるさ、わかってるけどもうすぐ片付くからなぁ。

 とはいえ今の時点でクレアに悟られたらなんかかっこ悪いし、とりあえず適当に返事しとくかな。


「うーん、わかったよ、クレア。ちゃんとする」


 って返事してもな。意味ない会議なんてつまらないものないし。なんなら興味のカケラもないし。

 どうしたもんか。

 リカルド良い感じにやってくれるし……リカルド、そうか。

 あいつ昨日も夜遅かったしあんまり体使って壊されても困るしな。

 よっしゃ、ここは覇者ムーブかまして配下をねぎらってやるか。

 ただ直接はダメだ。そう、なんとなく濁して「もしかして俺のことじゃね?」ってリカルドに察してもらう。

 自主性もそうだが考える力って大事だからな。俺っていい支配者になれそう。


「夜更かしはダメだよ~」


 ふ、意味深。

 どうだ、リカルド。通じるか?

 俺はリカルドの方を見てニヤリ、と笑う。するとリカルドはやはり顔を強張らせる。だからなんでだよ、おい。喜べよ。

 しかしすぐにお得意の貴族の仮面、冷徹微笑を浮かべて俺に向かって答えてきた。


「いえいえ、アリシア様こそお体にはお気を付けください。女王陛下?」


 さすがだ。俺の高度な誉め言葉、綺麗に反応するお前はやはり逸材だよ。

 配下としてこれからも存分に活躍するがいい!


「しかし現在の会議も煮詰まり有益な対策が立てきれませんね……私は行きますよ」


 おっと、ここでまさかのリカルドフェードアウト宣言。

 同時に何人かからヤジが飛ぶ。

 だが信じてるぜ、お前は俺のために働いている……そうだろ?

 俺はニヤリ、と再びリカルドに向けて笑う。すると相変わらずリカルドは顔を強張らせた。お前もしかしてそれが笑ってるってことなの?

 しかしすぐにその強張らせた顔を背けて会議室の出口へと向かい、最後に背で語りかけてきた。


「ああ、そうそう。夜更かしをしなくても、あなたが王座に座っている限り、この国の未来は暗いですがね」


 おいおい、サービスしすぎだろ!?

 そんなこと言われたら、ますます表の俺の無能っぷりを感じさせちゃうじゃないか。

 ほら、見ろよ。俺の横にいるクレアが美人顔をすごく歪ませてるよ。もったいない。俺の横でニコニコしててよ。


「ま、どちらにしろこれで安心だね」


 リカルドが扉を閉めると同時につぶやいた。


「アリシア様、どういうことですか?」

「うーん、秘密かな」

「……今の私にも、でしょうか?」

「そうだね」

「……わかりました。こういった時のアリシア様はたいてい闇の力を宿しておりますから信じましょう。以前のことを覚えていますか?」


 え、待って。どういうこと?

 闇の力って何?

 また故アリシアの厨二病エピソードが出てくるわけ!?

 どれだけ黒歴史抱えてるんだよ。


「え、うん……まあ」


 俺が答えるとクレアは自分の世界に入ってぶつぶつとつぶやきだした。

 聞いてみたい……が、俺が悶絶しそうだから今日はやめておこう。



 そういえば、こそこそ話していたリカルド一派の貴族たちもいたな。

 えーっと確か……アズリューク家だっけ。

 いちおう上は抑えたが万が一ってこともある。最上位である俺が少し注意を払っておいてやるとするか。


「そういえば君たち国家転覆は狙っちゃだめだよ」

「は!? な、なにを仰るのですかアリシア様!?」


 おっと、この反応。やれやれリカルドのヤツも抜けてるところあるじゃないか。

 まったく、アズリューク家をしっかり管理しろよな。


「やれやれ、何って『次の満月の夜は楽しみですね』これでわかるだろう?」

「あ、ああ。聞いていらしたのですか……あれは私たちのパーティーの話でして、それ以上に特に何もないのですが……」


 ……ん?

 どういうこと?

 まてまて、それって演技だよな?


「えーっと……?」

「ですから、私たちのパーティーの話ですので……アリシア様もこれからご招待しようかと」


 え、待って。

 マジで?

 隠語じゃないの?

 ご招待って国家転覆に女王呼んじゃダメだろそれ!?


 ってことは本当に……


「だから言ったではありませんか、アリシア様」


 クレアがめっちゃドヤってる。


「あ、あはは……うん。お願い……」


 もしかして俺、やっちゃった?

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