「あれ?クエスト、やってない……?」勇者(魔王討伐後)、クエスト全クリアの旅へ
「ぐああああああああ!!」
魔王の断末魔が響きわたる。
「終わったのね…!私たちの戦い!」
隣には魔法使いのリーシャ。
「ああ。終わったんだ……!」
俺は魔王討伐の喜びを噛み締めていた。
だが、あることに気付く。
「ん?なんか忘れているような……あ」
「どうしたの?レイドくん」
「もしかして、俺達、クエスト受注しておいて全くクリアしてない……?」
魔王城を出たとき、俺達の間には気まずさだけが漂っていた。
「とりあえず、この溜まりに溜まったクエストをクリアしなくちゃなあ……」
現在450個のクエストを受注している。
「簡単なのは……収集と、モンスター討伐、探しもののクエストかな?」
「最初の国からこなしていくか……」
俺たちは最初の国へ向かった。
それから何十日も経った頃、クエストの数は半分になっていた。
「なんでこのアイテムだけ出ないんだよ!!時空魔法使って周回してるけど全然出ねぇ!」
「探しものっ……見えるのに……届かない……!」
「う〜〜、このモンスターあと何匹倒すのよ〜っ?」
こんなやり取りをしつつ、モブキャラから受注するクエストは全て終わらせた。だがここまではまだ簡単なほうである。本番は名前付きキャラクターから受注しているクエストだ。
「よ、よし……リセス姫のクエストを、クリアしに行くぞ……」
「お、おぉ〜〜」
もはや俺たちに張り切って動けるほどの気力はなかった。
それから何百日か経った。俺たちは、最後の国にいる。
「国王陛下、これが……お望みのものに、ございます……」
「大儀であったぞ」
クエストクリア!の文字が現れる。
「いぃよっしゃぁぁぁ!!クエスト全クリだー!!!!」
嬉しさのあまり飛び跳ねる。仲間たちと手を取り合う。これが本当の終わりだ!
喜んでいたのは彼らだけではなかった。
「うおおおおお!」
モニターの前で1人の少年が飛び跳ねた。
「うわ〜、クエストやってなかったことに気づいたときはビビったけど、なんとか終わってよかった〜」
しかし、少年はすぐに座り直すとこう告げた。
「これで2周目は終わりだな……それじゃあ、いつもの通りセーブデータ消去と行きましょうか!3周目は称号コンプリートだ!」
どうやら勇者の旅は全て消え去ってしまうようだ。
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短編になります。魔王討伐後に、今までのクエストをクリアしていなかったのを知った勇者は、いったいどんな気持ちだったのでしょう?