悪役なアイツを幸せにしたいッ!! 1-5
◇ ◇ ◇ ◇
大型ホール付近、修練場。
「最後のチャンスです。
謝罪して許しを請うのであれば、今のうちですよ??」
ユファメール嬢の護衛との決闘する事になり、その決闘相手をエドガーは向き合う中、ユファメールは最後の情けをエドガーにかけた。
「――ッ!
ご心配くださるのですかッ!?!?
こんな、庶民の私を…………、やはり、ユファメール嬢は、噂通りのお優しいお方ッ!!」
「くッ! ひ、人をおちょくるのもいい加減にしなさい!!
――騎士見習いと、四大貴族お抱えの護衛騎士。
私の騎士には、侮辱とも取れるような発言を貴方にされた大義名分もあります。
最悪の場合は、その命を散らすことになりますわよ?
後悔は、地獄でなさることねッ!!」
エドガーは1ミリも、馬鹿にするような意図なく、むしろ、何ともない庶民を、気遣ってくれる慈悲深い心を素直に称賛したつもりだったが、エドガーのそんな思いはユファメールには届くことなく、結果として火に油を注ぐ結果になっていた。
(――な、なんか、ものっ凄い嫌われてるな!
ユファメール嬢……、ゲームをシナリオを知り、彼女の魅力を知っているからこそ、ここまで拒絶されるのは、心に来るな……)
ベルモット程ではないが、『LOYERS』に登場するキャラクターの中では、トップ5に入るお気に入りのキャラクターだった為、明確な敵意を向けられると、ショックも大きかった。
そして、エドガーは自身が護衛対象としたい、一人の女性へと視線を向けた。
(――ベルモット嬢…………。
決闘を気にはしてくれてはいそうだけど……)
エドガーが悪目立ちをしたせいで、少し大きな騒ぎになってしまい、騒ぎを聞きつけた関係のない生徒までも修練場に訪れていた。
そして、たくさんの観客の中、ベルモットは一応当事者でもあったため、その決闘をつまらなそうに観戦していた。
「――君の獲物は??」
観客へと意識が向けられていたエドガーだったが、対戦相手である護衛騎士に声を掛けられ、意識がそちらに戻される。
「あ、あぁ、こちらです」
エドガーはそう答え、すでに腰に差した二振りの刀を相手に見せる。
「――――へぇ……。
珍しい剣だね?」
「遠い異国の物です。
といっても、大貴族お抱えのエリート騎士様は、ご存じかと思いますけど」
エドガーはそう言いながら、慣れた手つきで二本ある太刀の、長い方を抜いた。
雰囲気のあるエドガーの姿に、観客は息をのみ、スフォルツァ王国ではほとんど見られることのない、綺麗な刀身の剣に、小さく歓声が上がった。
「――う、美しい……」
「あれが噂に聞く、遠い東洋の異国で使われる、刀というものか……」
修練場でエドガーの決闘を見るベルモットの周りで、そんな観客の声があがり、その声は自然とベルモットの耳に入った。
「――確かに美しいわね……、剣は」
エドガーの獲物である刀は、退屈そうに見ていたベルモットの興味を少し引く物であった。
べ、ベルモット様は確か、お美しい物がお好きでしたよね?
エドガーの刀を見て、彼の言ったことをベルモットは思い出し、彼が見せたかった物は、それであったと気が付いた。
「護衛の選定もまだ終わっていないことですし、始めましょうか」
エドガーが剣を抜いたことを確認すると、ユファメールの護衛騎士は、そう一言、エドガーに告げ、構えを取った。
「ユファメール・ヴィ・ジュネヴィ様の護衛、アルフ。
今年のアルバレア剣術中等学園卒業生の出来を図るいい機会です。
手加減はしませんよ?」
アルフのその言葉を最後に、エドガー達の決闘の立ち合いを引き受けた、教官が開始の合図を叫んだ。