悪役なアイツを幸せにしたいッ!! 1-4
「貴方、今、自分が何を言ってるのかご存じ??」
「私の口から出た言葉です、よく存じておりますよ?」
呆れかえった様子のベルモットは、もう半分生気を感じられない目でエドガーを見つめて話し、逆にエドガーは活気ある瞳でベルモットを見つめ返し、きっぱりと答えた。
「貧乏面庶民……、アナタ何を言ってるのか、本当に分かってるの?
我がジュネヴィ家のお抱えの騎士を、力の証明に使うですって……?
コケにするのであれば、相手を選ぶべきよ??」
エドガーの言葉に、ユファメールは完全に頭にきており、庶民であるエドガーに、自分の名誉挽回の為に、騎士を貸してくれというような物言いが許せなかった。
しかし、ユファメールも貴族の振る舞いは崩す事無なく、先程、ホールに訪れた時のような、罵倒はされなかった。
「――はぁ~~、私は知らないわよ……」
ユファメールの様子を見て、ベルモットの怒りはいつの間に消え失せ、エドガーの提案した事は、まるで我関せずの態度へと変わっていった。
「ベルモット様、心配せずとも大丈夫です!
勝利を必ずお約束しますよッ」
「――あっそ…………」
ベルモットの興味半完全に消え失せ、もはやエドガーの事など、どうでもいいといった様子だった。
(い、いかんッ!! 望む展開になりつつあるのに、ベルベットの興味が無くなってしまったッ!!
これじゃあ、力の証明の意味がッ……)
別の危機が訪れ始めたエドガーは、ユファメールを一旦、放置しベルモットに再び声を掛ける。
「べ、ベルモット様は確か、お美しい物がお好きでしたよね?」
「――え、えぇ……、それが?」
「私の剣は、きっとベルモット様のお眼鏡に適うものだと、そう思っております。
身分も低く、不躾な私ですけれど、剣技だけは美しいと、そう自信を持っています!
――それだけでも、お楽しみにいただければと……」
「――――期待はしないで、見るだけ見ていたあげる」
「有りがたきお言葉ッ……」
一連の会話から、ほんの少しだけベルモットの興味を取り戻し、ベルモットの言葉にエドガーは感謝し、膝を付き、敬意を示した。
「――――あ、あなたッ……、一度だけでなく、二度もこの私に不敬をッ…………!
ぜ、絶対に許しません!!
学園長! 貴族へと冒涜は懲罰に当たります!!
いい機会です、果し合いは真剣にて行わせてもらいます!!
――――恥を描かせるだけでなく、ここで痛い目を見てもらうわよ? アホ面!!」
ユファメールは最後の最後で、お嬢様としての口調が崩れ、きっぱりとエドガーに敵意を見せた。
(とりあえずは、狙い通りだけど、相手が誰だか分かんないし……、令嬢の、しかもあの四大貴族に使えてる護衛だよな……?
俺、終わったかも…………)
何とか、ベルモットへアピールできる機会を得れたエドガーだったが、あまりの行き当たりばったり感満載の成り行きに、不安は大きくなるばかりだった。