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悪役のアイツを幸せにしたいッ!! 1-2


(ユファメール・ヴィ・ジュネヴィ。

スフォルツァ王国の大貴族の中でも、最も権力を持っているとされる、四つの貴族、四大貴族の一つ、ジュネヴィ家の令嬢。

いくら、俺がゲームの知識を待ち合わせているとはいえ、過度な失礼は、身を亡ぼすからな!

さっきの様にならないよう注意しないと……)


エドガーは、ユファメールの登場から数分後で、ようやく我を取り戻し、自分の行動の危うさを反省していた。


(勘違いしてはいけないのは、まず、この世界が乙女ゲームに似ているという事!

今後、どういった形で物語が進むにせよ、俺は主人公では無い。

ゲームやアニメに登場していた役柄では無い以上、ゲームと同じような進行をするのであれば、きっと命も簡単に消し飛ぶ。

まずは当初の目的を第一に行動しないと!!)


エドガーは気を引き締め、ゲームの知識を改めて確認していく。


(『LOYERSラバーズ』の頃の、ユファメールの立ち位置は、いわゆる悪役。

まぁ、このゲーム悪役であったとしても、作った人が良い人なのか、まったくもって憎たらしいキャラでは無いのだけれど、一応、ある特定のルートに入った際には、主人公の恋路の障害となる人物だ……。

端的に言えば、主人公と攻略対象であるキャラクターを取り合う形になるんだけど……、まぁ、ここに俺が関与する事にはならないだろうし、まだまだ先の話だ、ここは考えなくてもいいか……)


エドガーは一旦思考を区切り、丁度大規模ホールの入口まで、たどり着いていた。


「いよいよだなッ」


エドガーは高鳴る興奮と、緊張を感じながらも、意を決してホールの中へと入っていった。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「――――それでは! これより入学式閉会後、クラス分け、付き人決めを行うッ!!」


盛大な入学式を終え、入学式の半分以上を睡魔と戦っていたエドガーは、学園長の言葉でようやく眠気が冷め、待ちに待っていたイベントが始まる事から、自ずと気が引き締まった。


「クラス分けは、アルフォート学園の中庭に貼り紙にて貼りだす。

指定貴族女生徒とアルバレア剣術中等学園を卒業した者だけ、このホールに残るようにッ!!」


学園長の大号令により、入学式を終えた生徒達は一斉に動き出し、エドガーは学園長の指示通り、このホールへ留まった。


(いよいよクラス分けッ! 付き人決めだッ!!

ゲームの通りであれば、ここから俺は誰かの令嬢の付き人になる!

――今日、この為だけに俺は、あの厳しい剣術学園を好成績を収めながら卒業したんだッ!!)


エドガーは抑えきれない興奮を、胸の高鳴りを感じながら、その時をじっと待った。


アルフォート学園の一つの制度として、アルフォート学園に通う大物貴族の令嬢に、護衛役を必ず一人つけるというものがあった。


対象とされる令嬢は、学園側が選出し、指定貴族女生徒となった。


そして、その貴族生徒を護衛できるのが、アルバレア剣術中等学園の卒業者、10名となっていた。


(アルバレア剣術中等学園を卒業し、その卒業生の中で成績上位10名は、アルフォート学園へ入学する権利が自動的に得られる。

元々、アルバレア剣術中等学園は、アルフォート学園の貴族性を守るための、護衛となる生徒を育成するために作られた学校だしな……。

今は、教えてもらえる剣術の技術が凄すぎるせいで、守られる側である有名な貴族も、剣術を習いに入学している節もあるようだけど…………)


エドガーは自分の目的を果たす為に、貴族ではない身分でありながらも、上位10名以内の成績を残し、同じ卒業生の中で、5番目に優秀な成績を収めていた。


(アルバレア剣術中等学園の中じゃ、結構凄い方なんだけど、ここじゃ、10人中の5番手だからなぁ~~。

きちんとアピールしないと、お嬢様に選んで貰えないからな!!)


エドガーが気を引き締めると、間もなくホールには、10名の指定貴族の令嬢と、アルバレア剣術中等学園を卒業した、卒業生10名、何人かの学園の教員だけがホールに残った。


「――では、これより指定貴族生徒、護衛騎士の選定に入る!」


学園長の言葉で、遂にエドガーが待ち望んだ、選定式へと入っていった。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「アルバレア剣術中等学園 主席卒業 ユリウス・ヴァン・スフォルツァ!」


「――はいッ!!」


学園長の号令で、主席であるユリウスは返事を返す。


護衛の選定は、主席から行われ、どんどんと位が低くなるのが定例だった。


名前を呼ばれた生徒に、護衛にしたい令嬢が手を上げ、多数の希望が集中した場合は、号令のかかった生徒は後回しとなり、一通り、流れるように組み合わせを決めていく。


(ユリウス・ヴァン・スフォルツァ……。

その名の通り、ここスフォルツァ王国の王族に当たる人物……。

本来、守られる側の身でありながら、剣が立つことから、アルバレア剣術中等学園に推薦入学。

在学中も好成績を収め、遂には首席で卒業……。

王位継承権は第三位……、ここで護衛としてでも関係を持てば、卒業後の大きなパイプになるかもしてない人物)


清々しく、凛々しい男前なユリウスの横顔を見ながら、エドガーはユリウスの情報を再確認した。


(学園在学中は何度も話したことあるけど、マジでいい奴なんだよなぁ~~。

優男で頼りがいのある……、それでいて剣の腕も立つ!!

なによりイケメンッ!!

――――まぁ、ゲームの攻略対象の一人だし、目玉のキャラだったから当然なんだけどねぇ~~)


ユリウスと今の自分を比べ、段々と情けなく感じてきたエドガーは、今度はユリウスを護衛候補として、希望を示した令嬢に目を向ける。


(――こっちも原作通り…………。

ユリウスには、四大貴族の令嬢全員が、希望として立候補してる。

まぁ、王族なんだし、当然なんだけどね…………。

――――ただ………………)


エドガーは、冷静に状況を見つつ、他のまだ希望を上げていない令嬢に目を向ける。


そしてこの間も、学園長は定例通り、希望を聞いていき、既に三番目に好成績を収めた、生徒の名前が呼ばれていた。


(他の四大貴族の令嬢以外は、未だ候補を挙げず……。

これも、原作通りだな…………。

ここで好機と見て、高位の成績を持つ生徒に、希望を立候補すると後が怖い。

自分の家柄の方が身分が低いのに、四大貴族の令嬢の護衛騎士よりも、好成績の生徒を付き人にして見ろ……。

何されるか、分かったもんじゃ無いし、周りの目だってキツイ。

だから必然的に、四大貴族の令嬢以外の、令嬢が動くのは、5位以下の成績の生徒のみ……。

そして、5位以下で一番、有望な生徒は俺じゃない。

成績は良いかもしれないが、俺は身分が低すぎる……)


エドガーはこの日になるまでに、何度もシュミレーションしてきた事を、頭の中で反復し、これからの行動を考える。


(一週目の希望は、間違いなく流れる。

そして、次に護衛となる生徒の希望を聞く時間が訪れる。

そこで、俺が上手くアピールできれば!!!)


エドガーの予想は当たり、一週目ではろくに組み合わせが出来ず、二組のみしか組み合わせが決まらなかった。


「それでは、5番目の成績を残したエドガーよ!

貴殿の望む、護衛対象に主張を!」


「はいッ!」


エドガーは勢いよく返事を述べ、希望の令嬢の前へ移動する。


「――お、おい……、エドガー……、マジか……」


エドガーの向かった先を見て、アルバレア剣術中等学園で仲の良かった、成績6位のカリル・スピリットが小声で呟いた。


エドガーはその声が聞こえ、他の者達にもカリルの声が聞こえた者達がいたが、エドガーは希望の令嬢を変える事は無く、堂々と護衛対象としたい貴族令嬢の前に立つ。


「――ソフリヒオ出身のエドガーと申しまッ…………」


自信満々に自己紹介とアピールを始めたエドガーだったが、エドガーの主張は即刻、目の前の令嬢の声で遮られる。


「お断りよ? 5位で、しかも平民出身の護衛なんか」


エドガーの希望する令嬢、ベルモット・オルレリアン嬢は冷たく、きっぱりと言い放った。


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