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悪役なアイツを幸せにしたいッ!! 1-1


「遂にきた……、遂に来たぞぉぉおおおッこの時がッ!!」


アルフォート学園、校門。


春の訪れを告げる、ピンクの鮮やかなラノアの花が舞い散る中、一人の青年、エドガーは周りの目を気にすることなく大きな声で、喜びを噛みしめていた。


(長かった……、ほんと長かった…………。

俺がこのアルフレド大陸に生を受けてから、15年……。

この日の為に、毎日切磋を怠らず、この日の為に、剣術学校でも成績を収めてきた!!

――――そう……、この転生した世界で彼女、ベルモット・オルレリアン嬢に会う為に!)


エドガーは額から涙を流し、これまでの事を振り返った。


エドガーは、以前の生を日本で過ごしていた。


齢25歳という若い年齢で、日本での生を終え、気が付いた時には、アルフレドと呼ばれる大陸の、一市民として、生を受けていた。


そして、不思議な事にエドガーは生前、日本で生きていた時の記憶をそのまま覚えており、この世界が、日本で生きていた時に、触っていた乙女ゲームによく似ているという事に、ある時気が付いた。


物心が付き、自分で知識を集められるようになると、予感していた通り、プレイしていた乙女ゲームの世界観と、まったく同じだという事に気づき、その事に気付いたエドガーは、この世界でどうしてもやりたかった事を思い出した。


(超超大人気ゲーム『LOVERSラバーズ』!

乙女ゲームながら、あまりの人気にアニメ化!

そして、乙女ゲームなのに、シナリオの良さ、キャラの良さにより、男にまでウケてしまった伝説のゲーム!!

――俺もアニメから入った感じだけど、結局ゲームも買ってやったしなぁ~~~。

もう、ノベルゲームとして優秀だった!

まさか、そんな世界で生を受けてしまうとは…………。

LOVERSラバーズ』のファンの女子達……、あるいわ男子達よ……すまんなッ!)


エドガーはその場で立ち止まりながら、長々とこれまでの思いに馳せていたが、あまりの奇行っぷりに、流石に周りの目が気になりだし、我に返ると、気持ちを引き締め、高鳴る鼓動を感じながら、夢のアルフォート学園へと歩き出した。


アルフォート学園。


アルフレド大陸の中、スフォルツァ王国の王都、スツォードにアルフォート学園は設立されており、スフォルツァ王国の貴族の多くがこの学園へと通っていた。


学園の生徒はスフォルツァ王国の貴族だけでは無く、王国外、様々な国の貴族も留学している、アルフレド大陸内でも、随一の名誉を誇る学園であった。


アルフォート学園は三年生となっており、基本的には三年間の修学を、この学園ですることが義務付けられ、王国外の国の生徒の為に、学園寮も完備され、沢山の一流設備が備えられていた。


そして、アルフォート学園の一番の特徴として、才能ある若者の発掘も学園の方針の中にあり、貴族だけでは無く、身分の低い一般市民も、この学園に通う事が許されていた。


勿論、貴族よりも入学難易度は格段に高いが、何か突出する才能、あるいは優秀な頭脳を証明する事が出来れば、学園に入学することが出来た。


(ゲームじゃ、ある程度の背景しか用意されてなかったしなぁ~~。

こうして隅々まで見ると、やっぱすげぇよな? アルフォート学園って……)


本日執り行われる入学式に参加する為、学園の大規模ホールを目指して歩くエドガーは、学園を見渡しながら、学園を歩いた。


エドガーと同じように学園の施設に圧倒される生徒は少なくなく、感動をしているほとんどが一般生徒であり、貴族生徒は、大柄な施設に慣れているのか、わき目を振る事無く、メイドや執事といった付き人を携え、目的地へと歩いていた。


(こうしてみると、貴族生徒と一般生徒、一目瞭然だな……。

まぁ、そもそも制服からして、貴族と庶民じゃ、デザインが違うしな)


この入学式の立ち振る舞いからも、貴族と庶民を見分ける事は簡単だったが、そんな観察をせずとも、アルフォート学園の貴族と庶民の見分けは、とりわけ簡単にできた。


貴族生徒の制服は、白を基調としたゴージャスで、気品あふれる制服であり、一般生徒は、緑を基調した制服になっていた。


一般生徒の制服も、見た目は悪いものでは無いが、やはり貴族の物と比べると、見劣りしてしまう制服だった。


(アニメを見始めた当初は、格差なんて、嫌な学校だなとか思ったけど、教育制度、卒業後の社会的効力はかなりある学校なんだよな……。

一般生徒は、何かしらの才能に秀でた者であり、貴族はその才能ある一般生徒と交流を持ち、上手くいけば、将来お抱えの職人にしたりも出来る。

庶民が技術を、貴族は資金力を交渉に使い、成人した後の生活を大いに有意義に出来る。

まさしくWINWINの関係……。

設定も凝ってるゲームは良いゲームだよなぁ~~~)


エドガーは、昔プレイしたゲームの内容を思い出しては、感慨深く思い耽ていた、


「――ちょっと、どきなさいよ! アホずら!」


考え事をしながら、トボトボと歩いていたエドガーだったが、歩くのが遅かったのか、エドガーの後ろから、明らかに敵意を持った、女性の声が投げかけられた。


「あ、あぁ、すいませ…………って、えぇぇぇぇええええッ!?!?」


謝罪しながら、相手方を見たエドガーは、思いもよらぬ人物の登場に、思わず大声をあげてしまった。


エドガーの声が、耳に響いたのか、声を掛けた女性は、苦痛な表情を浮かべ、耳を塞ぎながら、エドガーに言葉を返す。


「う、うるさッ……、うるさいわよ! この貧乏面庶民ッ!!」


エドガーに声を掛けた女性は、スフォルツァ王国の貴族の中でも、最上位に入る程の権力を持つ、ジュネヴィ領の令嬢、ユファメール・ヴィ・ジュネヴィだった。


ユファメールは、茶色の長い髪を腰のあたりまですらりと伸び、貴族の中では珍しく、髪が波を打つようなカーブをしておらず、派手なウェーブをしてない代わりか、白い綺麗な花の模様を模した髪飾りが、耳の少し上あたりに装飾されていた。


顔は、可愛いよりはキレイ系よりの、整った、美しい見た目をしており、目つきが少しだけ鋭いせいか、少しだけ相手を威圧するような、そんな顔立ちだった。


(まつ毛なっがッ! 肌もすげぇ白い!!

身長は……、俺よりも低いし、身長差もあるんだろうけど、ヒールを履いてるからどれくらいの差があるかは、分からないな……。

――てか、まじでゲームのまんま! いや、ゲームより綺麗かも…………。

髪飾りは、相変わらず自分の領土を象徴する華、エルデルの白い花を模した物を付けてるんだな……)


エドガーは言葉を呑むような美しさを持つ令嬢に、ただただ呆然と立ち尽くし、そんなエドガーにユファメールは、苛立ちを感じ始める。


「ちょっと、聞いているの?

邪魔だと言ってるんだけど??」


「――――はッ! すいませんッ!! 今すぐどきます!!」


エドガーは内心、広い通路のでもあった為、躱すように迂回すればいいのではとも思ったが、そのプライドの高さこそが、彼女の象徴たる部分でもあった為、むしろ、退けと堂々と言われ、嬉しくもあった。


二度目の忠告で、ようやく道を開けたエドガーに、ユファメールは、フンッと鼻を鳴らし、エドガーの前を通り過ぎて行った。


(――か、かわええ……。

実は頭が可愛いそうな部分もある事も知ってるから、尚かわえぇ……)


ゲームの印象そのままのキャラクターだったためか、エドガーの目線は完全に、ゲームをプレイしていたプレイヤー側の目線になってしまい、どんな仕打ちを受けようとも、ユファメールの仕打ちであれば、喜んで受けれるような、そんな気すらしていた。


(俺、この学園に入学して、正気を保てる自信がないわ…………)


エドガーは、ユファメールの登場に、その後もしばらく感慨深く思いふけっていた。



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