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俺の許嫁は冷徹無双の天使様  作者: すずと
二年生

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89/197

体育祭(騎馬戦)

書いてたら楽しなって長くなりました。

共感していただけたら幸いです。

 現在の行われている種目は女子五十メートル走である。


 その様子を自軍のテントで見守る。


 確か、シオリが出ると言っていたが――あ、いたいた。

 他の人とは違う、一際輝くオーラを放つから彼女を簡単に見つけることができた。


 家を出て行く時は髪を結ってなかったが、やはり運動の時はポニーテールにしているみたいだ。


 出番は――まだ先のようだな。

 おそらく学年順に走るみたいで、その証拠にシオリの隣には元クラスメイトで図書委員の中野さんがいるし、逆隣には我がクラスの体育祭実行委員の近藤さんがいる。


「一色くん」


 ボーッと女子の姿を眺めていると聞き慣れない男子の声がした。

 振り向くと、クラスメイトの、岩谷、真島、笹浦が俺の前に立つ。


「ん? どうした?」


 クラスメイトとは仲良くないし、名前程度しか知らない仲なので、俺に用事があるなんて珍しい。


「いや」

「ほら、俺達」

「騎馬戦で同じチームだから」


 クラス仲は良くないが、こいつらは仲良く台詞を分けて言ってくる。


「あー! はいはいはい。次、騎馬戦だもんな。よろしく」


 笑いながら言うと「うん」「どうか」「よろしく」と言われて、三つ子かっ! ってツッコミそうになる。


「それで一色くん。どうする?」


 岩谷が聞いてくるので「ん?」と首を傾げると真島が答えてくれる。


「騎手か騎馬か」

「はいはいはい。ポジションね」


 そういえば、チームは適当に決まったが、騎馬戦でどの位置にしようか何も決まってなかった。

 当日に決めるのってどうなん? と思うがコミュニケーションを取ってない俺が悪い。


「どうしよう……。って、みんなは希望とかあるの?」


 こちらの質問に真っ先に答えたのは笹浦だった。


「俺は下が良い」


 彼の言葉を聞いて他の二人も「俺も」と声を重ねた。


 それから三人は俺をジーッと見つめてくる。


「え、ええっと……」

 

 六つの瞳は、空気を読め、と言わんばかりにプレッシャーを与えてくる。めっちゃ怖い。


「う、上……かな?」


 探るように答えると、六つの瞳は満足気に変わる。


「そうだよね」

「なんか一色くんは上な感じ」

「俺達をコキ使ってくれたまえ」


 あ、あははー。こいつら絡みにくい……。


 苦笑いを浮かべていると「あ、冷徹無双の天使様だ」と、三人のうちの誰かが零すように言ったので、視線を戻す。


 スタート地点に立っているポニーテール美少女は紛れもなくシオリだった。


「あれ? こっち見てる?」

「まさか。天使様が俺ら下民など見るはずなかろう。それにお前フラれてるし」

「う、うるへー」


 こ、ここにも犠牲者が……。流石は三桁キルの天使様だ。


 しかし……確かに彼等の言う通り、シオリは二年紅組のテントをチラチラ見ている気がする。


 もしかしたら、俺の事探してくれてるのかな?


 そう信じて、周りの様子を見ながら、こっそり誰にもバレないように手を振ると、プイッと顔を逸らされた。


 体育祭っていう非現実的な日常でも心変わりはしていないか……。


 ありゃ完璧に気が付いていたはずだ……。振り返してくれても良いいのに……。


 そんな俺の思いとは関係なく、スターターピストルの音が鳴り響き選手が一斉にスタートする。


 横並びのスタート。良い勝負だ。――ただ一人を除いて。


 シオリはスタートダッシュをかますと、二位と随分差を付けて中盤を超える。


『わあああぁぁぁ――』


 あまりにも速い為、ギャラリー達が声を上げる。


 そんな歓声に包まれながら、中盤辺りでシオリがチラリとこちらのテントを見てくるもんだから、にこっと微笑みかけてやる。


 がんばれ! シオリ!


 心の中で応援すると、俺の思いとは裏腹にシオリの足がもつれ――そのまま前転してしまう。


『あああぁぁぁ――』


 ギャラリーから声が漏れ出したが、彼女はその前転を利用し、まるで新体操部の様な身のこなしで勢いを利用して立ち上がって再び走り出した。


 運動神経どうなってんねん。


『おおおぉぉぉ――!!』


 ギャラリーの歓声が響く中、元々二位と差があったので余裕でゴール。


 あんなアクシデントがあったのにシオリは涼しい顔をして『一位』と書かれたフラッグをもらっている。


 そんなシオリと目が合ったので、親指を突き立ててやると、慌ててまた顔を逸らされた。


 ――ま、転けた事には変わらないから恥ずかしいっちゃ恥ずかしいか……。







 さて、男子全員強制参加の騎馬戦の時間がやってきた。


 岩谷、真島、笹浦の三人がトライアングルに並び、岩谷を先頭に、真島が左翼、笹浦が右翼に回る。


 そのトライアングルの中心に俺がお邪魔して一つの騎馬が完成した。


 紅組側のテント前で紅組の騎馬が、白組側のテント前で白組の騎馬が待機する。


 ここから二年白組のテントは離れているので良くは見えないが、そこにシオリがいるはずだ。


 さっきシオリの良い所を見せてもらった――まぁ転けてたけど、それは結果オーライ――次は俺がカッコ良く相手の騎馬を、しゅぱ! しゅぱぱ!! っと倒す所をぜひ見せたい。


「うう」

「ぐはっ」

「お、重い……」


 あ、無理っぽい……。


 俺の馬が既に限界点に達しており悲痛な声を出している。


「いや、早すぎだろっ!」

「が、頑張ルンバ……」と重なる三人の声。

「面白いかどうかは置いといて、三人の息はピッタリね!」


 そんなウチの事情などお構いなしにスタートを告げるピストルの音が響き渡った。


『行くぞおおお!』

『うおおおおお!』

『おらああああ!』


 筋肉先輩のかけ声が聞こえると、それに合わせて声を荒げる紅組は白組目掛けて縦横無尽に駆け出した。


 ――ただ一騎を除いて。


「はぁ……はぁ……」

「ぐぉ……」

「ぬんふっ」

「おいい! 歴戦を潜り抜けたみたいになってるけど今スタートだからね!?」


 我が馬は末期であった。


「そ、そんな事言われても……」

「俺達みたいなもやしに」

「下なんて無理さー」

「何で下を選択した!? 率先して下に行ったよね!? 俺気ぃ使ったよ!? 使った結果だよ!?」

「頑張ルンバ」

「面白くないから!! それ!!」


 なんやかんや言っても何とか頑張ってノロノロと真っ直ぐ移動してくれている。


 しかし、そんな様子だからカモと思われて、一年生に正面から狙われてしまう。


「へっ。雑魚やん」


 鼻で笑われて、完璧に舐められている。

 一年生の騎手は正面から手を伸ばしてきた。

 だが、舐めてかかってきてるから、俺はヒョイっと避けてそのままボクサーのジャブのように一年坊主の白いハチマキを奪う。


「――え?」

「いやいや。流石に今のは舐めすぎだろ」


 指でくるくるとハチマキを回しながら言ってやると「くそおお!」と心底悔しそうな声を出していた。


「お、おお。これいけるんじゃない?」

「一色くん、パネー。取りまくろうぜ!」

「神だよ」

「お前ら無理に喋らなくて良いから! 体力残しておきな! ホラ! 来るぞ!」


 次なる刺客がやってくる。


 そして先程の俺の攻撃を見ているからか、どうやら警戒しているようだ。


「向き! 向き変えて!」


 馬に指示をするが驚きの答えが返ってくる。


「隊長!」

「それは!」

「潰れたラーメン屋の土地にラーメン屋を作る位に無謀です!」

「どんな例え!?」


 また三人仲良く答えてくれる。


「悲しみの連鎖」

「つまり、俺達」

「腕が限界」

「遠回しがすげーわ! さっと答えろよ!」


 俺のツッコミでチャンスと思ったのか、後ろからこっそり近づいて来ていた騎馬が一気に間合いを詰めて来て腕を伸ばしてくる。


 それをノールックでかわしたので体勢が崩れた騎手のハチマキを奪う。

 それを見てか、先程から警戒していた騎馬が少し体勢の崩れた俺に向かってハチマキを奪いに来るので、俺は膝を曲げて軽く屈む。

「うっ!!」と三人のクリティカルダメージを受けたような声が聞こえたが無視して、空振りして体勢が崩れた相手のハチマキを奪う。


「――ふぅ」


 これで三つか……。


「『ふぅ』じゃねー! もう良いだろ!」

「もう十分だろ! 今ので取られてろよ!」

「悪魔だよ」

「サイコパスなん!? 言ってる事数秒前と真逆よ!?」


 いきなりの馬の反抗に俺は驚きを隠せない。


「うるせー! こんなんパワハラだ!」

「横暴だ! もう腕が限界つってんだろうがよ!」

「ワンマン野朗(野郎?)!」


 反抗を続ける馬に俺は言い放つ。


「ええい! やかましいぞっ! この駄馬がっ! とっとと走らんかい!」


 仲間割れをしている最中に「ふむ。次はここを落とすぞ」と聞きたくないイケメンボイスが聞こえてきた。


「冬馬か……お前は何体倒した?」


 聞くと「ふっ」と鼻で笑った後に、冬馬は口元に指を持っていく。


「お前は今まで食べたおにぎりの数を覚えているのか?」


 どこかで聞いたことのある言葉をノリノリで放つので、こいつ体育祭楽しんでるなぁと思ってしまう。


 そんな彼の手元を見ると三つのハチマキがあった。


「――貴様見ているな!? 今、貴様は俺の手を見て自分と同じだと思って少し安心したな? だがそれは違う! それは違うのだ! なぜなら未来は俺が――小次郎! 貴様の首をもらい、それで四つになるからなのだあああ!」


 場酔い?


 冬馬はどこぞのバトル漫画の悪役みたいに意味不明の台詞を吐いたかと思うと、そのまま両手で突きのラッシュをかましてくる。


「おらららららららららららららららららららららららららららららららららららら!」

「そっち!? 主人公サイド!? キャラ的に絶対、時を止める世界の人だと思ったよ」

「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!!」

「いや! なんで馬が声出してんだよ! この流れで出すの俺だろ! てか、すげー元気だなっ! 限界じゃねぇのかよ!? この駄馬っ!」


 そんなツッコミを入れている場合ではなかった。


 ツッコミが長すぎたのか、その一瞬の隙を見て冬馬は俺からハチマキを奪った。やはり、ツッコミは短めにスタイリッシュにするのが良いらしい。


「らあああ!」


 かけ声と共に取られたハチマキを天高く掲げられると「あ、隙あり」と紅組の人が冬馬のハチマキをさらっと取って行った。


「ノオオオオオオ!」


 キャラ崩壊しているな……冬馬……。


「俺は騎手をやめるぞ! こじょろぉ!!」

「黙っておりろや!」


 テンション高いな冬馬の奴。


 お互いのハチマキが取られたので騎馬を崩して地べたに降りる。


「倒す以外の力の使い方。それを探している」

「いやいや、負けてたから。力不足で」

「真の騎馬への道は果てしない」

「騎馬戦終わったよ?」

「俺はこの闘いを決して忘れない!」

「さっきからなんなのお前ら!? 確かに紅いハチマキしてるけどさ! 白の道着を着た人の勝った後の決め台詞言うなよ! 負けたからっ! 普通に負けたからっ! お前らボケが多いわっ! 捌けるかっ!」


 我が馬達は解放感からか、俺の事を無視して、まだゲームをしている邪魔にならない様に端っこに寄ってからスキップを始める。


 どんだけ嬉しいんだよ。


 それに続いて俺も端っこに寄る。


 その際、どうやら二年白組のテント前まで来ていたみたいなので、チラリとテントの方に目をやる。


「小次郎。何を堂々と敵軍の基地を見ているんだ?」


 見ていると冬馬が声をかけてくる。


「あ、ああ……」


 彼はニタリと笑って煽る様に言ってくる。


「なんだ? 七瀬川さんでも探してるのか?」

「――いないみたいだな」

「ん?」


 冬馬が自軍のテントを見ると「トイレじゃ?」と言ってくる。


「そうだと……良いんだけど……」


 冬馬の言う通り、たまたまいないだけかもしれないが、俺を避けてどこか違う場所にいるってのも考えられる。


 ――って……ダメだダメだ。最近上手くいってないからって思考がネガティブになってしまっている。


「おいおい。まだ喧嘩中か?」


 呆れた声で言われてしまい頭をかく。


「いや、喧嘩じゃ……」


 曖昧に答えると「はは」と軽く笑われてしまう。


「逃げられるんだっけか? それじゃ小次郎が追いかけないと」

「そりゃ……わかってっけど……」


 俺の弱々しい反応に冬馬は眼鏡をクイッとする。


「まぁなんにせよ、話合わないと始まらないぞ。――っと、忘れないうちに、これを」


 言いながら冬馬が俺のハチマキを返そうとしてくる。


 そうだよな。相手が逃げているなら俺から追いかけないと――。


 でも……試みようとはしているんだ……。

 

 いや……告白しようとしたけどタイミングが合わず不発。その後タイミングが合わないから……と告白を先延ばしにする――。


 それって俺自身が言い訳して逃げているだけ、追いかけようとしていないだけじゃないのだろうか?


 シオリとこんな空気になりたくない、関係を前に進めたいと本気で考えているのなら無理矢理にでも――。


 そうだ。俺に足りない物、それは――。


 圧倒的な覚悟。


 そこで俺は覚悟を決め、思いついた事を冬馬に言った。


「冬馬。頼みがあるんだけど――」




 今回、ちょっとチョケマシマシでしたが、次回は真面目回です(多分)


 よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 騎馬戦かぁ。楽しそうですね。 私の学生時代の騎馬戦、、、結構念入りに練習して、お互いに万全の状態で挑んだ結果握力が強い人が無双する展開になってしまった記憶。
[良い点] 爆笑せしむ [一言] 職場で読んでいたら悶死してた。 これからも楽しみにしています。
[一言] 騎馬戦なんて野蛮です。やっぱり花は棒倒しです/w なんか、高校の頃の体育祭って、何をやったか記憶にないなあ。少なくとも、うちの学校では一つのグラウンドにみんなが集まって、ということはなかっ…
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