一年生のエピローグ
映画研究部の試写会が終わり、俺達は自宅へと帰ってきた。
修了式が終了してから数時間経った校舎内は物寂しい雰囲気であった。
そんなほとんどの生徒は帰って行った学校内から、家に帰るまで、シオリはほとんど無言だった。
いや、シオリは常日頃から無口でクールな女の子なのだが、今日に限っては無口でクール――というよりは、ボーッとしていて喋らない――呆けているという表現が正しいだろう。
「ふぅ……」
リビングのソファーに座り一息吐く。
自分の溜息に、高校一年あっという間だったな、なんて思いを乗せて息を吐くと、シオリがちょこんと隣に座ってくる。
いつもなら、隣に座ってくるのにヘッドホンをして読書という自分の世界へ潜り込むスタイルなのに、今日は点いてもいないテレビをボーッと見つめていた。
「コジロー……」
「んー?」
ようやく口を開いたかと思ったら、ぼーっとこちらを見てくる。
「なになに?」
「名前で呼ばれちゃった……」
「名前? ――あー……」
彼女が言いたいのは先程、四条と名前で呼び合った事なのだろう。
それが相当嬉しかったみたいである。
「逆に今まで苗字呼びだったんだな。あんだけ毎朝俺の席を占領して話し込んでるのに」
シオリは足を上げてソファーで体育座りをする。膝小僧に頬をつけてこちらを見てくるその表情はかなり嬉しそうである。
「――私、コジローと許嫁で良かった」
「な……」
いきなりの言葉に照れてしまい、俺は頬をかきながら、つい嫌味を言ってしまう。
「友達ができたからって現金なやっちゃ」
そんな俺の言葉にシオリはフルフルと首を横に振る。
「それだけじゃないよ。良かったと思えたのは」
シオリは天を仰ぎ、思い出すように言う。
「初めて誕生日祝ってもらえた。初めてクリスマスを過ごせた。初めて初詣に行けた。初めてバレンタインチョコレートを渡した。初めてホワイトデーのお返しをもらえた」
そして微笑みながらこちらを見てくる。
「コジローが全部叶えてくれたんだよ」
その微笑みが可愛くて、つい俺の右手はシオリの頭の上に行ってしまい、その綺麗な髪を撫でる。
「ふふ――。私、コジローが頭撫でてくれるの好きかも」
「それは光栄だな」
しばらくシオリの頭を撫でていると「ね?」と問いかけてくる。
「ん?」
「二年生ってイベントいっぱいあるよね?」
「そうだな」
言われて二年生のイベントが何かを考えていると「手、止まってる」と指摘されて、撫でながら答える。
「体育祭、文化祭は全学年だし――やっぱり二年の最大の行事って修学旅行とかかな?」
「修学旅行……」
シオリは呟いて、何かを考え込んだ後に「コジロー」と改めて俺の名前を呼んでにっこりと笑ってみせる。
「二年生も同じクラスだと良いね」
そんなシオリに俺は素直に「そうだな」と答えた。
みなさま、お読みいただいてありがとうございます。
この場をお借りして、ここまで沢山のブクマと評価をしていただき、多くの感想や初のレビューをいただけて感謝のお言葉を言わせてください。
ありがとうございます!!
さて、本作ですが、一年生が終わり、次回より高校二年生編がスタートします。
高校二年生といえば高校生活のメインといっても過言ではないのではないでしょうか?
そんな花形の学年の二年生になったコジローとシオリの二人を今後とも見守っていただけると幸いです。
そして、冬馬と純恋と三波先生の三角関係やいかに……。
読者様のみなさま、これからも末長くお付き合いのほど、よろしくお願いします!




