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許嫁と部室へ

 映画研究部の部室。


 放課後になり、普通教室棟から部室棟の三階の一室にやってくる。


 四条は三波先生に用事があるらしく「先に行っておいて」と言われてしまう。恐らくは部活関係の用事だろう。

 冬馬は掃除当番なので、俺は先にシオリと共に部室までやって来た。


 部室のドアを開けようとして、冬休み前の事がフラッシュバックする。


 前回は五十棲先輩が裸で筋トレしてたんだよな……。

 ――って事は、今も筋トレしている可能性があるということ……。


「すぅ……はぁ……」

「開けないの?」

「いや……前来た時、変態が変態的行動してたから」


 そういうと「あー」とシオリも前回の事を思い出した様に声を出した。


「そんな事もあったろ? だから少しだけ覚悟をしてたんだよ」

「そう……」


 シオリの心底興味のなさそうな声が放たれて、中にいる人が裸という事を先読みし、部室のドアを開ける――。


「――あれ?」


 ドアは鍵がかかっており、開かなかった。


「まだ誰も来てないのかな?」

「みたいだな」


 拍子抜けの声が出ると「ぬ? ――一色と七瀬川か?」と、後ろから男の声が聞こえてきた。

 振り返ると、そこには制服越しでも体格が良いと分かる男子生徒が立っていた。


「あ、五十棲先輩。お久しぶりです」

「お久しぶりです」


 俺達が挨拶をすると「おう。久しぶりだな」と爽やかに挨拶を返してくれる。


「二人はもしかして、助っ人に来てくれたのか?」

「あ、はい」


 すぐに返事をすると、嬉しそうな顔で「そうか」と頷いてくれる。


「ありがとう。困っていたんだ。助かるよ」

「いえいえ……」


 俺はジーっと先輩を見つめてしまう。


 こうしていると、普通の優しい先輩だよな?


「ぬ? どうかしたか?」

「いえ……服……着ているんだなぁ……。――と」


 そう言うと先輩は爆笑しながら、持っていた鍵でドアを開ける。


「人間なんだから服位着るさ。それに学校なんだしな」

「ですよねー」


 あの時はたまたまだったんだ。そうだよ。学校で裸とか異常だぜ。


 そんな当たり前の事を思いながら部室の中に入ると、五十棲先輩が脱ぎ出した。


「――なんで脱ぐんですか?」


 何故か心は落ち着いていた。ここは銭湯でもなく、彼の部屋でもない。それに先程「人間なんだから服位着るさ」と言ったばかりなのに――。

 ――多分、この人は脱ぐと深層心理では思っていたからだろう。心のどこかで、こいつは異常者と認識していたのだろう。


「なんでって――。部室だからな」

「ここに女の子がいてるのに?」

「ああ。間違いなく七瀬川は女の子だな」

「フルチンで腰に手を当てて言わないでください。――それと、シオリは何で平気な顔して立っているんだ?」


 シオリは嫌悪感も何もない、本当の無の状態――まるで、空気を見ているみたいな感じである。


「映画研究部の部室で、先輩がそのスタイルが良いなら、私が指摘する権利はない」

「あるよ! わいせつ物陳列罪だよ! 変態という犯罪者だよ!」

「それを言うなら、コジローだって変態」

「どうしてここで俺の話になる!? 俺は関係ないだろ!」

「ある」


 言い切られると、関係あると思ってしまう。


「あー。あるあ――ねーよ! 何の関係もねーよ!」


 そんな俺達の会話に「おいおい。お前達。痴話喧嘩はよせ」と先輩らしく注意してくる。


「――誰のせいだと思ってんだ!?」

「女と喧嘩した時は、とりあえず男が謝っとけ。それが夫婦円満の秘訣だぞ」

「うるせーよ! 変態に夫婦円満の秘訣聞きたかねーよ!」


 俺が先輩に言ってやると、シオリが俺の腕をツンツンしてくる。


「だって」

「何が?」

「とりあえず男が謝る」

「いや、何で謝る? 何を謝る?」

「変態でごめんなさいかな」

「お前の目は腐ってんのか!? 目の前に変態がいるのに、何で俺が謝らなきゃならんのだ!?」

「私の目は腐ってない。――よく見て」


 そう言われたので、シオリの目をジッと見つめる。

 綺麗な目をしている。さすがは冷徹無双の天使様だ。


 見つめているとプイッと顔を背けてくる。


「あんまり見ないで。キモいよ」

「理不尽すぎるだろ」

「フラれたな……」


 変態は腕を組んで頷いてくる。


「あんたは早く服を着ろ!」

「――いや、服を着たら、いつものができないじゃないか!」

「いつものって――」


 俺の言葉が言い終わる前に、音速で何かが通り抜けており、気がついたら変態がポニーテールの美女に蹴飛ばされていた。


「毎度、毎度……何だてめーは? 蹴られたいのか?」


 蹴飛ばされた後に、五十棲先輩は夏希先輩に顔面を踏まれていた。


「い、いっしき……こ、これがいつものだ……」

「何がいつものだ? ああ? きたねぇ裸見せてんじゃねーよ。ゴミが……」

「も……もっと……」


 気持ち悪い声を出して五十棲先輩が踏まれている。


「シオリ……。これが本当のMだぞ?」

「だね」







「――と言う事で……。小次郎と汐梨。今日はよろしくね」


 映画研究部の面々が集まり、改めて言われる。


 お、おお……。年上の美女から名前呼びされるのは中々に快感だな。

 それも、こちらが「下の名前で呼んで!」なんて事を言っていないのにナチュラルな名前呼び。

 親近感のあるお姉さんタイプからの名前呼びは良きかな。

 あれ? ――って事は俺も夏希先輩を堂々と名前で呼んで良いのかな?


「な、夏希先輩?」

「ん? どうしたの?」


 イケたわ。年上女性に名前呼びイケたわ。今までは、心の中で名前呼びだったけど、今後から堂々と名前呼びでイケるわ。


「俺達は何をすれば良いんですか?」

「撮影をお願いしたいかな」

「撮影?」


 首を傾げると冬馬が答えてくれる。


「夏希さんと大吾さんが編集。俺と純恋が撮影で分かれているんだけど……まだ撮影が終わってないんだ。終わってないと言っても、もう少しだけどな。それで、俺と純恋が編集に加わるから、まだ終わってない撮影をお願いしたい」

「撮影か……」


 チラリとシオリを見る。


 ビジュアル的にシオリがモデルになった方が良いのは間違いない。


 でも――。


 俺の視線に気がついたシオリが無表情で言ってくる。


「撮影には自信がある」

「ほんまかいな……」


 到底そうは思えないけど……。シオリは自信満々に言うのであった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 今回はあまり面白くなかったです。 次の更新楽しみにしています。
[一言] 変態は、構うから増長するんだ、と夏希先輩に教えてあげてください/w シオリのような対応していたら、きっとやらなくなると思う。 彼は、自分が撮影に回れないという理由があるのかな?
[一言] 何やらデジャヴを感じるような…アヤ…うっ頭が
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