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許嫁とカオスエンド

「第一回映画研究部会議!」

「イエェー!!」


 パチパチとバカップルが盛り上がる様をこちら側はジュースを飲みながら見守る。


 話していた通り、俺達4人は駅前のファミレスにやって来た。


 高校生活で何度もお世話になっているファミレス。高校生の味方ファミレス。財布の味方ファミレス。ファミレスは誰にでも優しい。


 そんな贔屓にしているファミレスにやって来て、見慣れた店員さんが6人席へと案内してくれた。


 ファミレスといえばドリンクバー。ドリンクバーといえばファミレス。高校生ドリンクバー定期ってことで、ドリンクバーを注文して各々好きなジュースを淹れに行った。


 軽く乾杯をした後の冬馬の発言に四条が拍手で応答したって流れ。


「というわけで、部長の六堂冬馬だ」

「副部長の四条純恋だよー」

「知ってる」


 なにを今更自己紹介をしているんだと疑問に思っていると冬馬は手を組んでテーブルに肘をついた。


 まるで秘密結社の幹部のような雰囲気を出している。

「さて、平部員のキミたち」

「なに? マウント取ってるの?」

「おそらく」


 こいつ、俺達にマウント取りたいがためにわざわざ役職名を言ったのか。


 くそやん。


「まずは自己紹介からやってもらおうか」

「は? そんなもんいらないだろ」

「ノンノンノン」


 この野郎。英語の成績2だから発音が気持ち悪いのも相まってムカつく。


「この部活動において、キミたちは新人だ。新人は自己紹介をする。違うかな? どう思う純恋くん」

「はい。冬馬様の仰る通りです」


 四条は副部長をメイドかなにかと勘違いしてるのではないだろうか。


「ほら見ろ。俺の可愛い純恋がそう言っているのだから、間違いない」

「でへ……。俺の純恋のだなんて……」


 あ、四条のスイッチが入った。


「冬馬様みたいな色気のある殿方に言われたらあたし……」


「純恋……。色気は純恋の方があるよ。ああ……純恋」


「冬馬……きゅん……」


 こいつら速攻自分達の世界に入ってしまったな。


 4人で来てるってのに、見境なく盛る奴らだな。


 彼らのイチャイチャに、やれやれなんて呆れていると、シオリがブレザーの袖をくいくいしてくる。


「コジロー。ジュース淹れに行こっ」

「え、あ、ああ」


 シオリの態度がいつも通りなので、少し唖然としてしまった。


 教室を出て行く時は明らかに機嫌が悪かったけど、別にそこまでだったのかな。


 機嫌が悪くないのなら安心した。


 俺は残りのジュースを一気に煽り、グラスを空にして立ち上がる。


 サーバーのところまでやって来る。


「マスター」


 いきなりシオリがそんなことを言ってくる。


 クーデレ属性がマスター呼びとか、どんだけ相性良いんだよと思っていると、彼女は俺へグラスを渡してくる。


「オリジナルブレンドで」


 その一言でなにをして欲しいのか理解した。


 俺は制服のネクタイを、キュッとして「かしこまりました」と意識したイケボを出す。


 グレープとオレンジを混ぜて彼女へ手渡す。


「お待たせしました。コジローブレンドです」


 特性のオリジナルドリンクバーブレンドを渡すと彼女はそれを見つめていた。


「コジローつまんない」

「つまっ!?」


 腹の底から変声が出ると「ぷくく」とシオリが吹き出した。


「つまっ!? だって……。ぷくく。変な声だったね。ぷく」

「やい許嫁。だったら面白いブレンドを要求する」

「かしこまり」


 簡単に言ってのけると、シオリはグラスに躊躇なく全てのジュースを淹れやがった。


「ちょーい! ちょいちょい! なにしてんの!?」

「全てが混ざりし時、全ての世界は調和を果たす」

「果たさないから! 混沌だから! まじカオスだから!」


 出来上がったジュースを見ると、凄い色をしていた。なに色かわからない色だ。


「……」

「……」


 シオリはすかさずコーラを淹れた


「黒。それは混沌を全て飲み込みし魔性の色」

「認めたね。今、混沌と認めたね」

「できた」


 出来上がったその液体の見た目はコーラ。中身はカオスのシオリブレンド。


「どぞ」

「飲めるかっ!」


 今の流れで飲むバカがどこにいる。


「でもコジロー思い出して」

「なにを?」

「私が気合いを入れて作る料理は暗黒物質。これも」

「暗黒物質だな」

「そゆこと。どぞ」

「今の流れで飲むと思うなよ許嫁」

「流石は私の許嫁。この話術にかからないとは……」


 今のでいけると思ったお前の精神が心配だ。


「仕方ない」


 ふぅ。とため息を吐くと、シオリは躊躇なく新しいグラスに全てのジュースをぶっこんだ。


「おいい! バグってんのか!? なに複製してんだよ!?」

「これをあのバカップルにプレゼントフォー・ユー」


 言いながら、俺達の席に視線を配った。


 そこでは冬馬と四条がまだイチャコラセッセしているのが見えた。


「なるほど。公共の場でイチャイチャするバカップルを黙らせる良いクスリってか」

「2人は爆発」

「なぜ爆発するのかわからないが、リア充は爆ぜるべしだな。この混沌ジュースを飲ませてやるか」

「混沌ジュース。ナイスネーミング」


 グッと親指を突き出して来る。どうやら名前が気に入ったらしい。


「行くよコジロー」

「おうよ」


 俺達は混沌ジュースを持って自分達の席へと戻って行く。


 席に戻ってもイチャイチャをやめない2人からは、幾万もの♡が飛び出していた。


 ここだけ異世界ですか。そうですか。


 すぐに現実世界へ引きずり返してやる。


「部長。副部長」


 席に腰かけたシオリが役職名を言いながら混沌ジュースを2人に渡す。


 役職名を言われた2人は反応してシオリの方を見た。


「今から会議をするならカフェインは必須。コーラにはカフェインが含まれているから会議が円滑に進むこと間違いなし」

「ほぅ」

「シオリちゃん。気が利くぅ」

「どぞ。一気にグイっと」


 疑いもせずに混沌ジュースを飲む2人を見てほくそ笑んでいると。


「「ぶふっ!」」

「「ぎゃああ!」」


 俺とシオリは混沌ジュースのシャワーを浴びることになった。


「汚ねええ! お前らなにして──」


 文句を言えた義理ではないが、2人に一言申してやろうとしたが、冬馬と四条はそのまま机に突っ伏した。


「純恋……。俺……意識が……」

「あたしも……冬馬くん……」

「ああ……純恋……最後にキミと共に逝けて良かった……」

「あっちでもずっと一緒だよ……冬馬……きゅん」


 こいつらはなにがなんでもイチャイチャするのね。


 呆れた様子で2人の様子を見ていると。


「ぷーくくく! ぷっぷ!」


 独特の大笑いをするシオリが曇りのない笑顔を浮かべていた。


「混沌ジュースを飲んで現場が混沌。まじコント。ぷくくー」


 許嫁は混沌シャワーを浴びてバグっていた。


 第一回映画研究部会議はカオスエンドで幕を閉じたのであった。


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― 新着の感想 ―
[一言] オレンジとグレープはわりとおいしい。全部まぜも悪くは無い…?
2022/09/03 20:46 退会済み
管理
[一言] 財布に優しくても、それでも元は取れないと言われているドリンクバー。 最近は混ぜるの推奨になっていたりするけれど、でも暗黒物質を作るのはなあ… 作ったからには、ちゃんと最後まで飲ませようね/w…
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