エピローグ
俺の家の前に女神が立っていた。
両親は海外出張から帰って来たが、両親の意向で実家には帰らずに一人暮らしを続ける事になった。
お金の心配はいらないと言っているが、自分でも稼いで少しでも両親の負担を減らさないといけない。だから、もう本当に長期のバイトを探さないといけない。
そんな事を考えながら、もうすっかり慣れた自分のマンションの部屋へ帰ろうとすると、それは本当に俺と同じ学校の指定のブレザーなの? と目を疑いたくなるほど着こなしている美少女が俺の部屋の前でヘッドホンを首にかけて立っていた。
長くきめ細かなキラキラと輝いて見える髪がヘッドホンでキュッとなっているのがたまらなく愛おしく、その麗しい顔立ちはいつ、いかなる時に見ても見惚れてしまい、華奢で守ってあげたくなる身体は抱きしめたい衝動に駆られる。
まさに天界から舞い降りた女神様と言っても過言ではないだろう。
こんな表現が大袈裟ではない程の美少女の前に立つと目が合う。
「やっと帰って来た」
その声は彼女の見た目通りに甘く、耳が幸せになる。
「――なに……してんの?」
少し考えた結果出たのはこの問いである。
「あなたを待ってた」
微笑みながら言われてしまう。
「わざわざ俺の家の前で?」
聞くと彼女は鞄から一枚の手紙を取り出した。それを無言で俺に渡してくる。
「読んで」
「あ、ああ……」
手紙を見ると『一色 小次郎様へ』と俺の名前が書かれていた。
手紙を開けて黙読する。
『一色 小次郎様。急で悪いんだが、旅に出ようと思う。娘に言われてしまったからね。ゆっくりと羽を伸ばすつもりだ。本当は汐梨と二人で行きたかったのだが、彼女は学校があるし、小次郎くんとも離れ離れになるからね。すぐに『一人で行ってきて』と断られてしまったよ。そこでだ。また、こちらのワガママを押し付ける形になるのだが、娘を預かってくれないかな? なに、お土産は奮発するよ。地酒とつまみを大量にね。直接言えなくてすまない。でも、なぜか汐梨が手紙を書けって言うからこうやって書いているのだが……小次郎くんには意図がわかるかな? また戻ってきたら会いに行きます。――七瀬川 太一』
「――ふふ……」
黙読を終えた俺の最初のリアクションは気持ち悪い笑いだった。
「ここまで完璧なデジャブだな」
言うとシオリが「いやー……」と頭をかいた。
「ちょっとした悪戯心?」
「それにしたって急すぎるだろ」
「あはは。ごめん。ごめん」
明るく陽気に謝ってくる彼女に問う。
「良かったのか? 大事な家族なのに一緒にいなくて」
「家族だから……私達は本当の家族だから、どこにいたって、どんなに離れていたって、私達三人は家族だから大丈夫だよ」
彼女は遠い空を見上げながら言った。
「それじゃまた今日から問題なく一緒に暮らせるんだな」
「何も問題ないよ。だって――」
秋の風が吹いて彼女の長い髪が靡いた。
彼女は靡く髪を耳にかけて発してくる。
「あなたと私は『許嫁』だから」
いつもお世話になっております。
読者の皆様、この度は『俺の許嫁は冷徹無双の天使様』をご愛読いただきありがとうございます!
ここまで約四ヶ月、毎日投稿(何日か抜けてる日があるけどそこは別日に連投したから許してね笑)出来たのも沢山の方々が私の小説を読んでいただけたものだと思っております。深く感謝しております。誠にありがとうございます。
そして、本当に沢山の感想や評価、ブックマークをしていただけき、レビューもいただけて、感謝の念が強すぎて逆にどう感謝を表現したら良いのかわからないレベルで感謝しております。
物語については、本作を投稿する前の構想通りの終着点に無事に辿りつけたと満足しております。
コジローとシオリが恋仲になって、イチャイチャしているのも束の間、許嫁の本当の理由、七瀬川家の複雑な事情、それを乗り越えてシオリが成長する。コジローには愛する人の家族を繋ぐキーパーソンを担ってもらい、奮闘してもらいました。いや、本当にありがとうコジロー。君には感謝しているよ。
シオリも最初は本当に感情がない女の子でしたが、コジローと出会い、成長して、最後はタイトル無視の女神様に昇格しましたね。昇格した事により、最初の氷のような彼女が今では陽気な雰囲気を醸し出すまで成長しました。
いやー……シオリちゃんがこんなに変わって私、泣きそうです。
ただ……うーん……学校行事がね……残ってますもんね……。修学旅行とか、進路とか……あとは……卒業式とか……。色々とね……。
物語の本質は終わりですが、また続編とするか、後日談とするか……。ともかくは今の段階で完結とさせていただきました。
「お疲れ。まぁまぁやったな」「まぁ時間潰しになったわ」「シオリもっと出せ」「シオリくれ」「シオリ! シオリ!」と少しでも思って下った方は感想やレビュー、評価、ブクマお待ちしております。
最後に何度もしつこいようですが言わせてください。
長いこと、ここまでお読みくだった皆様! 本当にお付き合いありがとうございます!
また、どこかでお会いしましょう!
2021年2月19日 すずと




