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おまけ

一回ボツにしたけど、折角なので投稿させてもらいました。

短めです。

「――まぁ自分ら初犯やし、今回ばかりはこれで許したるさかい、今度から気ぃつけーよ」


「はーい」と琴葉さんと一緒に返事をして、警察署からでる未成年みたいに職員室を後にする。


 いやー、えぐい位怒られた後、六限全部を使って反省文を書かさるとは……。

 まぁ停学くらうよりはマシか。


 しかし、わからないのは、あんな苦痛の状況でも琴葉さんは嬉しそうにしていた事だ。なぜだろう……変態なのかな? ――あ、変態か。


「――七瀬川」


 琴葉さんが呼び止められて振り返り「はい?」と振り返るとヤーさん先生は頭を掻きながら「あー」とか「えー」とか言葉を詰まらせていた。


「もこ――お母ちゃんは元気にしとうか?」

「え?」

「あー、いや……悪いのぅ。言う必要もないし、言わんとこう思っとったんやけどな……。ワシ、お前のお母ちゃんの知り合いでな」

「知り合い……」

「ああ、悪いの。だからなんやねんちゅー話やねんけど……。その……今日のお前はどっかもこ……お前の母ちゃんに似ててな……。まぁ今のお前のなりもあの時のもこにそっくりやけど……今日はどっか雰囲気も似とってのぅ。なんか高校以来久しぶりやったからついな……すまん」

「ゲン……ちゃん……」


 琴葉さんは聞こえない程の声で呟く。俺には聞こえたが先生には聞こえていないみたいだ。


「あんまな、生徒のプライベート聞くのはあかんけど……。どや? 母ちゃん元気にやっとるか?」


 先生の質問に琴葉さんは笑顔で答える。


「ゲンゲン元気。ゲンゲン気」


 何だかふざけたみたいなセリフだが、先生は呆然としていた。


「バイバイ」

「あ、ああ……」


 そう言って先生に背を向けて歩き出したので俺も後に続く。


「もこ……。――って、先生にバイバイはないやろ!」

「あははー」


 悪戯をした少女みたいな笑い声を出して歩き去る。先生は追っては来ずに、どこか嬉しそうな顔をしていた。




「先生と知り合いだったんですか?」


 階段を上がりながら気になった事を聞くと「うん」と頷いて答えてくれる。


「幼馴染」

「ええ。めっちゃ深い関係じゃないですか」


 あー、なるほど、だからさっき怒られるのに嬉しそうな反応だったんだ。


「――全然わからなかったよ。昔のゲンちゃんって小さくて可愛くてアイドルみたいな感じだったのに」

「今じゃ到底考えれないですね」

「時の流れは残酷じゃの……」

「――じゃあ、さっきのおふざけじゃなくて?」

「うん。ゲンちゃん気が弱い子だったから私がいつも元気つけてたの。あんな感じでね」

「へぇ……。もこってのはあだ名?」

「そうそう。私、旧姓が九十九つくもだから、その最後の『も』と琴葉の『こ』で『もこ』ってゲンちゃんだけが呼んでたよ」

「特別なあだ名……。それって先生は琴葉さんの事好きだったんじゃ?」


 俺が聞くと琴葉さんは少しだけ悲しい顔を見してくれた。


「どうなんだろね……。お互い距離が近すぎたのかもね……。それで、離れる時に一気に離れちゃったから……」


 仲の良い幼馴染だったが、その幼馴染に彼氏が出来て距離を取ってしまった悲恋の話か……。


「でも、ほんと、久しぶりに会えて嬉しかった。ふふ」

「――って事は、さっき怒られてる時に嬉しそうにしてたのは?」

「ん? 嬉しそうにしてた?」

「してましたよー」

「そっか……。それじゃあれだね。そうなんだろうね。でも、それとゲンちゃんとは関係ないよ?」

「え……? ガチ変態ですか?」

「違うよー!」


「もう……」と溜息をついた後になんだか物悲しく語ってくれる。


「――大人になるとね、叱ってくれる人っていないんだよ。意味不明な事言われて怒鳴られる――今は怒鳴りはパワハラになるから無視されるとかかな? まぁそんなんばっかだよ……。だからいけない事をしたら叱ってくれる人って大事なの」


 それと、と微笑みながらこちらを見る。


「懐かしくって……。なんか青春って感じじゃない? 職員室に呼び出しって」

「そんな青春はごめんですね」

「ふふ。いつか君にも分かる日がくるさ」

「そうですかねー」

「そうなるよ」


 まるで未来予知をしてくるみたいに言うと「さっ」と言葉を発す。


「もう六限も終わったし帰るんだよね?」

「当然です! やっとハラハラの一日が終わりますよー」

「はたして……これで本当に終わりかな?」

「やめてください、いらぬフラグを立てるのは……」

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― 新着の感想 ―
[一言] さてフラグは立ったのか? ああ、やっぱり切ないな。幼馴染の関係なんて、まずほとんどは切れるものなんだろうけれど。それでも想いの残っている人とそっくりの子供が、目の前にいる、というのは。
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