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実家に集合

「――ああ、それじゃあ俺の家に一旦集合するか?」

『そうだな。久しぶりにお邪魔する』

「んじゃ待ってるわ」


 耳からスマホを離してポケットにしまう。


 俺の部屋のベッドに座ってスマホをいじっていたシオリが首を傾げるので答えた。


「ああ、冬馬からでな。今日花火大会あるから四条と四人で行かないかってさ」


 つい先程までお説教を受けていた俺は突然の冬馬からの着信に助けられる。

 結構長い事説教されていたから本気で助かった。


「花火大会……」


 シオリの機嫌も夏のイベントのおかげで回復、いや、悪くなる前以上に機嫌が良くなり一安心だ。

 彼女の機嫌が直ったからバレない様にエロ本をカーリングの様にベッドの下へ滑らした。


「行くだろ?」

「行く」


 案の定の答えと無事にベッドの下にインしたので安心する。


「二人は今学校らしいから、昼過ぎ位に一旦来るってさ」

「そう」


 シオリは簡単に答えるとスマホを操作する。


 祭りの事でも調べているのかな? と思い、それなら俺も少し気になるので一緒に見させてもらおうと隣に座る。


「シオリ。祭りの事でも調べてんのか?」

「違う」


 否定するとシオリはスマホの画面を俺に見してくる。


「浴衣」


 彼女のスマホ画面には様々な浴衣が映っていた。


「着るの?」

「花火大会と言えば浴衣」

「確かになぁ。夏しか着れないし」

「どれが似合うと思う?」


 彼女はスマホをゆっくりスクロールさせながら聞いてくる。


「うーむ……」


 シオリはクールなキャラだからブルー系が似合う。実際、水着も水色で似合っていたのでその色を指定すれば間違いないだろう。

 しかし、ここはあえて冒険してみても良いのではないだろうか。

 赤とかピンク、黒や白、黄色に緑――あかん、全部似合うな。

 俺の脳内天使は何を着ても似合ってしまう……。流石は冷徹無双の天使様だ。


「初めてだから楽しみ」


 考え込んでいると、こぼす様にシオリが呟くのを俺が拾い上げる。


「浴衣着るのが?」


 聞くと「ううん」と首を横に振る。


「花火大会」


 そう言う彼女に、いやいや流石に友達少なくても親とくらい――なんて言いそうになるのをやめる。


 ふと、シオリの誕生日の事を思い出してみたら――『同世代の人に誕生日を祝ってもらうのは初めて』という言葉の前に『誕生日を誰かに祝ってもらうなんて久しぶりだった』って言ってたな。

『親』じゃなく『誰か』――。

 そのほかにも、クリスマスも『一人』で過ごしていたと言っていたしな――。


 やはり、家族の仲は一見良さそうに見えても実際は違うのか……?


 そういえば、シオリはなぜ日本に残ったのだろう。

 失礼だがアウトレットに行った時のバスの中で『修学旅行なんてどこでも良かった』と語る位だから学校行事に興味はなかったという事だろう。

 それに自ら友達がいなかったとも言っている。

 それなら、わざわざ日本に残る必要性はなかったのでは? 

 精神的に海外に住むというは厳しいと聞いた事があるから、単純にそれが理由かもしれないが――。


 家族の仲が悪いから――。


 もし、それが理由ならば俺の事を全然知らない時にいきなり許嫁として同居って流れになっても、家族と海外に行くよりも、クラスメイトと許嫁という肩書きさえ我慢すれば家族と離れられると?


「コジロー?」

「――んあ? ああ……ごめんごめん。シオリの浴衣真剣に悩んでた」

「ふっ……。結局なんでも似合ってしまう」

「あ、あはは。そうだな」


 ――まぁ考えすぎか……。


 真実がどうであれ、これから俺が色々連れていけば良い話だ。


 夏休みだしな。







 二人が着いたとの連絡を受けたのは、近所へ二人でラーメンを食べに行ってから一時間後の事であった。


 インターホンが鳴って玄関に出ると俺は苦笑いを浮かべてしまう。


「四条……お前……またバイクで通学かよ……」

「夏休みだし」

「夏休みとか関係ねーだろ。――で? 冬馬を後ろに乗っけたと?」

「そうなるな」


 冬馬が答えると「風を感じるのは悪くない」と中二病みたいな事を言っていた。


「仲良く停学になれば良いのに」

「あははー。それは嫌だなー」


 四条が笑いながら言うと「一色君」と呼んでくる。


「バイク止めれるかな?」

「ああ、車の前にスペースあるからそこに止めてくれ。どうせ誰も運転できないから動く事ないし」

「はーい」


 四条は指示に従い車の前にバイクを持って行った。


「冬馬、先入っててくれ。暑いだろ?」

「すまないがそうさせてもらう」


 冬馬は何度も来ているので遠慮なく中に入って行った。


「しっかし一色君が一軒家って違和感バリバリだね」

「はは。そりゃ四条は俺の今のマンションしか知らないからだろ。逆に冬馬は落ち着くと思うぞ? 昔から来てるし」

「そっか。中学からだもんね、二人とも」

「そうそう」


 頷きながら「ところで」と、四条がヘルメットを収納スペースにしまっているところへネタを振る。


「どこまで進展したんだ?」


 聞くと察しの良い四条はすぐに理解してくれた。

 だが、その反応は思っていたのとは違い「うーん……」と、まるでテストの問題を解く様に割と真剣に悩んでいる。


 こちらとしたら「えー……? えへへ……実はぁ……」とか「うん……あいつあかん……まじあかん……」の両極端な二択を想像したのだが――。


「まるで味のないガムを噛んでいる感じ?」

「進展なしか……」

「でも、今日お祭りに誘われたんだよね……」

「四人で?」

「それが実は……」

「もしかして二人っきりで?」


 尋ねるとコクリと頷く。


「それがなんで四人になってるんだよ?」

「きょ、今日、い、いきなりだったし……。考えてる余裕というか、ちょっとパニックになっちゃって……あはは……」

「まぁ好きな奴にアポなしダイレクトで誘われたら動揺するわな。――だけど、そこは任せろ。なんとか二人にしてやるよ」


 俺は胸を叩いて自信満々に言ってやる。


「別にあたしはみんなで楽しむのもアリかなって思ってるよ?」

「遠慮するな。大船に乗ったつもりでいろよ」


 言うと、彼女はジト目でこちらを見てくる。


「な、なんだよ?」

「――一色君が汐梨ちゃんと一緒にいたいだけじゃないの?」

「うっ……」

「図星か」


 溜息を吐かれたので「違う違う」と手を振り否定する。


「あれだよ? 友人二人の恋模様を手伝いたい純粋な思いだよ?」

「ふーん……」


 四条は全く信用していない様な目を続ける。


「と、ともかく! 今日の夜は期待しとけ。最高の舞台を用意してやる」

「花火大会っていう舞台は整ってるけどね」


 論破されて何も言い返せないでいると「ぷっ」と吹き出されて笑われる。


「あはは! ほどほどに期待するよ。ほどほどにね」

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― 新着の感想 ―
[一言] 四条さん、まだまだ思い悩むことは多いか。 さてどうなるのかな。
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