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許嫁とプール

 夏休み初日の朝。


 セットした覚えのない目覚まし時計が鳴り響き目を覚ます。


「――ンァ……ご……時……はん……? ――五時半!?」


 可愛いピンクの目覚まし時計を見ると、日常生活よりも早い時間だったので驚いた声が出てしまう。

 普段の俺なら間違いなく二度寝をしてしまうところだが、昨日は乳幼児の様に睡眠時間が長かったので、この時間でも眠くない。更に言えば、早朝から窓の外では夏の風物詩である蝉達がその短い命を燃やして自然目覚まし時計と化しているのでうるさくて寝れない。


 お腹も空いたし俺はリビングへ向かう。


 ベッドにシオリがいないということは、俺が眠った後に自分の布団に戻ったのだろう。

 それならば、まだ寝ている可能性もあるのでソッと部屋のドアを開ける。


「あ、コジロー。おはよう」

「――え!? あ、ああ……う、うん……おはよう……」


 リビングには既に起きていたシオリがおり、朝食をテーブルに並べている。

 別にその事に関して驚いているわけではない。こいつはいつも早起きだし。


「良かった……。目覚ましセットしておいて正解」

「あ、あれは……やっぱシオリだったか」

「そう。ま、起きなくても叩き起こしたけど」

「そ、そっか……」

「――なに?」


 シオリは俺の微妙な反応に気がついたみたいで聞いてくる。


「いや……それは……いじって良いやつ?」

「どういう事?」

「朝からわかりやすいボケ過ぎて、逆にいじって良いやつか分からない」

「ボケ? 寝惚けてるの? コジローは寝坊助さんだからね」

「てめーの頭と身体と足に付けてる奴だよ!」

「――?」


 俺の言葉にシオリは戸惑いを見せる。


「なんで早朝からシュノーケルと浮き輪付けてるんだよ!」

「海に行くなら付けるでしょ?」

「オーケー。百歩譲ろう。その二点なら、楽しみにしてたんだな、で済む。だがな。おまっ……フィンて! 一般家庭でフィンなんてあんまり見ないぞ!?」

「これで私の泳ぎが加速する」

「だろうね! 何を目指してるんだよ!」

「私の泳ぎはイルカをも凌駕する」

「無理じゃボケっ! イルカのスピードなめんな」




 ――早朝から大ボケをかましてくるシオリは装備を全て外して俺と共に朝食を取る。


「シオリ?」

「なに?」

「シュノーケルしてたって事は今日海に行く気だったんだな」

「行かないの?」

「いや……海でも良いんだけど……。俺、何処の海が良いかとか、ここからどれくらいかかるとか知らないんだ。プールならちょっと足を伸ばせば大きなスライダーのあるプールがあるけど」

「スライダー」


 シオリは目を輝かせて立ち上がり、ペットボトルのキャップを手に取り左手でカーテンに向かって投げた。

 キャップはコーヒーをスプーンですくう様に切れ味抜群に曲がってカーテンに当たる。


「スライダー」


 ドヤっ。


「野球!? ――いや! てか! そっちじゃねぇよ!」

「冗談」


 シオリはキャップを拾いに行きながら言い放つと席に戻る。


「海じゃなくてプールで良い」

「ん。じゃあ飯食ったら行くか」

「コジロー。朝ご飯食べ終わってもまだ六時。まだまだプールは開いてないと思う。――そんなに楽しみなの?」

「お前に言われたかねーよ」







 目的地である全国でも有名なプールへとやってくる。

 今回は無駄に早起きだったのでかなり時間に余裕があったが、こういう時に足があった方が楽だと実感出来た。

 そして、流石は全国で有名なだけあって入場料がえぐかった。まぁ遊園地と併設だからそんなものと言えるだろうが、学生泣かせな事には間違いない。


 ラッシュガードと水着に着替えて脱衣所を出てすぐの空きスペースでシオリの着替えを待つ。


 辺りを見渡すと、開店して間もないというのに沢山のお客さんがいた。

 その中には男性の目を惹く水着の女性の姿もあり、俺も男なのでついつい目が行ってしまう。


 こんな所見られたら怒られるな……。それって嫉妬って事だろ? それで怒られるならアリか?


 なんて思いながら待っていると「お待たせ」とシオリの声が聞こえて振り向いた。


 そこには天使が立っていた。


 水色のフリルビキニは夏にピッタリな爽やかな印象。

 バスト辺りにフリルがある事で微乳を隠し、どうしても行きがちな胸への意識を彼女の最大の特徴である整い過ぎている顔に送らせるといった心理的チョイス。

 またフリルは隠すという機能面だけではなく、ちゃんと可愛い。風で軽く靡くフリルがその可愛さを演出。

 最悪胸を見られても可愛いと思わせ、作戦通り顔を見られたら美人。――完璧なシオリの心理的水着チョイスだ。


「ど、どうかな?」


 頭でそんなくだらない事を考えるのは、シオリの水着姿が眩しくて、似合い過ぎて、このままだと思考が停止しそうだったからだ。


「コジロー?」

「あ、あぁ……。似合ってるよ。物凄く」


 もっと上手く彼女へ伝えてあげたかったが、俺の安易な褒め言葉をシオリは素直に受け止めて「ありがとう」と少し照れながら言ってくれる。


「コジローも似合ってるね」

「男が水着似合ってるって言われても微妙だけど、まぁありがとう」

「それ、脱がないの?」


 シオリは俺のラッシュガードを指差して聞いてくる。


「まぁ身体には自信ないからな」

「あー……粗チ○だもんね」

「そっちは何があっても脱がねーよ! つか、なんで知ってんだよ! 思いっきり下ネタじゃねぇか」


 そんな彼女に溜息を吐いて「ほら、行こうぜ」と歩き出すと隣を歩いてくれる。


 彼女とプールサイドを歩いていると、チラチラとこちらに――正しくはシオリに視線が来ているのが分かる。

 その視線は男女問わず来るのでいかにシオリの水着姿が群を抜いて似合っているかが実感出来た。


「こりゃナンパに気を付けないと……」

「今時ナンパしてる人っているの?」

「そりゃいるだろう。――だから」


 俺は彼女の手を取る。


「こうやっとけば流石にナンパして来ないだろ」

「う、うん……」


 俺達は手を繋いでプールの中へと入って行った。




 一応、この話で100話(茶番劇を合わせて)となります。

 いやー、3桁いきましたよー。これからも頑張りまーす。

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― 新着の感想 ―
[一言] 100部分到達、おめでとうございます。これからは、管理の度に頁切り替えが必要になるです。お疲れ様です/w プールですかあ。スライダーとかでめいっぱいいちゃつくのかしらん。塩素で髪の毛痛んだ…
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