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黒猫とお喋りインコの小さな冒険  作者: ドラゴン・リーダー
1/1

旅立ち 1

旅立ちまで 1


噴水から降りて、インコのピーチャンは、ピョンピョンと跳ねるようにして繁みに向かいます。そのあとを黒い子猫がトコトコとついていきます。まるでカルガモの散歩のように。


繁みの中には小さな段ボールが、ありました。その段ボールに黒い子猫が入り、前足を縁にかけ外を見ています。

「こうしていれば、お母さんが帰ってくるのが見えるでしょう?それに怖そうな人が来たらすぐ逃げられるし。」

「ああ、そうだね。小さいお家だけど、僕も君も小さいから一緒に入れるね。

ところで、君、まだ名前が無い、て言ってたよね。僕が付けてもいいかなぁ。」

「本当?名前つけてくれるの?嬉しい!」

そう言うと黒い子猫は尻尾をブンブン振り回します。

「ちょっと、そんなに尻尾振り回さないでよ。この箱小さいから尻尾が僕にぶつかってるよ。」

「ごめん、ごめん、つい嬉しくて。私たち猫は、嬉しいと尻尾を自然にふりまわしちゃうの。」

「もう分かったから。でも、なんて名前にしようかなぁ。んー、そうだ、まだミャーとしか鳴けないから、ミャーちゃん、なんてどうかな?」

「ミャー? う~ん、可愛いかも。私、それがいい。ミャーちゃん。うん、それにする。

はじめまして、私の名前はミャーです。ミャーて鳴くのでピーチャンがミャーて名前をつけてくれました。な~んてね。ウフフ。」

こうしてインコのピーチャンに名前をもらったミャーちゃんでしたが、だんだんと元気が、なくなってきました。繁みから見える外も、すっかり暗くなり誰もいません。今まで元気にしていた子猫のミャーちゃんがおとなしくなってくると

「ミャーちゃん、どうしたの?」

とピーチャンが聞きます。

「う~ん、大丈夫だよ。さっき話したけど、お母さんがいなくなって、もう三日目なの。それで私お腹空いちゃって。」

そう言うと、今まで段ボールの縁にかけていた前足を下ろすと、コロンと横になりました。

「本当に大丈夫?僕、夜になって暗くなると、あまりよく見えないんだよね。外が明るければ何か食べ物持ってきてあげられるんだけど。ごめんね、明日の朝まで待ってくれるかなぁ。明るくなったら何か食べ物探してきてあげるから。それまで我慢して。」

そう言われて、

「うん、大丈夫だよ。今日は早く寝よう。」

そういう、一匹と一羽の頭上からはシトシトと小雨が降っていました。


夜が明けて朝になると、雨もすっかり上がり日が射しています。繁みの外から射す日の光で、一匹と一羽は目を覚ましました。

「おはよう、ピーチャン。」

「あ、おはよう、ミャーちゃん。」

「ウフ、なんか変な感じ。でも、名前で呼ばれるのて、嬉しい!」

「へんなの。普通だよ。

そうだ!お腹すいてるでしょう?僕これからひとっ飛びして何か持ってきてあげるね。一度にたくさんは持ってこられないから、何回かに分けて。」

「大丈夫だよ。ピーチャンだって、お腹すいてるでしょう?」

「僕は大丈夫。途中で葉っぱとか、パンくずとか落ちてたら、そんなものでも少し食べたらすぐお腹一杯になっちゃうから。それじゃ行って来るね。」

そう行って段ボールの縁にピョコンと飛び乗ると、そこから外に向かって飛び出して行きました。パタパタと小さな羽を広げて。

「いいなぁ、私もあんなふうに飛んでみたいなぁ。」

黒い子猫のミャーちゃんは、そう呟きながらピーチャンが飛んでいく姿を見送っていました。


しばらく段ボールの中から外を見ていると、パタパタパタパタと、羽の音をさせながらピーチャンが帰ってきました。口に何か咥えています。ミャーちゃんの金色の丸い目が細くなります。

よく見るとパンくずのように見えます。結構大きなパンくずのようです。繁みの外に舞い降りると、ピョンピョン跳ねるようにして入ってきました。

「ミャーちゃん、お待たせ。はい、朝ごはん。」

ピーチャンのくちばしから落とされたのは、パンではありません、カステラの切れはしでした。

「まだ、あまり固いものは食べられないでしょう?

軟らかいものと思って

探してたらこれがあったから。もっと大きかったけど、僕じゃ持ちきれなくて、ごめんね。

まだ、残りがあったからまた取ってくるね。」

と言って外に飛び出して行ってしまいした。ミャーちゃんが、ありがとう、と言っても聞こえていないみたいです。

そんなことを4~5回も繰り返したでしょうか。

「ピーチャン、ありがとう。もう大丈夫だよ。お腹一杯になってきたから。ピーチャンは食べたの?」

「エヘヘ、ミャーちゃんに持ってくるときに、少しつまみ食いしちゃった。だから大丈夫。それよりちょっと待ってて。」

そう言って外に飛び出していきます。すぐに戻ってきたときに、口に丸い小さな紙のお皿を咥えていました。

そのお皿を子猫の前に置くとまたすぐに飛び出していって、今度はペットボトルの蓋を咥えています。何かと思って見ていると、そのペットボトルの蓋を、紙のお皿の上で逆さまにしました。すると白い液体が零れ落ちてきました。

「誰かベンチでミルクを飲んだみたい。少し残ってたからこの蓋に入れて持ってきちゃった。喉も渇いたでしょう?」

小さなインコは首を傾げながら子猫に聞きました。


それは、小さなインコと、小さな子猫の、お互いへの優しい思いやりだったのでしょう。今まで一羽だけで小さな籠に閉じ込められていたインコと母猫を慕う子猫の寂しさからきた優しさ、だったのかもしれません。













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