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異世界転移者はお尋ね者  作者: ひとつめ帽子
第二章 聖都の闇
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出迎え

「あ、帰ってきましたね。どうぞ、朝食はできておりますので」


 村に戻ると村娘は元気よく伝ってきた。

それを聞いたアーシェはパァと笑顔になる。

ホントご飯好きだよな、アーシェ。

 村娘がトコトコと小走りに俺の脇に寄って来る。


「昨晩はお熱い夜でしたか?」


 下種な笑みでそんな事を聞いてくる。

俺はその額にデコピンをかます。

「いたいぃぃ」と額を押さえる村娘。


「どうしたの?」


 とアーシェは聞いてくるが、「いや、ハエが額にとまっていたからな」と俺が答える。


 朝食はパンと野菜のスープ、そしてハムと目玉焼き。

おー、なんか日本でも食べる朝食っぽい。

でもそろそろ白米が食べたいな~。

無いわなぁ。


 朝食はとっても美味しかった。

そして互いに支度を済ませ、荷馬車に乗る。

出発する時がきた。

いよいよ、聖都だ。

流石に緊張してきたぞ。


 ゴトゴトと動き出す荷馬車。

俺たちは向き合って座っていたが、お互い静かなままだった。

それから数十分ほどだろうか?

アーシェが荷馬車の外を覗く。


「見えてきたわ」


 む、もうか。

俺は思ったより早く聖都に近づいてしまった事に驚き、さらに緊張が増す。

同じように外を覗くとその街並みが見えた。


 真っ白い建物だ。

それがいくつもある。

最初に着いたエールダイトよりも一回りでかい街だった。

そして中央には大きな城…いや、宮殿か?そんな建物があった。

街の周りは大きな湖に囲まれており、一本の大きな橋が街へと続いている。


「ありがとう、ここまでで大丈夫だから」


 荷馬車の手綱を握っている青年にアーシェが声をかける。


「え?ここで良いんですか?まだクリステリアには…」


 青年が驚いているが、アーシェは毅然と答える。


「大丈夫よ。ここからは私たちは歩いていく事にするか。

ありがとう」


 そう言って感謝を述べる。

え、こっから歩くの?まだ結構距離はありそうだけど…。

とは言えアーシェが降りるというので、俺もそれに続く。

荷馬車の青年は不思議そうに俺達を見ながらそのまま街へと向かっていった。


「なんでここで降りたんだ?

まだ結構距離がありそうだけど」


「万が一の為よ。

もう少し近づけば、結界石が反応してしまうから」


 あ、そういう事…。

って事はまたアーシェのような聖騎士や衛兵がやってくるのか。


 二人並んで歩いていると、急に俺の身体が光りだした。


「な、なんだ?」


 俺が驚いていると、その光はすぐに消える。

代わりにその光は空へと向かう。

俺の頭上高くにその光が飛び上がると、光は鳥の姿に変わった。

そしてグルグルと旋回を始める。

これが…結界石の反応?あの時は空なんか気にしてなかったから気付かなかった。


「アキト、来るわ」


 そう言ってアーシェが街を指差す。

するとその街から影が飛び上がりだした。

巨大な鳥の姿が二十四。

こちらに向かって飛んでくる。


「聖都クリステリア、奇襲部隊‟グリフォン騎兵団”よ」


 その巨大な鳥の上には何と人が乗っていた。

手には槍や剣、杖とそれぞれの得物を持っている。

そして先頭のグリフォンが俺達の前に降り立つ。

降りてきたのは青年。

金髪の髪は綺麗に整えてあり、スラリとした身体には白銀の鎧で身を包んでいる。

腰にさしてある剣に手をかけて近づいてくるが、こちらを見て目を見開く。


「アーシェ…?アーシェじゃないか!」


 そう言って駆け寄ってくる。

そして何とアーシェに抱き着いたのだ。


「アーシェッ!炎龍が君の街を襲ったという話を聞いた時はどうなったのかと…」


 アーシェも驚いて目を見開いて「あ、あの、だ、大丈夫だったから」とアーシェはそっとその手から離れる。


「キリエス。エールダイトの事は何処で知ったの?」


「膨大な魔力をこの街が感知したらしくてね。偵察に行かした者がエールダイトが壊滅したと、そう報告を受けたんだ」


 イケメンの青年はそう言って「無事で良かった、本当に…」と続ける。

完全に俺空気。

あれ?こいつら俺を警戒して来たんだよな?

ていうかアーシェから手を放せ。

お前誰だよ。

 俺はその青年を睨みつける。

その視線に気づいた青年はこちらを見てくる。


「しかし…これはどういう状況なんだい?

コイツは異世界転移者だろう?連行してきた…という割には拘束もしていないし、どういう事だ?」


 青年が俺を睨み返してアーシェに説明を求める。


「彼は確かに異世界転生者よ。

名前はサエキ・アキト。彼は私たちに危害を加えるような人じゃないから、安心して」


 青年は俺を値踏みするように見てくる。


「危害を加えない…それを判断するのは僕らではないはずだ。

ここに連れてきた、という事はそういう意味なんだろう?」


 そう言ってまたアーシェに視線を戻す。

なんか腹立つな、コイツ。イケメンだから調子乗ってるだろ?


「ええ、そうね。

でも、とりあえずここでは武器を下ろして欲しいの」


 アーシェは周りを見ながらそう伝える。

周りを見れば他のグリフォンに跨っている人達はそれぞれの得物をこっちに向けているのだ。


「…転移者を前に武器を下ろすなど、そんな事は許し難い…が、君に免じてそうしよう」


 青年が手を振ると全員が得物を下ろす。

こいつ、俺と変わらないくらいの歳に見えるが、偉いのか?

周りの人達は俺より随分年上のおっちゃんもいるぞ。


「ありがとう、キリエス」


「どういたしまして。

とは言え、聖都に連れていくのに拘束せずに、という訳にはいかない。

ガルド、彼を拘束しておけ」


 そう言って青年は俺より一回り年上であろう兄貴面の男に声をかける。

ガルドと呼ばれた男は俺に近付いてくると、光る縄を俺の両腕に縛る。

それを見ていたアーシェは苦々しい顔をするが、止はしなかった。

俺もまた抵抗はしなかった。

これくらいは覚悟の上だ。


「乱暴はしないであげて。アキトも暴れたりしないでね」


 そう言って俺にもアーシェは声をかけてくる。

「大丈夫だよ」と俺はアーシェに応える。


 そして俺はガルドって男と共にグリフォンに跨る。

アーシェはと言えばあのいけ好かないイケメンとグリフォンに乗っていた。

俺を拘束した事より、あのたわわな果実がイケメンの背中に当たるのかと思うと腸が煮えくり返る。

やっぱり暴れてやろうか?




 かくして俺達は聖都クリステリアに到着する。

まだ俺は、ここで起きる事を何もわかっていなかった。

異世界転移者という者達が、どういう扱いを受ける事になるのかも。

この後待ち受ける俺の運命も。

何一つ、わかっちゃいなかった。

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