そんな彼も見てみたい
BLなのですが、苦手な方は、あくまで芸術として見てください。
お前ごときが芸術?wってなるかもしれませんが……
彼は、時々、悩んでいる素振りを見せた。
そんな彼が可愛くて、俺は無視した。
しばらくして、彼は、「自殺をしようと思っているんだ」と言った。
死んだ彼を見てみたくて、俺は「良いよ」と言った。
「でも、勝手に死んだら駄目だよ。何日の何時に、どこで死ぬのか教えて。俺が見届けてあげるから」
彼は、悲しそうな顔をして、何日の何時に、どこで飛び降りるのかを教えてくれた。
見上げた先には、彼が立っている。表情はよく見えない。
キラリと一瞬光った何かが、落ちた。
その後に、彼が落ちた。
痛々しい音。
近づいて見てみる。
睫毛に水滴がついていた。
可愛い。
俺が引き留めてくれるんじゃないか、とか思いながら景色を、いや、俺を見つめて、全くその場から動かない俺に絶望し飛び降りて、下で俺が受け止めてくれる、という微かな希望を消せずにいながら死んだ。
考えすぎか。
でも、彼が引き留めて欲しかったのは、本当だろう。
「悩んではいないか」と聞かれず、「自殺をしようと思っているんだ」と言っても心配されず、実行しようとすれば、さすがに引き留めてくれると思ったんだろう。
なんて可愛らしい。
そして今、目の前にいる、青い顔をした彼。
血がどんどんと流れ出す。
こんなにも美しい人が存在しているなんて。
紫色の唇に、そっと、触れるだけのキスをする。
誰かに死んでいる彼が発見されるのも、時間の問題だ。
細い腕に指を這わせながら、携帯電話のボタンを押した。
焦っている風を装って。