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SAVEエネミー  作者: ひじき
2/2

はじまり

「アルお兄ちゃん!朝だよ〜!」


挿絵(By みてみん)

右腕を捕まれ、強引に揺さぶられる。

しかし揺さぶっている女の子が9歳、と

あまりにも幼いものだからたいして眠りの妨害にはならない。…のだが、

ここで起きないと体に害は無いが、鼓膜に害があるので

素直に起きる


「おはようエマ」


「うん、おはよう!ご飯出来てるよ!」


「分かった、すぐ行くよ」

(朝から元気だなぁ、見てるだけで目、覚めてきた。)


返事を確認したエマは ふひひ と、喜ばしげに笑って下の階へ降りていく。

アルお兄ちゃん ことアルカナはベットから降り、

布団を畳んでから

下の階へ降りた。



下の階に降りると、レーナさんが食器に料理をよそっている最中だった。

挿絵(By みてみん)

(詳しくは知らないが確か30歳前後らしい、

髪を一箇所で束ね、エプロン着て料理を作る姿、普通に美人で見とれちゃうな…)


「レーナさん、おはようございます」


「あら、おはようアルカナくん。今日の朝食はフレンチトーストとトマトスープとサラダよ」


「エマ、トマトスープ飲まないよ…!」


「だーめ、好き嫌いをすると大きくなれないわよ?」


そう言ってレーナさんが、

ホカホカと湯気のたっている朝食を並べる。


「うぅ、」


とエマがトマトスープを恨めしそうに見る。

4人座るには余裕のある机で、

そこには洋風のシンプルで上品なデザインをした食器に料理が並んでいる。


アルカナはエマの隣に座り、レーナはエマと向かい合うようにして座る。

木製の家に、窓から差し込む日が心地好い。


「ほらほら、皆食べて」


「いただきまーす!あむ、もぐもぐ…


美味しー!フレンチトーストは美味しいよ!」


「フレンチトーストだけじゃなくて全部食べて下さいね」


アルカナも食べようとしてスプーンを手に取ったが、

何かが足りていない事に気づく。


「あれ、そう言えばユーグリスさん居ませんね」


「そうね、まだ寝てるのかしら、エマちゃん、

起こしに行った?」


ユーグリスさんとはこの家のお父さん的存在で、

冒険家をやっている30歳後半の勇敢な人だ。


確か昨日探索から帰ってきて、

その後1度も目にしていない。

いつも明るく元気な人だから少し違和感を覚える


「起こしに行ったよ!でもね、でもね!ユーグリス寝てなかったの!椅子に座って俯いてて、

何だか話しかけにくかったから置いてきちゃった」


「ユーグリスさん…、昨日からなんか変だ」


「そうね…、アルカナくん、見てきてくれる?」


「はい。」


そう言ってアルカナは席を立ち、

二階にあるユーグリスさんの部屋に向かう。


階段を上っている途中で、

エマとレーナの話し声が聞こえた。


「ねぇねぇ、ユーグリス、もしかしてアレじゃない?あの、何とか病!」


「ッ、…

もしかすると…そうかもしれないわね、」


確か昨日ユーグリスさんが探索に行った場所からすると、それも有り得るな…

などと考えてるうちにユーグリスのいる部屋の前に到着する。


コンコン、


ドアをノックしたが返答はない。


「ユーグリスさん、入りますね、」


そう言ってアルカナは部屋に入る。

すると、


「アル…カナ…、?」


「ユーグリスさん…!どうしたんですかそれ!」


そこには椅子に座り、左手を抑えるユーグリスがいた。

ユーグリスの左手は血管が浮き出て、色は真っ黒に、

それが左手の肘の手前まで侵食していた。


「ま、まさか、昨日の探索で」


「そんな顔をするな…、少し、気が朦朧としていてちゃんと話せるか分からないが、

聞いてくれ」


「そんな事してる場合ですか!それ、西の探索の時に蠍に左手を…」


ユーグリスの真ん中で分けられた前髪の間から冷や汗をかいているのが見える、

少し息も荒く、頑張って整えようとしているのか

余計に苦しそうだ。


「そうだ…、アルカナはその辺、詳しいもんな…、

じゃあ話は早い。

俺の左手を…切り落としてくれ」


西の蠍

大きさは50センチ程にもなる巨大な蠍…

群れで行動していて、一匹残らず殺らないと

大勢で襲いかかってくるので、対処しきれなかった蠍がいると

戦闘中に尻尾の針で刺されてしまう。

とても厄介な生き物だ。


針にある毒は呪いのようなもので、

刺されたものは肉から骨まで、一週間しない内に

灰にされてしまう…。


「そんな、!そんな事出来ません…、」


「そうだよな、無茶を言った、すまない」


そこでレーナさんが危機を察したように上に上がってきた。


「ユーグリス!?、あ、あぁ…、そんな、左手が…」


「レーナ、すまない…、昨日のうちにどうにかしようと思ったんだがな、俺も落ちこぼれだ。

自分で自分の部位を切るのはどうも、根性がいる」


レーナはユーグリスに寄り添って左手を見て泣きそうになるが、

気を取り直すように首を振ってから、

真剣な目でアルカナとユーグリスを見つめた。


「迷っている時間はないわ、私にいい案があるの。」


そう言ってレーナは先程から左手に持っていた地図のようなものを広げる。


「案の定コレは不治の病ではないわ、まだ助けられる。

そして、蠍の毒に対抗する薬があるのよ。


ここを見て、」


そう言ってレーナは地図の東側を指さした。


「ここは王都。この国の首都がある所ね、

そこで二三ヶ月前に薬が出来て、無償で配布されてると聞くわ。」


「でも、ここって…」


東側にある王都に行くまでに、大きな川がある。

その川は、危険ということで名の知れた

アリゲーター川

凶暴なワニが生息し、何人もの人が襲われている

恐ろしい川だ。


「えぇ、ここは普通の人では通れない、

だから誰か、他の冒険者や勇敢な方に頼みましょう。」


「駄目だ…、俺を含め冒険者の上級者達は皆蠍の襲撃にあって、

あの川をまともに渡れる人は、今いないんだ。」


「そんな…」


「レーナ、頼むからそんな顔をしないでくれ、」


ユーグリスがレーナの頬に手をあてる

レーナは今にも泣き出しそうな顔をしていたが、

ぐっと堪える。

その光景を見ていると、胸が締め付けられるようで、

見ていられなかった。


だから


「僕が行くよ。」


「…え?」


レーナが驚いた様にこちらを見る。


「そんなの駄目よ、

アルカナくんにも何かあったら、

そんなの嫌…!」


「そうだ、アルカナ。気持ちは嬉しいが危険な真似はよしてくれ…、頼む。」


「でも、その左手が無いと、

ユーグリスさんはまともに戦えません、

ソレは、冒険者としての終わりだ…!


そんな事絶対にさせない…、それに、」


アルカナは至って真剣な表情でユーグリスを見る。

助けたいの一心という目だ、


(こうなったら言うしかない。

言わないと絶対に無理だと決めつけられるだろう。

でも違う、

僕はただユーグリスさんの背中を見ていただけじゃない、

人の力になりたい…、それで頑張ってきた事がある。)


「僕はプリーストなんです、

本来なら味方をヒールしたり、回復を専門とするのに、ユーグリスさんの左手を治癒する事はまだできない…、


でも、状態異常を無効に出来ないけど回復だけは上手くできます。」


そう言ってアルカナはユーグリスに近寄り手を掲げる

目を閉じ、

「ヒール」

と呟くと、ユーグリスの周りを緑色のオーラが纏い、

ユーグリスの顔色が良くなる。


「アルカナ、いつの間に魔法を…」


ユーグリスははじめて見るアルカナの魔法に驚いている。

そして自分が回復していることに気づき、更に驚いたようだ。


「これは、たまげたな、

まさかアルカナがプリースト…か、

しかも1人前程には仕上げてる。

独学か?」


「はい、言ったら反対されると思ったので」


「そうだな、プリーストは取得の難しい技ばかりで非効率だと聞くしな。」


ユーグリスは感心したようにアルカナを見てから、

考える様に顎に手を当てた。


「これなら、行けるかもな、

でもアタッカーはどうする。

いくら回復が得意でも、攻撃から回復まですべて1人でやって勝てる敵ではないぞ。」


「それは…」


「エマ!そうけんしだよ!」


そうこう話している間に、下の階で1人だったエマも上の階に来ていた。


「エマちゃん、貴方はまだ9歳だわ、」


レーナはエマを話から逸らすためにユーグリスの部屋から一緒に出ようとする


「どうして!エマ強いんだよ!ユーグリスも認めてるんだから!エマはね、16歳のそーけんしの人とも並ぶんだよ!」


「あぁ、確かにエマは小さい頃から仕込んだ分、

周りの子より随分と強い。」


「ならそれで決定だ、

僕とエマで王都まで行って来ます。」


「ユーグリスがそう言うなら…、」


レーナは心配そうにしながらも了承した。


―――こうして、エマとアルカナは王都に行く事になった。―――

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