4話 初めての帝都
さて、帝都へ着きました。
2018.2.21 いろいろと修正
「大きいもんだねぇ」
私は帝都へ入る門を見上げながら呟いた。
高さが5mはありそうな扉は鉄製なのかと思ったが魔鋼鉄という材料でできているらしい。
なぜこんなにのんびりとしているかというと門番の対応待ちだ。
そりゃぁそうだろう、自国の王族子息が歩いて帰ってきたのだから慌てる慌てる。
すぐに王城へと連絡がいき迎えの馬車を待っている状態だ。
「まったく・・・素直に門を開け帰らせてほしいものだ」
「なりませんぞウルスラ様。さっきの刺客のようにいつ命を狙われるかわかりませんですからな」
そう言いながらウルは優雅にやたらと赤い色をしたお茶で喉を潤わせた。
いつのまにか高価そうな椅子とテーブルが用意されてる。
ウルが来たとたん衛兵たちが慌てて用意したものだが、なぜすぐに出てくるんだ?
もしかして頻繁に歩きで帰ってくるのかな。
なんて思っているうちにようやく迎えの馬車が到着したようだ。
「お待たせいたしました。どうぞお乗りください」
「うむ、感謝する。それではいくか」
衛兵たちが敬礼するなか私たちは馬車へと乗り込んだ。
馬車内は煌びやかな装飾が施されており、壁や椅子、ドアの取っ手でさえ職人の技が見られる。
見られるが・・・・・やけにおそまつに見えるのは私の気のせいなのだろうか。
王城へと向かう道中、ヴァイスは帝都のあちこちを説明してくれた。
「そういえばお前はなぜあんな場所のいたのだ?まぁそのおかげで命が助かったわけだが」
「あぁ、私は旅をしているんだ。すごい田舎の出身でな、ずっと世界を見てみたかったからおもいきって街をでたんだ。で、今が初めての大きな町を観光中ってことさ」
「なるほど、見ればまだ成人したばかりであろう?立派なものだ。町が初めてということはまだ冒険者には登録してないのか?」
冒険者?この世界にもまだ魔物に立ち向かおうとする者がいたか。
「冒険者ってなんだ?登録したらいいことあるのか?」
田舎出身ならこういう反応で正解だろう。
「おいおい、いくら田舎とはいえ冒険者くらい知っているはずだが・・・まぁいい。冒険者というのは魔物を退治したり迷宮に挑む者たちのことだ。そうだな、利点と言えば素材の買取額が増したり装備品が値引されて買えたりするのだ」
「そうなのか、ウルは王子なのに詳しいな」
「それはな。この帝都は冒険者を支援し、運営しているからな、詳しくなるのも当たり前だ」
「ほぅ、じゃあ初めてきた街といては大当たりだったというわけか」
「そうなるな。それに冒険者証は名前やランク、レベルが調べられ登録されるから身分証としても使える、明日は登録してみるといい」
え!レベル調べられるの!?どうしよう、レベル9999でも大騒ぎしないかな?
初めての降臨に興奮して最低限の情報しか見なかったことが悔やまれる!
「わ、わかった。行ってみるよ」
「なぜ急に挙動不審になる・・・。お、城に着いたようだ」
どうにかして隠ぺいできないのかな。
あとでルルにきいてみよう。
目の前にそびえたつ門をくぐると淡く白い立派な城が、完全なる部外者の私ですら迎え入れてくれる気がした。
城内に入ると『原初の世界』にあった本格的なメイド服を着た年配の女性が走ってこちらまでやってきた。
「若様!報告を耳にしました、よくぞご無事で・・・ご無事でおられました!」
「うむうむ、心配をかけたなミリア。紹介しよう、こいつはレイヌという我の命の恩人だ。わるいが客室へと案内してくれ。レイヌ、あとで使いをだす、それまでゆっくりと休んでおれ」
そういうとウルとヴァイスはどこかへと言ってしまった。
残ったのは私と女性の二人だけになり、自然な流れで会話しようとしたところ先に言わせてしまった。
「レイヌ様、若様の命を救っていただきありがとうございます。わたくしはウルスラ王子専属メイド長のミリアと申します。この城に滞在の間には精一杯お世話いたします」
そういうとスカートの裾を広げぺこりとお辞儀した。
「えぇ、よろしくおねがいします」
私もそれらしくお辞儀した。
スキル《礼儀作法》Cを入手しました
お、スキルを入手したが今度はCランクだ。
拳法のスキルのときと違うな、なんでだろう?
客室まで行く中でメイドや執事たちの仕事風景を見ているといつのまにか礼儀作法がSSになっており、他にも掃除スキルAと洗濯スキルSが手に入った。
なるほど、ここまでで気づいたスキルの獲得条件は理解することか。
理解することでスキルは上がっていくのだろう。
拳法スキルのときは身体の使い方、関節や拳の使い方を完全に理解し、行使したからSSにまでなったのだろう。
案内された客室は、金糸で装飾されたソファーやベット、程よい光量で差し込む窓と、まさに城だと思うほどの高級感にあふれていた。
キングサイズのベットに腰かけ、私は先ほどの疑問点の確認のためにルルに念話を始めた。
「ルル、聞こえるか?」
「はい、聞こえますよ。あれ?主長様、口調がいつもと違いませんか?」
「そんなことはどうでもいい、それより私は冒険者になることに決めた。レベルを調べられるそうだがごまかせる方法はないか?」
「は、はぁそうですか・・・・それでしたら最初にお付けした偽装スキルを使ってください。SSランクなので完璧にごまかせますよ」
「そうか、じゃぁさっそく・・・・おいルル」
「え?どうしました?」
「レベルが5000までしか下げられないじゃないか!」
そうなのだ、どんなにステータス画面をいじってもレベル5000以下に抑えられなかった。
「しょうがありませんよぉ、その世界ではそもそもレベルが5000以上であることを想定していませんでしたから」
ならなぜ作った!
・・・まぁいい。
炎帝龍でさえレベル2510だから騒ぎにはなりそうだが、幸期時代とやらには+(プラス)のリソースがあふれていただろうからレベル5000近くはいたであろう。
前代未聞ではないはずだ。
「4999もレベルが隠せたことでよしとする。連絡内容はそれだけ」
「わかりました、では」
待っていたのか、念話を切ると同時に部屋のドアを叩く音が聞こえた。
独り言として聞かれていたか?
「失礼します。レイヌ様、国王様との謁見の準備ができましたのでお呼びに参りました」
私はミリアに了解と手を上げるとぞろぞろとメイドたち入ってきた。
なんだなんだ!!
「では、失礼ですがお着換えのほうをいたします」
まぁさすがにこんな格好じゃ会えないわな。
だが着替えを手伝ってくれているメイドたちの顔が怖いんだが。
なんかハァハァしてるし顔が赤い。
こうして初めての身の危険(?)を脱した後、謁見室の前まで移動した。
「ではレイヌ様、名をお呼びしたら入ってきてください」
なんだろう、本当は緊張するはずだろうがまったくもって平常心だ。
まぁ王とはいえ所詮人の子だし、言い方をかえればある意味私の甥っ子や姪っ子のような感じだしな。
「ウルスラ・レイオット第二王子様の恩人、レイヌ様入場!」
掛け声がかかると同時に目の前の扉が開かれ中に入っていった。
謁見室の中はとても広く、部屋の両端には貴族とか鎧を着た者たちが並んでいてなかなかに圧巻だ。
歩きながらそう思い、王とおもう人の前まで行きひざまづいた。
「面をあげよ」
そんな声が聞こえ顔をあげると美中年の男を中心に美男美女が四人、左右に広がってこちらを見ていた。
そのうちの一人がこっちに手を振っている。
ウルだ。
「ふむ、貴殿が我が息子を命の危機から救った勇敢なるものか?」
「はっ、レイヌと申します」
「うむ、なかなかに美しい顔をしているな・・・男、であっているな?我はアルバ帝国国王オルバ・レイオットだ。息子を救ってもらい感謝する」
そういうと王は頭を下げた。
おいおい、王が平民に頭を下げていいのか?
「父上!こんなわけのわからない奴に頭を下げるのはどうかとおもいます!」
「ランバ、ウルの命の恩人であるレイヌ殿に礼をせねば、王としても父親としても失格だ。それともウルの命はどうでもいいものだと?」
「い、いえ。そのようなことは」
「なら黙っておれ、ここは公式の場だ」
王に一蹴され悔しそうにしている男はステータスを確認するに例のウルの兄のようだ。
「さて、見苦しいものお見せした、すまないな。では褒美のほうをとらせる。受け取るがよい、メイデッシュ郷、例のものを」
そういうと横から大きな袋をトレイのような円盤状の上にのせた男がでてきた。
「褒美として金貨500枚を貴殿に進呈する」
え?金貨?500枚!?
どれほどの価値があるか。次回わかります。