プロローグ
さぁ始まるよ!
「うむ・・・少し―(マイナス)のリソースが足りないかな。」
そういいながら私、レイヌ・アルスはため息をついた。創造神主長という地位について覚えているのにも大変なほどの時間が過ぎたがいまだに神々が作っている世界の全ての管理は慣れない。一部でもいいから他の神に仕事を預けたいが、最終決定や細かい設定などを任せられるほどの者はいまだにいない。まったくこんな仕事を考えだしたのは誰だ?
・・・あ、私だった。
「JDN1358からHUI25976までは-(マイナス)のリソースを年間100ほど増やしておいてくれ。副主長。」
「畏まりました。」
そういいながら一柱の神が書類の束を抱えながら部屋から出ていった。彼もなかなかに優秀な神だがまだ足りない。はやく力をつけて仕事を手伝って欲しいものだ。そう考えながら入れてもらった青茶を飲んで大きく伸びをしながらふと窓の外を見た。あいもかわらず晴れている空を神馬が駆けていく姿を見ながらしばしの休憩をとる。この時間は誰にも邪魔をされたくない貴重な時間だ。窓から吹く心地よい風を浴びながら私は昔のことを思い出していた。神々へと仕事を教えながら過ごした日々、言い出しっぺだから皆の長につけと言われ続けた日々、そして・・・・・奪ってしまった命の数々。本当にいろいろとあった・・・・・。
「主長様ーーー!!!」
そんな声と扉を開ける音に雰囲気をぶち壊され少しイラッとしながら駆け込んできた神に向き合った。
「どうしたのですかルル?」
「こ、これを見てください!!」
そういいながらルルは書類の束を机の上にドサッと置いた。桃色のボサボサヘアーを見るとさっきまで寝ていたのがありありとわかる。
「またなにかミスをしたのですか貴女は。まったくせっかく創造主の一人になったのに・・・。」
そういいながら渡された書類をみながら説教をした。
「いいですか?創造主というものは・・・え?・・・なんですかコレは!?」
その書類に書かれていたのはとんでもない報告だった。
「-(マイナス)のリソースが年間1億で+(プラス)のリソースが年間100!?なんなんですかこれは!!
いったいなにがあったらこんなことに・・・。」
「あ、あの・・その・・少々居眠りをしてしまい設定を誤ってしまって・・・。」
「いったいどれほどですか?」
「その・・1000年ほど・・・。」
「寝すぎだ駄女神!!」
「ふええええ!!ごめんなさーーい!!」
泣きながら謝るルルに若干、いやかなりイライラしながら本日何度目かのため息をついた。
「まったく・・・こんなになった世界はそう簡単には修正できません。枝分かれした世界の一つでしょう?こうなったらしかたありません、この世界は消して・・・。」
「あ、あの、その、その世界は『原始の世界』でして・・・。」
「なんですって!?貴女にまかせた世界の大元ですか!?『原始の世界』が崩れると枝分かれした何億何兆以上の世界が連鎖して崩れると口が酸っぱくなるほどいったでしょうが!!」
「ご、ごめんなさーーーい!!」
ルルに拳骨を落とし自分の頭をガシガシとかきながらなんとか解決案を模索していく。
「他の創造主を手伝いに回すか・・・いやしかし・・。」
「あ、あの~主長様?そんなに頭をかくとハゲちゃいますよ?」
「誰のせいだ誰の!!」
再び拳骨をおとすとまたため息をついた。『原初の世界』ではため息をつくと幸せが逃げるらしいが私の幸せはもう残ってはいないのだろうか・・・。
「しかたありません。私がその世界にいきます。」
「主長様!?」
「しょうがないでしょう。それしか方法がないのですから。私が降り立って修正してきます。」
そういいながら私は主長室から出てルルの管理室へと向かった。みちすがらお説教をしたせいかやたらと歩くスピードが遅かった。
「ど、どうぞ。」
そういいながらルルは自らの管理室への扉を開けたが、緊張のせいなのか少し顔が赤い。
「では失礼するよ・・・なんですかこの部屋は?」
扉を開けるとそこは・・・ゴミ溜めだった。いや、少し違うかな?隅っこに居住スペースがある。
「ルル、128年後の定期給料日は覚悟しておくように。」
「そ、そんな~!?」
「当たり前です!!ここは貴女の住む場所じゃないんですよ!!とりあえず私の力を封じる封師を集めてきなさい。」
「え?なぜですか?」
そういいながらルルは首をかしげた。この駄女神は覚えていないのか・・・。
「我々は強い、下界が歪むほどに。だから世界が耐えられるように自分の力を封じるのです。昔言ったはずですが?」
そう言うと目線を外しダラダラと汗をかきだした。やっぱり覚えていなかったか。
「とにかく、私の力を封じられる神をできるだけ集めてきなさい。」
「え?できるだけですか?」
「そうでもしないと私だとあっという間に世界が歪んでしまいますよ。」
そう、私の力は強すぎる。神々の中でもNO.2の強さを持つものだから昔は誰も近づかなかった。あいつ以外は・・・。
「あぁ、それから女王に100年ほど休暇をとると伝えておいてください。」
「休暇ですか?」
「えぇ、いい機会です。ここ数億年ほど休んでいませんから。頼みましたよ。」
「わ、わかりました。」
そういうと桃色の髪をたびかせながら急いで部屋を出ていった。さて、待っている間これから行く世界の予習をしておこう。データを見ると所謂、剣と魔法の世界のようだがあの駄女神のせいでここ数百年で技術的進歩がなく、魔物にあふれ危機に瀕している。そうやって時間をつぶしているとドタドタと部屋の外が騒がしくなってきた。
「主長様!つれてきました!」
そういったルルの後ろからゾロゾロと封師たちが入ってきた。ふむ、25名か。急なことなのに結構きたな。
「すまないね封師たち。事情は聞いただろう。早速だが頼みますよ。」
だが彼らはザワザワと話出し、いっこうに作業にうつってくれない。
「どうしました?」
「いえ、それがルル様にありったけの封師をつれてくるようにと言われただけなので状況がわからないのですが・・・。」
「え?」
あ、ルルがまた目をそらした。こいつは・・・。というわけで一から説明しなければならなくなった。
そのたびにちらちらと彼らがルルのほうを見て、彼女は赤くなってうつむいていた。
「というわけです。頼みましたよ。」
「はっわかりました。お前ら、位置につけ。」
封師のリーダーが声をかけると彼らは私を中心に円をえがき呪文を唱え始めた。
儀式が始まりどのくらいたったのだろう。そろそろ立ちっぱなしに飽きてきたところ・・・。
「準備完了いたしました!」
「では始めてください。」
「はっそれでは・・・・封印!!」
私の周りにいくつもの魔法陣が描き出され次々と体に吸い込まれていく。そして拳ほどの大きさの光がでてきた。これこそ私の力の塊だ。
「ありがとう。これは君たちが保管しておいてください。」
「はっ確かに受け取りました。では失礼します。」
そういって彼らは来た時と同じくあわただしく出ていった。
「よし、ルル送りなさい。」
「え?もうですか?送り先の世界の説明はいりませんか?」
「えぇ、君たちが来るまでに大まかなことは調べました。それに久々の休暇です。現地で直に体験し、少し楽しみながら過ごしたいので。」
「わかりました。ではゲートを開きます。」
すると目の前に光が集まりだし扉が出現した。このゲートをくぐれば出発だ。
「ではいってきます。」
「はい。お気をつけて。私へのホットラインはいつでも開いていますのでよろしくお願いします。」
そして私は光へとのまれていった。
ありがとうございました