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2話「家庭教師」

「どうも初めまして。今日から明希くんの家庭教師をさせてもらうことになってるマリーンです。これからよろしくね」


「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします」


柄にもなく敬語になる。ぱっと見た感じは青髪ロングの美少女。年齢でいうならば16歳くらい? だと思う。


「そう固くならなくてもいいよ。ご両親はさっき仕事に出掛けてしまったようだけど、大丈夫、私一応家政婦もできるからね」


「か、家政婦?」


「そ、家政婦。こんな見た目だけど和食作るの得意なんだよ」


「あ、その、自分のことは自分でしま「だーめ、私も仕事を受けてここに来てるの。だから私から仕事を奪わないで、ね?」......はい」


ぐいっと端正な顔を近づけられて断れる男は普通いないと思うんだ。少なくとも俺には無理。

ふわっと香る女の子の匂いに否応なく意識させられてしまう。

これからの生活はちょっと気が抜けなそうだ。


「それで、まずは君の特殊回路の属性を調べよっか」


「属性って火とか水とか、普通の魔術にあるのと一緒なんですか?」


「そうよ、あ、あと私には敬語じゃなくていいよ。どうせ同い年だし」


「お、同い年!?」


「驚くほどでもないよ。私より年下でもっと優秀な子がいるくらいだしね」


やけに若いと思ったら俺と同い年だったのか。敬語で喋るのちょっとぎこちなかったし、ここはお言葉に甘えて普通にしておこう。


「んで、属性の話だったよな。俺が今まで使ってた火属性はどうなるんだ?」


「あなたの魔力回路はもはや無いに等しい、これは属性も同時に失ったのと一緒なのよ。だから新しく生成された特殊回路の属性を知ることから始めないといけないの」


「なるほど。確かに回路によって属性が異なるってのは授業で習ったな」


「そういうこと。と、いうわけで特殊回路に魔力を流してみようか。私の魔術で属性を読み取ってみるから」


言われた通りに特殊回路へ魔力を流す。感覚としては魔力回路に魔力を流すのとたいして変わらないのですんなり実行できた。


「んー、ん? 何この属性、空間? 次元? それとも......」


「俺の属性はどんな感じだ?」


マリーンは「ふう」と息を吐いてから答えた。


「あなたの属性は、『空間』よ」


「空間?」


「ええ、相当珍しいわよ、これ。確か私の知る限りじゃ人類史も含めて世界に3人しかいない属性。1人はアルスマグナ魔術機関のトップ、飾利 源次郎。もう1人は原初の人類、アダム」


口をあんぐりと開けたまま停止してしまった。

外から聞こえる雀の鳴き声が場違いのように聞こえ、風で揺れる木々のざわめきがそれをいっそう際立たせる。

思考が戻る。

飾利 源次郎は俺も知る人物だが、アダム、この名は間違っていなければ架空の人物のはずだ。


「アダムって架空の人間じゃないのか?」


「いいえ、アダムは実際に存在していたわよ。あまりにも人間から超越し過ぎていたために架空の人物とされただけで、確かに存在していたの」


マジか。エデンの園とかアダムとイヴとか。全部架空の出来事だと思っていた。マリーンは「つい最近まで解明されてなかったんだけどねー」と言っているので世間一般にはほとんど広まっていないようだ。普段からニュースなどを見ている俺もそんな話聞いたこと無いし。


「んじゃあ空間魔術なんて教えるのは無理なんじゃないか。マリーンは空間の属性じゃないんだろ?」


「あー、それなら大丈夫よ。私の属性は複製と記録だからね。つまりあなたの属性を一時的に複製して、私の脳に記録されている空間魔術の情報を使えば十分対応可能な範囲よ」


ふんすっ! と自慢げにいうマリーン。年相応の愛らしさが突然でてきたので俺は誤魔化すために苦笑いをした。


「まあさすがにすぐ教えることはできないから少し私に時間を頂戴。......そうね、2日あれば大丈夫かしら」


「2日!? そんな短い期間で教えられるようになるのか?」


「当然。もちろんその間も家政婦の仕事はきっちりこなすわよ」


改めてアルスマグナ魔術機関の人間は噂で聞いた通り常識はずれの魔術師がいるようだ。いきなり使ったこともないであろう属性をたった2日で人に教えられる水準までもってくると言うのだから。


「んー、そろそろお昼ね。まずは昼食をとりましょうか。物の配置はあなたのお母様に聞いてるから問題ないわ。明希くんはテレビでも見ながらゆっくり待っててね」


「お、おう」


マリーンはそう言うと割烹着を着て、食材を取り出し、調理し始める。その姿はまさに古き良き日本の女性といった感じだ。青い髪に青眼という異なる点はあるけれど。

俺の出番は本人の言う通りなさそうなので、待っている間に特殊回路に軽く魔力を流して慣らしておこう。


「にしても、割烹着とはなあ......」


年頃の女の子が割烹着を着るところ見るなんて一生無いだろうと思っていただけにちょっとだけ感動するのであった。


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