わらう彼方に待つ存在
宙を舞うそれは、世にも珍しい白銀をその身に持っていた。その色は私が本来持っている色と同じで、だからか私はその色を見せられるそれが羨ましくも好きになった。
ひらひらり。そのひとつが、伸ばした手のひらに落ちる。
「……まだ、」
重さの感じられないそれを、私はそっと握り込む。
「まだ、始まらないよ」
ひらひらり。白銀が舞う景色に混ざるように黒と白の蝶が舞う。
その光景は、もう何度目だろう。
―― ?
耳元で囁く声に、私はゆるゆると首を振る。
「まーだだよー」
まだまだ気付かない人たちは、きっと私をちゃんと認識できていない。それは悲しくもあり、淋しくもあり、それでもなんとなく嬉しかった。
どうかまだ気付かないで。なんて、愚かな願いを口にしてしまう。そんなものは、無意味なのに。
―― ?
「うん。まだ僕の勝ち」
―― ?
「おかしい?」
―― 。
「ふふっ素直だなぁ」
私はようやく耳元で囁く存在に目を向ける。
「でも、そうしないとわかっちゃうでしょう?」
その存在は居心地悪そうに体を揺する。直視されるのを厭う者らしい。じっとこちらを窺う瞳に、私は笑顔を浮かべた。
「また来るね」
次は、きっと、始まりの時だ。
――まってる。
鈴を転がしたような可憐な声が、消えゆく私に応えてくれた。