第十帳
優衣さんが、そろそろ本性を現しだします。
伏見山の山道を降りると、可憐と夏は深々と頭を下げて、京都の街中に消えていった。気づけば鈴音の姿もなかった。
さすがに扇も、二の扇を扱う気力は残っていないので、空を飛んでは帰れない。残った流達は広い道路まで歩いてタクシーを捕まえることにした。
「あーでも、そんなびしょ濡れでタクシーに乗っちゃって大丈夫かな?ま、仕方ないよね。傘もなかったし。あ、タオル貸そうか?」
差し出されたのは予想通りにびしょ濡れのハンカチだった。
疲れ切って無言で歩く一行の横で場違いなほど明るい声を出し続けるのは玉零だ。ツッコミを入れる気力もなく、誰も反応しない。
「ね、ねえ。ねえったら!」
「あの!」
百花が大きな声を出してしつこい玉零の口を塞いだ。
「この辺りでお引き取り願いたいのですけど」
玉零は「何でー?」と頰を膨らませてみせる。百花の睨みは全然効いていない。
「ここで、お引き取りを」
ふざけた雰囲気に屈することなく、百花が行き先と反対の方角を指差す。
「ていうか、何で敬語なのー百花ちゃん?」
そう言って食い下がる玉零は、白木零として話しているようだった。
雨に濡れた髪は黒く、瞳も黒い。肌だけが透けるように白くて登り始めた朝日に照らされている。
「何でって、貴女妖怪でしょ!?」
百花の声が甲高くなったところで流が仲裁に入る。玉零は何かのジョークのつもりなのだろうが、冗談の通じない百花相手には止めてほしい。
「もう正体バレてんだから、そこらへんにしとけ」
伏見山を下る際、何気なく人間の姿に戻った玉零だったが、それを見逃す百花ではなかった。にもかかわらず説明もなしに何食わぬ顔でずっと付いてくるのだから、百花も堪ったものじゃないだろう。
白木零は妖怪だった。
その事実だけで、いっぱいいっぱいなのだ。
「はあ。そんなこと?」
「そんなことって・・・ずっと騙してたんでしょ!?」
「私達の友情がこれしきのことで揺らぐとは・・・零ちゃん悲しいよ」
年の功か。一方の玉零はちっとも堪えてない。
「友情なんて・・・!」
ヒートアップする百花を制したのは意外なことに楓だった。
「隆世も知ってたらしいで・・・説明は自分の兄貴に聞きぃ」
徐に懐を弄る楓。しかし次の瞬間には「あ――!」と大声で叫び、くず折れた。
「何やねん!」
脱力したまま、会話に入ってこなかった扇が突っ込む。
少しは元気が出てきたようだ。
「スマホ・・・落としたまんまや」
「あー・・・それはもう消し炭になってんのとちゃう」
優衣に容赦なく現実を突きつけられ、楓の頰から雨水とも涙とも付かぬ雫が流れ落ちた。
「扇お兄ちゃん持ってないの?」
「持ってへんよ。電子機器は術使たら壊れるかもしれんから家に置いてきた。優衣かて持ってへんやろ?」
「そりゃね。空飛んだらポケットから落ちそうやん。だってあれ・・・めっちゃ高いやん!十万ぐらいするやん!アルバイトのお金消し飛んだわ!楓お姉ちゃん分割払い、終わってた?」
魂が抜けたような顔をして歩き始めたところを見ると、恐らく払い切ってなかったのだろう。
同情の視線を送りつつ、申し訳なさそうに百花はスカートのポケットに手を入れた。
「大丈夫です。私、持ってきてますから」
そして、二つのスマホを取り出した。
「はい、一応流兄様のも持ってきました」
「ありがとう」
現代の科学技術の発展は素晴らしいもので、防水加工が施されたそれは、雨に濡れながらも問題なくホーム画面を開くことができた。
見れば、同じところから着信が十件以上も来ている。
隅田隆世だ。
百花が伏見山神社へ来た理由は、恐らくこれだろう。
「俺からかけようか?」
楓との通話が突然途切れたのだから、だいぶ心配をかけたに違いない。皆の無事の報告がてら折り返し電話をかけようとしたが、百花が止めた。
「いいえ。私から」
そう言った次の瞬間、まるでタイミングを見計らっていたかのように百花のスマホが鳴った。ディスプレイに表示されている名前は『兄様』だ。
「もしもし」
スピーカーにして百花が通話ボタンを押す。
『悪かった』
それが、隆世の第一声だった。
『何の助けにもなれなくて』
「別にええよ。隆世は今東京にいるんやし」
楓がすぐさま宥める。が、
「謝って済むかっ!お前には聞きたいことも言いたいことも山ほどある!けど、それは百花に譲ったるからしっかり聞いとけ!」
完全復活した模様の扇の恫喝が響いた。
隆世は「ああ」と了承の意を伝えると、妹の言葉を待った。
百花が息を吸う。
「兄様から見て、この妖怪達は信用に足る者達なのですか?」
単刀直入な質問に隆世はしばらく思案しているようだった。
「俺がそうだといえば、お前はそいつらを信用するのか?」
質問を質問で返されても百花は動じない。
「兄様の意見はその判断のための材料です。流兄様はこの者達を信頼しきっているみたいですが、その根拠を聞くのは第三者である兄様からがいいと思いまして」
冷静。
限りなく自身の感情を排除して、適切な方法を取るあたり、百花は誰よりも陰陽師の素質があると言わざるを得ない。
頭から否定することもなく、誰かの考えに同調することもない。友達が妖怪だった事実に混乱していた頭をこうもあっさりと押さえつけることができるのだ。
自分がどう思うかは二の次で、どう考えるのが正しいのかを探そうとする。無名さえも判断しかねた正しさというものを、百花のような者になら見つけられるのかもしれない。
「宮古学園で死体が上がった時、お前は保健室で寝ていたな?」
「ええ」
「あれは怨霊の仕業だ。お前もその餌食になるところだった。眠っていて覚えていないかもしれないが、お前を救ったのは流と・・・そこにいる妖怪達だ」
そして、隆世は雪山で自身も玉零に助けられたことを付け加えて、話を終えた。
――――白鬼は人の敵ではない。そう締め括って。
最後の言葉は『信用できる』と断言しているに等しかった。
この短い説明で、百花はどう判断するのか。
次の瞬間、水分を吸って重くなった百花の長い髪が、だらりと垂れ下がった。
「お礼を言うのが遅くなってしまってごめんなさい」
顔を上げた百花の瞳には、呆気に取られた様子の玉零の顔が映っていた。
「助けてくれてありがとう。零ちゃん」
潔いほどに瞬時に決断を下した。百花は玉零を友として受け入れたのだ。
「そんな改まって礼なんか言わないでよ・・・友達なんだから」
はにかみながら鼻の頭を掻く玉零の顔はほのかに赤い。これほどまでに玉零が照れているところなど初めて見たような気がする。
「奇特な妖怪もいるもんだなー」
あまりにも少女らしい玉零の姿に毒気を抜かれたのか、扇は肩肘を張るのをやめたようだった。
「まさか陰陽師と妖怪が協力し合えるとはね。うちも驚きや」
隆世の命の恩人ということもあり、楓も完全に敵対心を失くしている。
「でしゃばりは嫌いやけどな」
そう言って溜め息を吐いた優衣でさえ、この結末に少なからず感謝しているのは確かだ。人の領分だと偉そうに叫んだところで、玉零の力がなければ誰も、何も救えなかった。
「ありがとな」
ポツリと漏らしたその言葉は独り言に近かった。
だが、玉零の耳にはしかと届いたようで、満面の笑みがこちらを向く。そして、ふっと目を細め空を見上げた。
「陰陽師も流石だったわよ。もうダメだと思った時も正直あった。それでも、貴方達は戦った。人の尊厳に懸けて、己と仲間の意志を賭けて、そして勝った。陰陽の流れを変えたのは、陰陽師。貴方よ」
同じように見上げた空に、もう渦はなかった。
ただ曇天から落ちる雨粒が顔を打ち付ける。京都の街に上がった火の手もこれで掻き消えてくれれば幸いだ。
「陰陽の流れを糺すのは陰陽師の仕事だからな」
完全な照れ隠しだった。
隅田隆凱の受け売りを早口で喋って押し黙る。
だが、本当は。
口には出さないが、心の中で密かに思う。
かつて、陰陽師と白鬼は協力関係にあった。玉零と付き合っていればそれが事実だったのだと分かる。
だから余計に分からないのだ。
白鬼が迫害されたわけが。
平安の・・・京都の陰陽師による白鬼殺しは事実だったのか?
本当に隅田の、玉無の、伏見山の祖先がそのような愚行を起こしたのか?
仮にそれが事実だったとして、何がそうさせたのか。
扇が手を挙げてタクシーを止めた。
ちょうど中型タクシーだったので五人乗れる。当たり前だが、必然と玉零達とはここでお別れとなった。
「またね」
バイバイと手を振る玉零の横で隼が懐から羽を取り出していた。
二人はそれに乗って帰るのだろう。
ならば、ここまで付き合って濡れ鼠になることもなかっただろうに。
びしょ濡れの客だからか、とてつもなく無愛想な運転手が行き先を聞く。
住所を伝える扇の声は遠い。車に乗り込んだ瞬間、一気に眠気が押し寄せてきたのだ。
泥のような微睡みに全身が包まれ、流の意識は完全に途絶えた。
* * *
冷房の効いた車内に入り込んだ瞬間、濡れた衣服が一気に体温を奪った。あまりの寒さに思わず身震いしたが、びしょ濡れの団体を迎え入れてくれた手前、冷房を切って欲しいという要求は出しずらい。仕方なく優衣は両腕で体を抱き抱えて凌ぐことにする。
車内に会話はなく、ふとバックミラーに目をやると、後ろの楓、流、百花の三人はすっかり眠り込んでいた。
この寒さの中、よく寝れるものだ。後方座席までは冷房は届かないのだろうか。
運転手と優衣の間に座る扇も腕を組みながら目を閉じている。が、これはきっと狸寝入りだろう。
「扇お兄ちゃん」
声をかけてみるが返事はない。
だが、
「本当は、殺す気やったんやろ?」
「っぐほっ、げほっ、けほ!?」
核心に迫れば、途端に目を開いた。
直ぐさまバックミラーで後ろの三人が起きていないかを確認する。確実に声が届いたであろう運転手よりもそっちを気にするあたり、本当に家族思いの扇らしい。
ちなみに運転手は全く表情を崩さない。これまでいろんな客を乗せてきた故の御業なのだろう。
「優衣、どういうつもりや!?」
扇は声を抑えて詰め寄る。
「何か、結果オーライな感じで丸く収まったけど、これは扇お兄ちゃんの当初の思惑とは違うんやろ?」
「何を言うてんねん。これで良かったんや」
その言葉に偽りはないだろう。でもそれは、そう思うようになる過程があったからだ。
「大体、扇お兄ちゃんは可憐さんの何に賭けてたんよ」
「せやからそれは、可憐の生きたい意志に・・・」
「違う」
強く否定すれば、扇の目はいとも簡単に揺らいだ。
家族だから油断しているのだとしても、もっと扇は強かになるべきだと思う。
例えば、母のように――――。
「あの鬼は嘘吐きや。事が丸く収まるようにわざと嘘をついた。それに乗った扇お兄ちゃんを非難するつもりはないけどな」
「何が、言いたいんや・・・」
分かっているくせに、人に言わせようとするのだからずるい。
「結界は内側から解くには脆かったんやろ?なのに、夏お兄ちゃんと鈴音お姉ちゃんが傷つけられた時、可憐さんは動かなかった。それが生きたい意志やなんて。他人を顧みないことが何よりも嫌いな扇お兄ちゃんが、そんなものに賭けるわけない」
扇は黙って聞いていた。反論はないようだ。
「可憐さんに結界から出るなって言うたんは本真なん?」
「ああ」
「そのくせ、出なかったら殺してたんやろ?」
直球な質問に扇はどう答えていいものかと考えあぐねているようだった。誤魔化すかとも思ったが、結局暫くの沈黙の後「ああ」という重い声が聞こえた。
もともと、狂い狐を殺すと宣っていたのだ。楓あたりは嘘だったのだと、もしくは本当の狐憑きであった雅の方のことだったのだと思っているかもしれないが。
違う。
雅を犠牲にして生きる可憐が憎い。
妹達に人殺しの片棒を担がせた可憐が憎い。
その憎しみは相当なものだろう。
扇は観念したようにポツリと話し出した。
「流の矢が雅さんに当たる直前、可憐が庇おうとしたんや。多分、全部思い出したんやろな。だから、結界を壊して雅を助けに行ったんやろ。行ったところで雅さんは助けられへんし、自分が危険な目に合うだけやのにな。あれは、考えた結果の行動やなかった。ただ、純粋に、兄の身を案じたんやろ」
「だから、許そうと思ったん?」
扇はゆっくりと頷いた。
「妖狐が可憐の身体を狙ってるんは知ってた。雅さんから全部聞いてたからな。結界が崩れれば妖狐が可憐に乗り移る」
「妖狐に隙はないやろ。結界の貼り直しが間に合うとでも?」
「可能性は低いと思ってた」と、扇は固い表情で答える。
「失敗した時は、妖狐ごと切り捨てるつもりやった」
「そう」
そうだと、思っていた。
許したなどというのは綺麗事。
扇はどちらにしろ可憐を殺すつもりだった。
その事実が無性に――――
「失望するわ」
想像以上に乾いた声が車内に響いた。
誰でも間違いは起こすものだが――――
陰陽師たるもの、感情を捨てた選択肢を選ぶ必要も出てくる。それは時に酷いほどに冷徹に映るだろう。
しかし、感情に飲まれて選んだ道は――――こんなにも醜い。
それは本人が一番分かっているだろう。
扇は唇を噛み締めたまま俯いている。
「扇お兄ちゃんは、当主には向かんよ」
そんな扇に追い打ちをかけるのは、個人的感情からではない。
真剣に、玉無の未来を見据えてのことだ。
「私が当主になる」
突拍子も無い発言に、扇はあからさまに驚いた表情をして優衣の顔を見つめた。
優衣も無言でそれを見つめ返す。
扇は何を思い、何を考えているのか。そして、どう返すのか。かつてないほど心臓の音が煩い。頭も身体も冷えているというのに、心だけが熱い。
「俺、は」
「はい、到着しました。料金は一万三千六百六十円になります」
空気を読まないというか、読む気のないベテランタクシードライバーは、粛々と仕事を遂行する。
扇は後ろの三人を叩き起こし、会話の続きを行う気はないように見えた。
今はそれでもいいかと、優衣も怠い体を無理やり起こしてタクシーを降りた。
陰陽家に生まれたこと。
玉無の者として生まれたこと。
陰陽師として生きること。
現当主、扇は歴代でも随一の陰陽師だと謳われている。
そのプレッシャーに押し潰されそうなのが、長兄の扇。
その子供として生まれてきたことを捨てたのが長女の鈴音。
そんなことを気にしたこともなく他家の事情に踏み入ったのが次男の夏。
その境遇を呪いつつも現状に甘んじているのが次女の楓。
そして、私は―――――――
「も、もか・・・着いたぞ」
目を擦りつつ婚約者の手を優しく引いて、家に入る想い人を無感情に眺める。
隅田隆凱が酷い運命の輪に引きずり込んだ二人だというのに、羨望の目で見つめては不謹慎だなどと、理由をつけて。
恋慕の情を押し殺してでも、陰陽師として正しくあろうとするのが三女の優衣。
「隅田も、何や隠してるみたいやし」
「何か言ったあ~優衣?」
眠気眼を擦りながら、楓が聞く。
「何でもないよ!」
明るい表情で否定し、優衣は楓の背中を押して屋敷へと入った。
憔悴しきっているとはいえ、まさか誰も疑問に思わなかったというのだろうか。
百花に掛かってきた電話。
そのタイミングの良さと隆世の発言に。
楓との通話が突然途絶え、隆世もそれ相応の危機意識を持っていたはずだ。それを、何をもって全て終わったと、判断し電話をかけたというのか。
陰陽の流れ――――?
否、それ以外の力が、隅田にはある。
それは確信に近いものだった。
リビングに着くなり百花以外の全員が倒れた。
その光景に溜息を吐きながら二人でタオルケットを掛けていく。
「ありがとうございます。優衣さんもお疲れでしょうに」
「いやいや、百花ちゃんも疲れたんとちゃう?」
「私なんて!何もしてないですからっ」
その謙遜が嫌に鼻についた。
「またまた~」
笑ってやり過ごすが、少し演技じみていただろうか。嫉妬などという感情はとうの昔に消し去ったはずなのに。
痛い。
「じゃあ、私らも寝よっか」
「そうですわね」
二階へと上がる百花の姿を最後まで目で追った。不審な陰陽の流れは何も感じなかった。
「はあ―――」
何度目か分からない溜息を吐き、やっと優衣は肩の力を抜くことができた。
それにしても――――
まだ自分には知らないことが多すぎる。
一体、何が。誰が。この出来過ぎた舞台を用意したというのだろう。
釈然としない気持ちを抱えたままではあったが、優衣も襲ってくる眠気には勝てず、そのままリビングに倒れ込んだのだった。
* * *
生温い雫が頰を打ち、思わず天上を見上げた。
京の街で一番高い塔の上で、厚い雲の先に視線を走らせる。
視界が開け、星が目の前に広がる。
「白鬼の死は遠ざかった、か」
先ほどは見えなかった星の瞬きを見つめながら無名は呟いた。
先刻、助力を惜しんだことを詰られていた時には確かに死相が現れていたが、今はもう消えている。
それとも、読み違えていたのだろうか。
頭上で強く瞬く一点の星に目を凝らし、考えを巡らせる。何百年と暗闇に身を置いていたせいで曇天の星を見逃してしまったと、考えられなくもない。さすがに星が動けば感知するだろうし、その線は薄い。それに、星は滅多なことでは動かない。
南に向かえば命が欠けると星は示していた、はずだった。人の子の生が目の前で散り、助けられなかった後悔で寿命を縮める・・・という筋書きは容易に想像がついた。だが、真実は誰一人として死ぬことなくこの件は終わった。
本来なら火事でも死人が出るはずだったのだ。それがこの雨で 、最悪の事態をギリギリ回避できたというにだから・・・誰かの思惑を疑わざるを得ない。
俺が動かずとも、糺された。
初めから、予定されていた。
「自分の知らないところで事が進むのは気分の良いものにではないな」
陰陽師としての自尊心が、徐々に重たくなる袖を持ち上げて印を結ばせた。
「汝の正体を明かせ」
眼下の街に向けて素早く指を水平に引けば、僅かな気を感じた。
「やはりな」
妖怪とは明らかに異なる気だ。この件自体、誰かが企てたと見て間違いない。
ならば・・・
再び結んだ印はしかし、詠唱する前に解く羽目になった。
「何の用だ」
苛立ちを含んだ無名の短い問いかけに、背後の女は静かに笑った。
「やだ。怒ってるの?これからすっごい術で黒幕を炙り出そうとしてたのにって?」
今度は声を上げて少女のように笑うものだから、危うく消し炭にしてしまいそうだった。
「ちょっと!詠唱もなしにいきなり火の玉投げつけるとか、信じられないんだけど!?」
「いつまでもあどけない少女の気分でいるお前の方が信じられない」
そう言って振り返れば、膨れた面の扇が立っていた。
「帰ってきていたのか?」
「そりゃ、気になるもの。対局にある息子達がどういう結論を出すか、ね」
母親の言う台詞ではない。まあ、本人も今この場で母親として振舞っているつもりはないのだろうが。
六十四代目玉無家当主、玉無扇。
この世に生を受けた瞬間から、その存在を感知していた。
六十四代目だけではない。封印されてからというもの、例外は多少あるだろうが、近くに居る陰陽師の存在は全て把握してきたつもりだ。
だから、分かる。
生まれて落ちた瞬間に、はっきりと感じた。
彼女は歴代の玉無家当主の中でも屈指の霊力の持ち主だと。
「何を企んでいる?」
歳の割には若々しい顔を見据えて、無名は直球に問う。
扇は微笑を湛えたまま、人差し指を顎に当てた。
「今回も、報われない次男のために、長女の蛮行を見逃してあげただけよ」
「・・・今回も、か」
封印されていたこの数百年、この世で起こったことの詳細は知り得ていない。高い霊力を持つ者の存在と大まかな陰陽の流れを感知するだけで、状況を見る目も聞く耳も塞がれていた。だから、前回のことは今回明るみに出た部分でしか分かってはいない。
「ふふ。知りたい?貴方が眠っていた間のこと」
顔に出ていたのだろうか。扇が挑発してくる。だが、ここで素直に教えてくれような人間でもないだろうから「いい」と断る。
「えー!折角のチャンスだったのに。ざーんねん」
「よく言う。教える気などないくせに」
「そんなことないわよ」
「ほう?」
その言葉に一瞬でも唆られてしまったのがいけなかった。
扇は年甲斐もなくキラキラした瞳を向けてくる。
「止せ。年増がそんな顔をしても唆られぬわ」
「でも、私は貴方に興味があるの」
「何が言いた―――」
最後まで言葉を紡ぐのが躊躇われた。それほどに、その目は輝いていたのだ。狂気的なまでに、殺意を宿して。
「貴方は何者なの?息子からの連絡では、はるか昔に神咲の者に封印された陰陽師ってことだったけど・・・」
言い淀むのは、得体の知れぬ陰陽師の霊の処遇を隅田に委ねた経緯を長男から聞いているからだろうか。
否。
「ええ、それは、元から知っていたことよ。あの蔵に貴方がいたことは小さい時から気づいていたわ」
ギロリと睨めば、扇は肩を竦めて白状した。やはり、侮れない。
「でも、貴方自身については何の憶測もできていないのよ。一体どこの誰なのか・・・隅田の坊やは土御門の陰陽師と推測したみたいだけど、たぶん厳密には違うのよね?」
扇の問いには答えない。
「ふん、何よ。答える気がないのは貴方も同じじゃない」
面白くなさそうに鼻を鳴らした扇は、なお一層猜疑心を露わに畳み掛けた。
「神咲を恨んでいるの?貴方の自由を奪ったのはあの子じゃないのに・・・どうして流君を狙ったの?」
「何のことだ」
苦しいとも思われたがしらばっくれる。
「とぼけないで。さっき私に火術を使っておいて言い逃れできるとでも?流君にも同じことしたでしょ。いいえ、威力はさっきの数倍はあったわ。まさか殺すつもりだった?昔、貴方と神咲の間に何があったの」
しばらく扇は鋭い視線を向けたまま返答を待っているようだった。だが、物言わぬ霊を前に降参したのか、大きな溜息を吐いて背を向ける。
「私だって、答えてくれるとは思ってないわよ。街に火をつけたのは貴方じゃない。それは分かっている。今回の事件、貴方は完全に傍観者を決め込んでいた。流君に頼まれたことも、鬼の娘に頼まれたことも、本当は何一つ果たしていないって知っている。でも・・・貴方は傍観者の枠を出て、火事の騒動に便乗し流君を襲った。それだけが引っかかってたから、その意味を問いたかっただけよ。初めから答えなんて期待していないわ」
その背中から殺意は消えていた。
「・・・それだけ、か」
だが、扇との間に流れる陰陽の流れが見えない。恐らくはわざと自分の気を消しているのだろう。
「つまり、十年前も含め伏見山の狐騒動は俺のしたこと以外は全て納得済みということか」
扇の肩が僅かに動いた。
「あらあら。少し喋り過ぎたかしら」
今度は目に見えて肩を竦める。そして懐から扇子を出し口元を隠しながら顔だけをこちらに向けた。
「誰かの思惑は必ずあるわ。じゃないとこんな結末有り得ないもの。でも、それに私は関わっていない」
「隅田を退かせたのはお前だろうが」
「まさか!私は鈴音の言う通りにしてあげただけ。でも、それは大した選択ではないわ。全てを初めから最後まで見通した時にはね、たぶん」
「煮え切らない言い方だな」
「生憎、私はその力を持っていないから。でも、全てを見ている者はいるって話」
全てを見通す力。
星読みができる者の存在を示唆しているのだろう。
俺以外、の。
いや、扇が言っているものを自分と同列で語っていいものなのだろうか。悔しいが、今の自分が全てを見通しているとは言えない。能力が劣ったと言えばそれまでだが、言い訳をするならこの時代の星は見えにくい。そもそも初めから最後までとは、どこからどこまでのことだ。
無名は舌打ちしたい衝動を抑え、期待はせずにその者の正体を問う。
「それは、一体誰だ?」
扇子で隠れているとはいえ、扇の口角が僅かに上がった気がした。
「貴方ほどの力を持った陰陽師なら、会えばすぐに分かるわ。会う未来があれば、だけど」
扇はそれだけ言うと、扇子を開いて姿を消した。
隠形したまま術で飛んで行くのだから、大したものだ。次期当主には絶対にできない芸当だろう。玉無の行く末を心配してやる義理はないが、不憫には思う。
強大な力を持つ者は、得てして孤独だ。
雨は未だ降り続けている。
濡れた衣服の重みを嫌でも感じながら、京都の街を見下ろし続ける。
「この世に再び俺が有る意味はあるのだろうか」
このまま雨水に溶けて消えてしまいたい衝動を抑え、無名は呟いた。
傘を差し出す相手も差し出してくれる相手もいない。
それは、何と哀れで、悲しいことか。
帰る場所がないというのは、何と惨めで、悲しいことか。
だが、俺は、この世に還ってきた。
成し遂げられなかった後悔を無に帰すため――――。
* * *
朝日が眩しい。
気怠い身体を無理に動かしながら、大阪行きの始発を一人待つ。
「ありがとう」
胸ポケットから煙草を取り出そうとした時、背後から声がした。
「お前も物好きだなー。俺に礼を言ってどうすんだよ」
「それでも言いたかった。私を利用して貴方が何をしたかったのかは分からず仕舞いやけど、私はそれでも・・・十年前のことも含めて貴方には感謝している」
振り向けば、潤ませた目を伏せて俯く弟子の姿があった。
「はっ。利用したのはお互い様だろうが。そんな殊勝な態度取られちゃあ、俺が悪者みたいじゃねえか」
否。
完全に俺が悪者だ。
まだ中学生だった鈴音に狂い狐を倒す間違った方法を教え、実行するよう唆したのは、俺だ。
嵌められたと、気づいただろう。
なのに数年後に再会した彼女は、俺についてきた。
強くなりたいと。
友を助けるために。
弟を守るために。
そのために、今度は、欺く側に回りたい。
そんな歪んだ心根を真っ直ぐに俺に向ける様は、まるで――――
「まさか、貴方だけを悪者にする気はないわ。本当は解ってた。だって、見るからに怪しかったもん。でも、あの時の私は何が何でも可憐を解放してあげたかったんや。嘘やろうと偽りやろうと、仮初めやろうとな」
その想いは哀れなほど、本物なんだと思う。昔も今も鈴音は変わらない。変わらず、伏見山可憐のことを心底想っている。
本人はそのことに気づいているのだろうか。
自分も母親と同じ道を辿っているということに。
いや、気づいてはいないのだろう。
そして、
「そういうところも含めて、俺は・・・お前が好きだよ」
これからも気づかせはしない。
「な、なんや。いきなりっ」
不意打ちに弱いところも、
「まさか胸キュンでも狙ったん?おじさんはやめとき、寒い、死ぬ」
すぐに冷静になるところも、
「あのさーほんっとーに、セクハラで捕まるとかしょーもないことしゃんといてや」
そのくせ、本気で心配してくれるところも。
全部、俺は知っている。
知っているからどうなんだ、というその先の思考に歯止めをかけ、賢吾は握りしめていた煙草の箱を傾けた。
「ちっ、空か」
「はい、どうぞ」
直後、横から差し出された真新しい箱から、煙草が一本顔を覗かせている。
キャスター。
賢吾が今、自分の手の中で押しつぶしているものと同じ銘柄だ。
「お前も吸い始めたのか?」
「まさか」
茶化さずにはいられないほど、心臓に悪い出来事だった。
『三番線に電車が到着します―――』
駅内アナウンスとともに灰色の車体が見えてきた。
差し出された煙草に唇を寄せてそのまま受け取る。
瞬間、鈴音の身体が固まったのが気配で分かり、賢吾は思わず苦笑した。
「なんでっ」
「だってよ、この通りどっちも塞がってるし」
両手をわざとらしく上げ、ひしゃげた煙草の箱と八つ橋の紙袋が両方の手を塞いでいる様を見せつける。
「てか、八つ橋って何なん。観光にでも来てた言うんか?」
「俺にとっちゃ、観光だったよ」
途端にむすーっとなった鈴音の頭にそっと触れ、発車の合図が鳴る電車に乗り込む。
「またしばらく会えねぇけど、寂しがるなよ」
「貴方の方こそ」
鈴音は頭に触れる手を払いのけ、持っていた煙草を箱ごと賢吾の胸に押しつけた。
そんな風に強がる様は、なおのこと愛おしい・・・なんて。
「俺は、お前に触れてないと寂しいよ」
扉が閉まる寸前の鈴音の顔は見ものだった。
扉の向こう側で声にならない声を出している。
でもやっと、『私も寂しい』と唇が動くのを見届けて、賢吾は京都を後にした。
始発ともあって、車両は空虚だった。自分の他は男性客が一人いるだけだ。
新聞紙を広げているので顔は見えないが、いけ好かなそうな雰囲気に心底気持ちが萎える。だらりと垂れた長い髪は女なら美しいと思うだろうが、男のそれは異様でしかない。
「それで、手に入れたんですかい?」
真向かいに座る男をじっと観察していると、唐突に話しかけられた。
唐突に・・・というよりも、やっとと言った方が表現は合っているかもしれないが。
賢吾は咥えたままの火のついていない煙草を指に挟み、「ああ、もちろんだ」と答える。
「そちらに出張中のうちのもんに渡しといてくれ」
足の間に置いていた紙袋を男の足下目掛けてスライドさせた。
中身は、小汚い木箱だ。
だが、ただの箱ではない。
次の段階に進めるために必要なもの。流れの舵取りを決める重要な手がかり。言い方は様々だろうが、思うにこれは――――パンドラの箱だ。
「確かに、受け取りましたぜい」
徐に立ち上がった男の髪がばさりと揺れる。一つに束ねているというのもあって、何かの生き物のような奇妙な動きだった。男はそのまま真横のドアの前に立ち、外を見つめる。
乗車中の電車は新快速なので、次の停留所までまだ時間はあるだろうに・・・
嫌な予感に思わず声が漏れた。
「おいおい、まさか今そっから降りるつもりじゃねぇだろうな?」
「そのつもりですが、何か不都合でもありますかい?」
「いや・・・さすがに非常識だろ」
上手い言葉が出ずそう言うと、男は高らかに笑ってこめかみに手を当てた。
「お前さんに非常識と言われるたぁ!人の器で過ごしてぇると、考え方も人に似てくるんかねぇ。まあ、安心しろ。俺の姿は常の人には見えねぇよ」
喉の奥で笑い続ける男に呆れる。
「おい、俺を化け物扱いすんじゃねぇよ。化け物が入れない結界内にわざわざ入ってやって、お望みのブツを手に入れてやったってのに、あんまりな言いようじゃねぇか?何、途中からタメになってんだよ。目上の人間は敬え」
正確には入れない結界ではなく、入ると出られなくなる結界だが。そこらへんの言葉の綾は重要ではない。
玉無の屋敷に出入りできるのは、人間しかいないってことが味噌なのだ。
――――そう考えること自体が言い訳めいているようで、気分が滅入る。
苛立ちを抑えるために、賢吾は手にしていた煙草を口に咥え直す。だが、ライターを取り出したところで男に止められた。
「それこそ非常識ってもんでしょう。『目上』と自覚しておきながら、『人間』と称するお前さんのことだ。あの女のこと、手に余ってるんじゃねぇのかい?どうするつもりか知らねぇが、どっちみちその感情は決断を鈍らせる。そうなったらお前さんらの計画はご破綻になっちまうぜ?それとも、計画が潰れてもいいぐらい―――」
これ以上喋らすなと脳が指令を出し、言葉を発す。
「何にも代えられねぇんだよ、俺達の悲願は。自分達でも怖いくらいに、止められねぇ。長年望み過ぎて、気が遠くなるほど求め過ぎて・・・それこそ人の心なぞ失くすくらいの時間をかけて。そうだよ、お前が言うように俺達は化け物さ。女一人を壊すまで利用したって、それで願いが叶うなら・・・そんなの天秤にかけるまでもねぇよ。・・・お前も、分かるだろ?」
ただ淡々と冷静に、賢吾は事実を述べる。
そこに嘘はないと言い切れることを心のどこかでは悲しいと感じているだろうか。
「分かりますよ」
男は真顔で返答した。
「そういう思想も生き方も嫌ってほど知ってやすからね。別にそれを否定はしやせん。俺はただお前さんらの計画が上手くいくようにするだけだ。せいぜい九条を怒らせないで下せぇよ。俺は動けと言われたらやりますぜ?」
ドアに触れた男の指先から、黒い靄が現れる。それは次第に男の体を包み、黒く染まっていった。
「接近―回避型の葛藤ってのは、どうにもならねぇ。犠牲なしに願いを叶えようなんざ、思わねぇで下せぇよ」
闇がせせら笑いながら、忠告する。
千歳―――といったか。あの男も必死なのだろう。
結局、口に咥えた煙草は火をつけることなく箱に仕舞った。
「おかえりなさいませ」
深々と頭を下げる部下に「おう」と答えて事務所に入る。
大阪の中心に聳え立つビルの中程にオフィスを構える株式会社ムトウコーポレーション。
表向きは警備・警護派遣の会社と銘打ってはいるが、その実は―――
「組長、上手いこと京山会の奴らの仕業ってことにできましたぜ」
「馬鹿野郎。社長だろうが」
「いやぁ、すんません。呼び慣れんくて・・・」
賢吾が見せかけの会社を起こしたのはつい先日のことだ。
今の世の中、堂々と極道を名乗るのは難しい。
「まあ、どうせ捕まるのは京山会の下っ端の下っ端だろうが、今回のことで警察のマークも厳しくなるだろうし、連中も動きづらくなるだろうよ」
大阪の武藤組と京都の京山会。
先々代からの因縁か何か知らないが、代替わりした今も両組織は反目し合っている。
京山会のお膝下で起こった連続通り魔事件と放火事件は、京山会に繋がる証拠を山ほど置いて武藤組が実行した。
その真の目的は部下の知るところではないが。
「社長、イタリアからお電話です」
見た目だけで採用した女性秘書が駆け寄ってくる。
普通の会社を装っているのだから、もう少しスカート丈を長くしてほしいものだが、この方が部下の士気も上がるので何も言わない。
「イタリアって言うと、バレンティノの旦那ですかね?」
「だろうな」
イタリアのとあるマフィア幹部の名前を口に出すと身震いして、俺の部下は下がって行った。
一人きりの社長室で電話に出る。
携帯ではなく、わざわざ固定電話に掛けてきたのだから、バレンティノの可能性が高いと踏んでいたが・・・
「上手くやってくれたようだな、鷹司」
その呼び名に賢吾は深く息を吐き出した。
「九条か」
現在、妖連合「百鬼」にその身を置いている仲間はケラケラと笑って労をねぎらう。
「あの屋敷に忍び込むのは俺にしかできねぇことだったからな」
「しかし、一歩間違えれば、我らの都は火の海になっていたかもしれんな。あわや、鷹司はここで退場かと思うたぞ?」
受話器越しに聞こえる九条の掠れた声に被せるようにして「まさか」と笑う。
「他の奴らがくたばっても、俺は意地でも悲願の達成を見届けてやる」
「そうか」と、九条の声音が硬くなる。
「その心意気はあっぱれじゃが、よもや死ぬことが怖いなどと申すわけではあるまいな?あの男の使い道は他にもあったはずじゃ。十年前に其方が拾ってきた時も、一条が言っていたではないか」
「拾ってきたんじゃねぇよ。あれは託されたんだ」
「そんなものどちらも同じじゃ。隅田の先々代の想いを汲んだなどとほざくなよ。慈善事業ではないのだ。この機を逃せば其方・・・」
「九条」
そのように牽制されなくとも、仲間を裏切るつもりは毛頭ない。
「まだ、俺の力が必要になるだろうと思ってのことだ。全ては悲願のため。この先、必ずイレギュラーは発生する。その時、手数は多い方がいいだろ。五百年前の失敗を忘れたか?」
九条はしばらく押し黙っていた。
そして、ようやく口を開け、
「鷹司、あの男を消せとは言わん。されどいざという時、足止めぐらいはしてみせよ」
指令を下した。
「仰せのままに」
久しぶりの仲間との会話は慇懃な返事で終了した。
賢吾は受話器を置き、即座に引き出しの中から鎮痛剤を取り出して水も飲まずに飲み込む。
これまでのこと。
これからのこと。
考えなければならないことは山積みで、頭痛のもととなる。
恐らくは、この時代が最後の機会になるだろう。
この世に生を受けた彼らは、運命の濁流へと放り投げられた。
流れを読まなければ流される。
そして、大いに流されてくれ。
我々が作った流れのままに。
パンドラの箱は既に開かれた。
鈴音と賢吾の関係は・・・好きです(笑)




