7/7
おとぎ話の終わり方
時多 秋矢は赤い風船のような夕日が街へ沈んでいくのをずっと見守り、それから手すりを離れて自転車へと戻った。
昨日の晩から今日の黄昏までの短い時間だった。幻のように消えていった少女と過ごした短すぎる時間は終わった。
彼女は帰れただろう。そして彼女の世界の海は満潮だろうと思いを巡らせる。もしこれが物語ならばハッピーエンドな終わり方だ。ただ、もう二度と彼女とは会えないそれだけで。
サドルにまたがり、近いうちに海へ行こうと考えた。山のかなた遠くに幸せがあると唄う詩がある。なら僕の幸せは海のはるか向こうに。
自転車を漕ぎだす前にもう一度空を仰ぐ。幼い頃に空へと飛ばした風船の行き先に、僕は初恋のように思いを馳せた。
7話構成で完結です。
お付き合いいただきありがとうございました。
評価や感想など、お時間ありましたら、お待ちしております。