3話 小学3,4年生(仮)
僕は小学3年生になった。
この頃から僕は勉強についていけなくなっていた。
宿題もやらなくなっていた。
残暑の残る9月頃
ある日、先生に
「宿題忘れた人?」
と言われ
僕は
「はい」
と手をあげた。
先生に
「どうして忘れたん?」
と聞かれ
僕は
「宿題やったけど学校に持ってくるん忘れてん」
と言い
先生は
「じゃー明日持ってきてね」
と言いました。
もちろん宿題なんてやっていなかった。
始めはやっていない宿題をやろうとしたが、結局えんぴつを持つことはなかった。
次の日も、その次の日も…
僕は
「やったけど学校持ってくるん忘れた」
と嘘を言い続けた。
そんな嘘は1週間ほどでバレた。
先生は取り調べのように
「宿題いつ持ってくるんですか?」
「ホンマはやっていないんじゃないですか?」
と僕に言いました。
僕は
「はい。やってません」
と答えた。
1時間ほど説教が始まった。
僕はほとんどその説教を聞いていなかった。
むしろ聞く気もなかった。
早く帰りたかった。
1つだけ説教で言われたことを覚えていた。
先生が
「やらなかったことはダメなことですが、嘘をついたのが一番ダメなんです」
「宿題忘れたなら忘れたと正直にいいなさい」
と
僕は自分にとって都合のいい部分しか聞こえていなかった。
僕は次の日もその次の日も宿題をやることはなかった。
先生には正直に
「やってません」
と言い続けた。
ある日、先生は家に来た。
母に連絡を取っていたみたいで。
もちろん僕の宿題、成績のことだった。
母は先生に何度も頭を下げていた。
先生が帰った後、母は僕になにも言わなかった。
怒られると思った。
一言だけ母は僕に
「宿題、勉強やれって言ってもやらんやろ?」
と言い
僕は
「…」
なにも言えなかった。
母は僕の事をわかっていた。
さすがに母親なんだなっと思った。
一度は宿題をやろうとした。
でも僕は卒業するまで一度もすることはなかった。
先生もあまり僕を相手することはなかった。
秋が終わり冬になろうとする頃
僕は好きな子ができた。
少しマセてきたのだろう。
その子の名前は美香
〈漢字が違うかもしれません〉
この子とは幼稚園から同じだったが話したことはなかった。
クラスで席替えした時僕の横だったのがこの子だった。
授業中、僕は教科書を忘れ授業も聞く気もなかったとき美香ちゃんが
「教科書みせたるわ」
「持ってないんやろ?」
と言われ
「えっ!?うん」
と答えた。
今までだったら先生が
「みせてあげてください。」
と僕の隣の子にお願いするまで向こうから僕に言ってくることはなかったのだ。
僕はその時から美香ちゃんの事が気になり初めていた。
授業中も少し美香ちゃんに話かけるようになっていた。
今までなら話もしなくボケーっと僕はしていた。
僕は学校に行くのが楽しくなっていた。
もちろん授業はつまらなかった。
でも美香ちゃんと話するのが楽しかった。
ある日、美香ちゃんに
「家に遊びにおいで」
と言われた。
僕は
「…うん」
と答えたが少し動揺していた。
女の子の家に行った行ったこともなければ、遊んだこともないのだ。
でも動揺した反面すごく嬉しかった。
僕は学校が終わると一度家に帰り自転車で美香ちゃんの家に遊びに行った。
場所はだいたい聞いていたのですぐに着いた。
美香ちゃんの家に行くと美香ちゃんの母親がいてた。
「こんにちは」
と言われ
「こんにちわ…」
と少し緊張しながら挨拶をした。
家は2階建ての少し古びた感じの家だった。
でも僕の家より全然リッパな家だった。
美香ちゃんの部屋は2階で姉と2人部屋だ
僕は2階に上がり美香ちゃんと色々話をした。
美香ちゃんも父親がいてなくて母と姉と3人で暮らしていると言っていた。
僕と同じで母子家庭だった。
その日から美香ちゃんの家に週に1、2回遊びに行くようになった。
すごく楽しい日々だった。
いつの間にか僕以外の男の子も美香ちゃんと遊びはじめるようになり美香ちゃんはすごく人気者になっていた。
ある日、僕は美香ちゃんに
「好きやで」
と一言だけ伝えた。
美香ちゃんは少し顔を赤らめていた。
美香ちゃんは僕に
「…」
なにも言わなかった。
その後、少し気まずくなり遊ばなくなった。
そして美香ちゃんは男の子と遊ばなくなり美香ちゃん人気はなくなった。
これが僕の初恋だった。
僕は小学4年生になった。
まだ桜が残る4月の始め
春休みも終わり学校に登校すると、隣のクラスに台湾人の男の子が転向してきた。
その子の名前は コウ・ウイノー
台湾人の子はすごく背が高くて年上な感じの男前だった。
みんな興味津々だった。
あまりなれていない日本語でその台湾人の子はみんなと楽しく話していた。
台湾人の子はすぐに人気者になった。
僕はクラスが違っていたので台湾人の子と話す機会があまりなかった。
ある日、僕は台湾人の子と話していたら、隣のクラスの男の子がきた。
その子の名前は 岡
どうやら台湾人のコウと岡は仲良くなっていた。
岡とは僕はあまり話したことがない。
岡は少し暴れん坊だったのは知っていた。
僕はその日から岡とコウと遊ぶようになった。
コウはスポーツがなんでもできると言っていた。
岡はコウに
「お前すごいなー」
「なんでもできるんやなー」
とすごく興味をもっていた。
僕は岡と家が近かった。
今まで全然知らなかった。
岡の家も母子家庭だった。
岡の家はマンションで僕の家よりは広く綺麗なマンションだった。
「案外母子家庭の子がいてるもんだと」
僕は、なぜだか安心してしまった。
このころ隣のクラスではドッチボールが流行っていた。
昼休憩はドッチボールをするのがあたりまえだった。
岡はコウと僕達のクラスに
「ドッチボール一緒にしよ」
と言ってきた。
僕達のクラスの何名かとコウはドッチボールに参加した。
以外におもしろいスポーツだった。
僕はドッチボールが好きになってしまった。
岡はドッチボールがうまかった。
僕も負けずにボールを投げていた。
その時だった。
コウがボールを投げた瞬間みんなが一瞬止まった。
コウの投げたボールは相手の陣地の上空を通り越ボールはどっかにいってしまった。
コウはみんなに
「スポーツは得意だ」
と言っていたが本当はスポーツができなかった。
このドッチボールで投げた1球でコウの人気はなくなった。
その日の内にコウは嘘つきだと噂になってしまった。
その日コウは誰からも相手されなかった。
次の日コウが学校に登校してきた朝、岡がいきなり
「おい!うそつき!」
と言い
コウにいきなり飛び蹴りをかました。
僕はビックリした。
もちろん周りもびっくりしただろう。
岡はコウの事を一番信頼して遊んでいたのだから裏切られたときのイライラもすごかったのだろう。
それに岡はやんちゃだったから怒らせると止めれないタイプだった。
その日からコウは岡にいじめるられるようになった。
休憩時間になるとコウは岡に呼び出されていた。
コウは廊下に正座させられ、岡に蹴られている。
僕は少し離れたとこから見ているだけだった。
少しかわいそうな気がした。
でも岡は学年1の暴れん坊。僕にはその時は止める勇気がなかった。
コウは岡に
「ヤメテ」
「ゴメン」
と、なれない日本語で岡に言っていた。
岡は
「だまれ!うそつき!」
と言い暴れていた。
次の日僕が学校に行くと朝からコウは正座させられていた。
「またか」
「かわいそうに」
と僕は思った。
よく見ると岡だけではなく他にも5,6人ほど一緒に岡とコウをいじめていた。
蹴られ頭からバケツいっぱいの水をかけられていた。
さすがに
「やばい」
と思った。
でも岡には誰もなにも言わなかった。
言わなかったじゃなく言えなかった。
僕も岡に呼ばれた。
「めんどくさっ」
て思いながらも岡の前に行くと岡に
「お前も嘘つかれたんやからやり返してまえ」
って言われた。
「えーー」
って心の中では思いながらもコウの背中を蹴ってしまった。
「やってしまった」
と思いながらも蹴り続けていた。
蹴り続けていると
「やりたくない」
と思っていたことが、なにも思わなくなってしまっていた。
次の日の朝学校に行くと先生に呼び出された。
「もしかして」
と思った。
予想は的中だった。
コウをいじめていたのがバレたのだ。
僕と岡、合わせて7人ほどが廊下で正座させられ、ビンタをくらった。
「やらんかったらよかった」
と思った。
逆にも考えた。
「コウは僕達の何十倍もこんなんを味わったんだろうな」
と
僕たちはコウをいじめるのをやめた。
でも岡だけはやめなかった。
学校にいてるときは岡は普通に僕達と遊んだりしていたが学校からの帰りにコウをいじめていた。
僕は岡と帰る方向が同じだったので一緒にいた。
でも僕は岡に
「そろそろやばくない?」
と岡に言った。
岡は
「大丈夫、大丈夫」
と言った。
僕は
「なにが大丈夫やねん。」
と思ったが岡を止める事が出来なかった。
こんな日が少し続いた。
岡は裏切られたことよりいじめるのが楽しくなっていたのだろう。
コウが転向してきて1ヵ月ほどが経った頃コウは転向していった。
多分いじめが原因だったのだろう。
少しかわいそうな気がしたが僕には何もできなかった。
する勇気がなかったのだろう。
その後、岡は少し落ち着いた。とりあえずは…
夏休みも終わり肌寒くなった11月頃
何事もなく学校に登校していた。
ある日クラスの3人ほどが廊下でいきなり僕を囲んできた。
「なに?」
と思った。
「お前お風呂入ってないやろ?」
といきなり言い出した。
「はァ?」
と僕は思った。
確かに僕の家には風呂がなくお金がなくお風呂屋へは2日か3日に一度しか行けずお風呂に入れなかった。
僕は普通だったが周りからしたら、汚い、くさい等の偏見がありいじめの対象に僕はなった。
僕はコウの時とは違い手を出されることはなかった。
始めは無視していた。
何日か経った頃少し学校に行くのが嫌になっていた。
でも母に迷惑はかけたくない。だから僕は学校に行き我慢していた。
もちろんコウの時と同じで誰も助けてはくれない。周りは見て見ぬふりだ。
僕もそうだったように。
ある日学校で縦笛の授業があった。
吹けなかった子は放課後残り吹けるようになるまで笛の練習をさせられた。
笛の吹ける子は帰ってもよし、吹けない子に教えてあげてもよし、なルールだった。
僕はもちろん居残り組だった。
僕をいじめてきた子達は笛の吹ける組だった。
もちろんその時も僕を囲み僕の事をいじめていた。
僕もイライラしていた。
「帰りたい」
と思いながら我慢していた。
僕はコウの気持ちがすごくわかった。
その時だった。
一人の女の子が僕のとこにきて
「縦笛おしえたるわ」
と言ってきた。
僕は
「えっ!?」
と思い振り返ると美香ちゃんだった。
僕は
「大丈夫やで」
って言いました。
「美香ちゃんもいじめられたらあかん」
と思ったからだ。
でも美香ちゃんは僕の横に座り縦笛を教えてくれた。
囲んできた3人はその場からサッと立ち去った。
美香ちゃんは僕に
「がんばろな」
って言いました。
すごく嬉しかった。
なんとか吹けるようになり帰れるようになった。
「美香ちゃんありがとう」
僕は笛の事だけじゃなく
「ありがとう」
と思った。
美香ちゃんは何も言わなかったが多分助けてくれたのだろう。
次の日登校したらまた朝から囲まれた。
イライラがマックスにきていた。
3人の内1人が僕を後ろから蹴ってきた。
我慢の限界がきた。
蹴ってきた一人を殴り、蹴りボコボコにしてしまった。
殴った相手は鼻血をだしながら泣いていた。
後の2人は止めに入ることもしてこなかった。
僕は後の2人に
「やんのか?」
と言った。
2人は何も言わずに立ち去った。
もう1人を残して…
「次来たら殴ったんねん」
と思っていたら
先生に呼び出された。
事情を説明
僕は
「蹴られたからやり返した」
と言ったら
「蹴られただけでここまでしたらあかん」
と先生に言われた。
意味がわからなかった。
次の日僕と相手3人の親が呼び出された。僕と相手3人も同伴で。
また同じことを説明した。
手を出してこなかった親は何も言ってこなかった。
殴った相手の親が
「ここまでしなくてもいいでしょ?」
「顔に傷残ったらどうしてくれるんですか?」
僕の母はすぐに
「はァ?」
「蹴ったのはそちらの子やろ?」
「やり返してなにが悪いねん?」
「やられたくないねんやったら初めからやるな」
と言い
相手の親は黙りこんでしまった。
僕はスッとした。
先生が
「喧嘩はよくないです」
「今後はこのようなことのないようにこちらも目を配らせます」
と言い終わらそうとした。
母が
「喧嘩じゃなくいじめでしょ?」
「3対1ですよ?」
先生は
「はい。すいません。」
母が
「別に先生に怒ってるわけではないです。」
「この子は私が仕事で忙しいの知ってるから迷惑かけたくないと思って家では何も言ってこなかったんですよ」
何もしてこなかった2人の母親は
「すいませんでした」
その子供も
「ごめんなさい」
と言ってきた。
殴られた子も
「ごめんなさい」
と
その母は
「…」
何も言ってこなかった。
母は僕に帰る途中
「ごめんな」
「つらかったやろ?」
「いじめなんかに負けたらあかんで」
「我慢せんとやりかえしたらいいからな」
僕は
「母が自分のことちゃんと考えてくれてるんだな」
って思った。
次の日からいじめはなくなった。
僕はまた普通に学校に通う日々だった。