【7話】三人でファミレスへ
ノワールの営業時間終了後。
武、麗華、香奈は、ファミレスへやってきた。
三人は、テーブル席に座っている。
(これは二人にとって、いい機会かもしれないな)
対面に並んで座っている女の子二人を見て、武はそんなことを思う。
彼女いない歴=年齢の武では、香奈の恋愛相談に乗るのにどうしても限界があった。
その点、麗華は恋愛経験豊富そうだ。
武よりも優れたアドバイスをすることができるだろう。
それに、女の子同士だから話せるようなことだってきっとあるはず。
香奈にとって、頼もしい味方になってくれるに違いない。
そして、麗華にとってもこれはプラスだ。
人付き合いが苦手で友達がいない――彼女は以前、そんなことを言っていた。
恋愛相談に乗れば、香奈とも友達になれるはず。
新たな友達を増やすチャンスだ。
(……それにしても、二人ともなにしてるんだ?)
武の対面では、麗華と香奈が笑顔で顔を見合わせている。
しかし、それは口元だけ。目は笑っていない。
この席に座ってからというもの、二人はずっとそうしていた。
(緊張してるのかな? ……よし。ここは俺が話題を振らないとな!)
二人は初対面。
緊張するのも仕方ない。
だったらここは、二人の共通の知り合いである武が頑張るしかないだろう。
「香奈ちゃん。先輩とは進展あった?」
「……あ、はい。そうですね……一応は。昨日、ご飯に誘われました」
なんだか歯切れが悪い。
好きな人から食事に誘われたら、普通はもっと喜ぶものではないだろうか。
それなのに香奈は、あんまり嬉しくなさそうに見える。
(緊張しているんだな)
本当は嬉しいはずなのに素直な反応ができないのは、そのせいだろう。
「なんの話ですか?」
「香奈ちゃんは高校の先輩に恋をしていて、俺はそれを応援しているんです。水島さんもぜひ、相談に乗ってあげてください」
訝し気な声を上げた麗華に、武は状況説明をする。
ついでに、二人にとってプラスになるような言動を加えておいた。
「……へぇ」
麗華の口角が、わずかに上がる。
少し意地の悪いようなその顔は、武が今までに見たことのないものだった。
「私はてっきり、黒崎さんのことが好きなのかと思ってましたよ」
「――!?」
「なに言ってるんですか水島さん。香奈ちゃんみたいなかわいい女子高生が、俺みたいな冴えないおじさんを好きになるはずありませんって」
(水島さんも冗談言うんだなぁ)
笑っていると、武のスマホが震えた。
家族から電話がかかってきた。
「ごめんなさい、家族から電話がかかってきちゃいました。少し席を外します」
スマホを持った武は、二人を残して店の外へ出た。