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【6話】四日前の答え合わせ


 勤務先であるノワールのキッチンで、武は洗い物をしていた。

 

「ちょっと武さん!」

 

 ホールに出ていた香奈が、慌てた様子でキッチンへ入ってきた。

 武の背中を、両手でビシビシ叩く。

 

「どうしたの?」

 

 水を止めた武は、作業を一時中断。

 後ろへ振り向く。


「ものすごい美人がお店に来たんですよ! きっとモデルか芸能人に違いないです!」


 握った両手を胸の前に持ってきた香奈は、ずいっと身を乗り出した。

 大興奮している。

 

「俺も見てみようかな」

 

 そこまで言われると、どうにも気になってしまう。

 

 現時刻は午後六時三十分。

 閉店間際ということもあり、店内に客はほとんどいない。

 少し手を止めるくらいは、問題なかった。

 

 香奈と一緒になって、武はホールへ出る。

 

「一番奥のカウンター席にいる人ですよ」

 

 こそっと耳打ちしてきた香奈に頷いた武は、そこへ目を向けてみる。

 

「……おぉ!」

 

 座っているのは、長い黒髪の女性。

 スタイル抜群な、超絶美人だ。眩しいオーラを放っている。

 

 香奈があんなに興奮するのも、これなら納得できる。

 

「って、あれ?」


 その超絶美人に、武は見覚えがあった。

 というより、おもいっきり知り合い。

 

 四日前に個室居酒屋でビールをガバガバ飲んでいた武の友達――水島麗華だった。


「おーい! 黒崎さーん!」


 武に気付いた麗華が、こちらへ笑顔で手を振ってきた。

 

「……武さんのお知り合いですか?」

「うん。そんなところだね」


 なぜか鋭い目線を向けてくる香奈にそう言ってから、武は麗華の元へ歩いていく。

 

「こんばんは。今日は仕事が早く終わったので、つい来ちゃいました」

「びっくりしましたよ。でも、来るなら連絡してくれればよかったのに」

「それじゃつまんないじゃないですか。驚かせたかったんです」


 えへへ、と笑った麗華がいたずらな視線を向けた。

 

 武は四日前に、個室居酒屋で同じものを見ている。

 もしかしたらあの時から、ここへ来ようと考えていたのかもしれない。


「黒崎さん、もうすぐお仕事終わりますよね? もしよろしければ、これから飲みに行きませんか?」

「……すみません。誘ってくれるのは嬉しいんですけど、この後はもう予定があるんです」


 仕事が終わった後は、香奈とファミレスに行くことになっている。

 麗華には申し訳ないが、先に交わしていた約束を破る訳にはいかない。

 

「そう……ですか」


 麗華の声のトーンが、ガクッと落ちた。

 肩を落とし、目に見えてしょんぼりしている。

 

「構いませんよ、武さん」


 その声は、武のすぐ隣から聞こえてきた。

 

 そこにはいつの間にか、香奈が立っていた。

 とげとげしい雰囲気を放っている。

 

「その代わり、私もご一緒させていただきます」


 香奈が麗華を見やる。

 その瞳は鋭く尖っていて、敵意のようなものが宿っていた。

 

「私、赤上香奈です」

「水島麗華よ」


 麗華も負けじと睨み合う。

 二人の間には、バチバチと激しい火花が散っていた。

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