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【4話】麗華との再会


『もう一度会ってくれませんか?』


 麗華から届いたそのメッセージに、武は困惑していた。

 いったいなんの目的で送ってきたのか、さっぱりだった。

 

(断るべきか?)


 麗華は武をずっと騙していた。

 今度もまた、良からぬことを考えているのかもしれない。

 

(でも……それは違う気がするんだよな)


 あのときの麗華の謝罪は、誠心誠意。

 ちゃんと心がこもっていた。

 

 そんな彼女が悪だくみをしているとは、どうにも思えなかった。


「もう一度会ってみるか」


『いいですよ』、というメッセージを返す。

 真意を確かめるためにも、とりあえず会ってみることにした。

 

******


 三日後の夜。

 

 武と麗華は、街中の個室居酒屋に来ていた。

 テーブル席に、二人は向かい合って座る。

 

「とりあえず、飲み物を頼みましょうか。水島さんは何にします?」

「ありがとうございます。それでは、ビールを三つお願いします」

「三つ……ですか? 一つじゃなくて?」

「はい」


(……とりあえずでビールを三つ頼む人には、初めて会ったな)

 

 少し驚きながらも、武は店員を呼んだ。

 ビール三つと、ウーロン茶を注文する。



「お待たせいたしました」


 店員が飲み物を運んできてくれた。

 

 武と麗華は、小さな声で乾杯。

 それぞれ飲み物に口をつける。

 

 武はウーロン茶をちょびっと、麗華はビールを一気飲みした。

 

「会ってくれてありがとうございます」


 空になったジョッキを置いた麗華は、ペコリと頭を下げた。


「それは構いませんけど……あの、どうして俺にもう一度会おうと思ったんですか?」

「私とあなたの違い……それを知りたかったんです」


 麗華は、武を騙していた理由のさらに詳細を語り始めた。


 一年付き合っていた元カレに浮気されていたこと。

 しかも浮気相手が、高校時代からの親友だったこと。

 自暴自棄になってマッチングアプリを使って武を騙そうとしたが、罪悪感に耐え切れず直接会って謝罪をしようと思ったこと。

 

 それらを、申し訳なさそうに口にした。

 

「自分勝手すぎる理由ですよね。やっぱり私のこと、許せなくなりましたか?」

「いいえ。俺の答えは変わりません。それにそんな辛い事情を知ったら、もっと怒る理由はなくなりましたよ」


 彼氏と親友に同時に裏切られてしまったショックは、相当なものだったろう。

 だからといって関係ない人間を騙していいということにはならないが、こうして面と向かって詳しい事情を聞いたら同情の一つだってしてしまう。


「なんて器の大きい人なの……! それに比べて私は!」


 瞳をカッと見開いた麗華が、二つ目のビールを一気飲みする。

 豪快な飲みっぷりだ。見ていて気持ちいい。

 

「私も黒崎さんみたいになりたいです! でもそれにはまず、この黒い気持ちを全部吐き出さないと……! 黒崎さん!」


 空になったジョッキをドン! と机に置いた麗華が、グイっと顔を近づけてきた。


「私の話聞いてくれますか!!」


 武はぶんぶんと頷く。

 そんな勢いで迫られたら、従う以外の選択肢はなかった。


 そこからの麗華はすごかった。

 

 元カレへの恨みつらみを吐き散らしながら、ビールをガバガバ飲んでいく。

 愚痴を吐き出す口もビールを飲む手も、どっちも止まらない。ノンストップ。

 

 それは終電の時間になるまで、ずっと続いた。

 

 

 店を出た二人。

 電車で帰る麗華を、武は駅まで送っていく。


 麗華の足取りはしっかりしている。

 あれだけ大量のビールを飲んだというのに、まったく酔っぱらっていなかった。とんでもない酒豪のようだ。


「すみません。黒崎さんとっても聞き上手だったから、話が止まらなくて……ご迷惑でしたよね?」

「そんなことはないですよ。迷惑どころか、とっても楽しかったです」


 それは決して、お世辞ではない。

 

 元カレへの恨み言をぶちまける麗華は、それはもうすさまじかった。

 清楚系の見た目からは想像できないほど、汚い悪口をバンバン連呼していた。

 

 そのギャップが、武のツボに入った。

 聞いていてものすごく面白かった。

 

「ほんとですか? でしたらまた、私とお話してくださいます?」

「もちろんですよ!」

「嬉しいです! ……それと、もう一つお願いをしてもいいでしょうか?」

 

 麗華が足を止めた。

 もじもじしながら、上目遣いで武を見つめる。

 

「私とお友達になってくれないでしょうか? 私、人付き合いがあんまり得意ではなくて……。こういことを話せる友達が誰もいないんです」

「いいですよ。こんなおじさんでよければですけどね」

「ありがとうございます!」


 苦笑いする武に、麗華は弾んだ声でお礼を言った。

 その表情は、溢れんばかりの笑顔だ。

 

 光り輝いている麗華の笑顔は、この世のものとは思えないほど完璧で美しい。

 

 そんなものを真正面から向けられた武は、彼女から目が離せなくなる。

 釘付けになっていた。

読んでいただきありがとうございます!


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