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【26話】あげたくない二人


「……いきなりなんですか? 喧嘩売ってるの?」


 実来の雰囲気が鋭くなるが、麗華は怯まない。


「武さんを傷つけないで」

「はい?」

「遊び好きなあなたのことよ。武さんのことだって弄んでいるんでしょ! その人は優しくて思いやりのある、素晴らしい人よ! あなたのような人間が軽々しく触れるのは許されない!」

「麗華先輩も私のことを外見で判断してたんですね。薄々分かってから、別に驚きはしませんけど。……やっぱり本当の私を見てくれるのはクロちゃんだけだ」

「なに意味不明なこと言っているのよ! とにかくもう二度と、武さんには関わらないでちょうだい!」

「どうしてそんなことを、麗華先輩に言われなきゃいけないんですか? 意味不明なのは先輩の方ですよ。……でも、クロちゃんと離れるのは絶対に嫌です。断固拒否します。というか、麗華先輩こそ近づかないでくださいよ。クロちゃんは誰にもあげません」

「私物化しないで!」

「私に『二度と関わるな』なんて言っておきながら、よくそんなことが言えますね? 私物化してるのはどっちですか? 誰にもクロちゃんのことあげたくないけど、麗華先輩には特にあげたくないです!」

「私もよ……!」


 二人は互いに睨み合う。

 殺気でも混じっているかのような鋭い空気が、部屋いっぱいに広がった。

 

******


「いたたたた」


 目を覚ました武がまず感じたのは、ひどい頭痛。

 二日酔いになっていた。


(昨日は確かストロングチューハイを飲んで……あれ、そこからの記憶がない。もしかして、それからずっと寝てたのか?)


 こめかみに手を添えながら、ゆっくりと体を起こす。

 窓から外を見れば、もうすっかり暗くなっていた。

 

「だいぶ寝てたんだな……今何時だろ?」


 スマホを手に取って開いてみる。

 

 表示されたのは、午後六時という時刻。

 それから、麗華からの大量のメッセージと電話の通知。

 

「うわあああああ!!」


 ここで初めて、約束をすっぽかしていたことに気付く。

 最悪のやらかしをしてしまった。

 

「おっはよー」


 実来が寝室に入ってきた。

 

「そんなに大声出して、どうしたの?」

「今日お客さん来るって話したでしょ? 寝過ごして、約束をすっぽかしちゃったんだよ……」

「それなら大丈夫だよ。麗華先輩には、私がちゃんと事情を話しておいたから」

「……先輩? 麗華さんと知り合いなの?」

「うん。同じ会社に勤めてるの。すっごい仲いいから、事情を話したら納得して帰ってくれたよ。『お大事に』だってさ」

「そうなんだ。ありがとうね、助かったよ」


 後日正式に謝罪するとして、麗華に事情が伝わっているならまずは一安心だ。

 二人が知り合いで助かった。


「でも麗華さんがここに来たときは、びっくりしちゃったよ。まさかクロちゃんと知り合いだったなんてね」

「びっくりしているのは俺もだよ」


 二人が知り合いで、しかも同じ会社に勤めているなんて驚きだ。

 世間は狭いということを痛感させられる。


「そうだ。それなら今度三人で、食事でもしようよ」


 麗華と実来はどことなく似ていて、二人とも話が面白い。

 そんな彼女たちが集まったら、楽しい場になることは確定だ。


「うーん。私は別にいいけど、麗華先輩は来ないんじゃないかな?」

「どうして?」

「さぁね~。じゃ、私はそろそろ帰るね! またねクロちゃん!」

「……う、うん。ばいばい」


 実来の言葉の意味がよく分からないまま、武は手を振った。

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