第8話:国盗りテスト合戦!〜期末の陣〜
2作目でござる。毎日エピソード更新する所存。
「殿、大変です! 数学が、範囲に“確率”を含んでいます!」
「なんと……賽の目まで、政に口を出す時代となったか……!」
それは、風魔の報告から始まった。
期末テスト週間――すなわち、学園における“知の国盗り合戦”が始まろうとしていた。
だが、我らが征夷大将軍・田所将宗には、かつてない試練が迫っていた。
「拙者……古文と日本史には自信ある。しかし、英語と数学が……」
「殿、それでは“文理分裂”でござる!」
風魔、真顔で言った。
それを聞いて、田所は固く頷く。
「うむ……これは幕府の危機。ならば、学問の兵を募る他あるまい!」
翌日、図書室――
田所軍、緊急“御前講義”を開講。
「まず英語。これは西洋の文書であるゆえ、“外交文書”として扱う!」
講師:藤宮柚葉
教材:「戦国英単語帳 ~Castle、Sword、Honor編~」
「“I will conquer the country.”……征服する、です。田所くんが好きそうな単語ね」
「うむ、“征夷”に通ずる!」
続いて数学。
「数学は兵法に通ず。数字こそ、軍略の要!」
講師:風魔一雅(自称・忍者/数検3級)
「たとえば、3人から2人選ぶ確率は――これは“忍者潜入時の組分け術”だ!」
「なるほど、奇襲作戦に応用できるな……!」
だが。
そんな熱血補習をよそに、現実は無情だった。
――期末初日:英語
問題1:「次の英文を訳しなさい」
“This revolution changed the world.”
田所の解答:
「この“革命”は、世界に政変をもたらしたのである!」
……カッコいいけど、減点対象である。
――2日目:数学
問題:確率の応用(サイコロを2回振る)
田所のメモ欄にはこう書かれていた。
《出目に神意あり。偶数は吉、奇数は凶。ゆえに2/3で出陣可》
……一周回って古代陰陽道である。
最終日、田所は机に突っ伏した。
「……やはり、“政”と“勉強”は別物か……」
「殿!」
そこへ駆け寄る風魔、そして藤宮。
「答案用紙を開け。我らが教えた知識、血の通った戦略がそこに宿っているはず!」
「うむ……!」
そのとき、田所の心に電流が走った。
これは単なるテストではない――治世の器を問う、“合戦”なのだ!
そして、数日後。
田所の成績表にはこう記されていた。
英語:62点(過去最高)
数学:ギリギリ赤点回避
歴史:98点(平常運転)
「ふっ……拙者、試験にも勝った……!」
そう呟いて昇降口を歩く田所の背中に、風が吹いた。
その風はどこかで、次の戦(期末成績開示)を予感させていた――。