第一部 【エピローグ】そして、政は続く
2作目でござる。いったんこのエピソードにて完結する所存。
放課後の図書室――そこは、かつて“評定所”と呼ばれた場所。
今や正式に“令和幕府部”として活動許可を得たその一角では、今日も田所将宗が机に向かっていた。
「“新入幕志望者、来月より募集開始”……ふむ、そろそろ入門試験の策定も必要か……」
「だから、単なる部なのよここ……」
藤宮柚葉があきれたように言いながらも、隣で次の広報ポスターを描いている。
風魔一雅は棚の裏で“忍者育成カリキュラム案”を構築中だ。
「殿、数学的戦術思考の導入を試みた結果、連立方程式に敗れ申した……!」
「それはただの勉強だぞ、風魔」
笑いが広がる。
そこへ、扉が開いた。
「失礼する」
現れたのは――氷川清志。新たな生徒会長としての貫禄を纏いながらも、どこか柔らかい表情で立っていた。
「来月の生徒会・幕府合同企画、話を詰めようか」
「おお、御公儀と幕府による“二重政権協議”、ついに始まるか!」
「だからそういう言い方やめなさいって」
だが、誰ももう驚かない。
“ふざけた将軍ごっこ”は、いつしか学校の日常に溶け込んでいたのだ。
◆
帰り道、夕焼け空を見上げながら、田所は呟いた。
「拙者、ついに“政”に至った……」
「いや、まだ入り口でしょ。それにさ――」
藤宮が言う。
「中学も、あと一年。時間は限られてるよ」
「うむ、承知しておる。されど拙者は、“高校幕府設立”という大望を抱いておる!」
「お前、また次の戦場探してるのか……」
風魔が苦笑しながらつぶやく。
だが、田所の目はきらめいていた。
「政とは終わらぬ旅路。令和の世に幕を引くは、まだ早い!」
背中に夕日を受けて、彼は高らかに言い放った。
「次なる戦場は――高校だ!!」
その声は、夕暮れの空へと吸い込まれていく。
そして、風の中に微かに響いた気がした。
**「我こそは、次代の将軍なり」**と――
――『令和幕府開府日記』第一部 完
(つづく)
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