第14話(生徒会選挙編③・完結):勝者は誰だ!?政(まつりごと)の果てに
2作目でござる。毎日エピソード更新する所存。
生徒会選挙・公開討論会。
壇上に立つ3人――田所将宗、氷川清志、五十嵐士門。
体育館には、選挙戦の空気とは思えないほどの熱気が渦巻いていた。
これは、学校行事ではない。
政である――少なくとも彼らにとっては。
◆
「では最後に、候補者それぞれから締めの一言をどうぞ」
司会の先生の声に、まず前へ出たのは氷川。
「僕はこの学校が好きだ。真面目で、静かで、でもどこか優しい。そんな空気を守るために、僕はここに立っている」
「政治とは、目立つことじゃない。“支える”ことだ。みんなの未来のために、僕は政を貫く」
全校が静まり返る。重く、真っ直ぐな言葉。
続いて、五十嵐士門。
「YO! おれは正直、ふざけてるって思われてるかもだけど――」
笑いが漏れる。
「でもさ、この“政って遊び”、おれにとっては本気の“居場所作り”なんだよ。
笑って、撮って、叫んで……そうやって繋がれた仲間の力を、今度は“本物の力”に変えたいって思った」
「バズだけじゃ終わらせねぇ。おれも、“学校”ってステージで、本気になる!」
拍手が起きる。まばらだが、力強い。
そして、最後は――田所将宗。
陣羽織の裾を翻し、彼は一歩、壇上の中央へと進む。
「拙者、田所将宗!」
言葉に、笑いがかすかに混じる。だが、それでも誰も止めない。
「かつて拙者は、ただの戦国オタクにござった。己の妄想だけで世界を変えられると思い、旗を立てた」
「“幕府ごっこ”と呼ばれたあの日々。文化祭、SNS、校外学習、夏の海……。すべて茶番と思われたかもしれぬ」
そこで、彼は口を閉ざした。数秒の沈黙。
そして――
「だが拙者は、胸を張って言える。“ふざけていても、真剣にやれば世界は変わる”と!」
体育館がざわつく。
「拙者の政は、混沌にござる。理性でも秩序でもない。“勢い”と“愛”と“バカの本気”の結晶!」
「だがそれが、人を笑顔にし、誰かの背中を押し、“なんかちょっとやってみたくなる”――そんな政だ!」
藤宮がそっと目元をぬぐい、風魔が鼻をすすった。
将軍は締めくくる。
「さあ、選ぶがよい。我らが未来を、我ら自身の手で!」
◆
――翌日。
HRにて、生徒会選挙の結果が放送で発表された。
「第68代 生徒会長、当選者は――」
教室の空気が凍りつく。
「……氷川清志くんです!」
田所はゆっくりと立ち上がった。
拍手が沸き起こる。田所も、藤宮も、風魔も、その輪の中に加わった。
そこへ、廊下から現れた氷川本人。
「田所」
将軍と氷川、視線が交わる。
「……敗軍の将、兵を語るまい」
「違うな。今回の選挙、“勝った”のは僕かもしれない。でも、“学校を動かした”のは、お前だよ」
その言葉に、田所はぽかんとした表情を浮かべた。
「制度も、文化も、空気も、お前がやった“遊び”が、ぜんぶちょっとずつ変えた。生徒が笑って、話して、考えて。あれは本物の政だ。誇っていい」
――政敵は、静かにそう言った。
「そして。生徒会からの提案がある」
「……?」
「幕府を、公式部活化してほしい」
「なんだと……?」
「いや、もうここまで来たら、認めない方が不自然だし。ちゃんと申請してくれれば、生徒会としてもバックアップする」
「……っ!」
その瞬間、田所の目に光が宿った。
失ったはずの“天下”が、思いがけない形で戻ってくる。
――否、初めて得た“本当の政の器”。
「感無量にて候……!」
その夜、ブログが更新された。
【政道終幕】選挙にて敗北、されど幕府、未来に在り。
政とは何か? それは人の心を繋ぎ、笑わせ、泣かせ、歩ませるもの。
拙者、政敵に敗れたれど、道に勝ち申した。
明日より、幕府は“公認団体”として活動を継続する。
次なる目標――部活動連合との条約締結である!
将軍、さらなる乱世へ。
第1部 完