第13話(生徒会選挙編②):政略バトル開幕!三つ巴の“選挙乱舞”
2作目でござる。毎日エピソード更新する所存。
「まずは、“出陣式”を打つ! 御評定衆、準備はよいか!」
田所将宗(自称・征夷大将軍)が声を上げると、風魔が竹刀を掲げ、藤宮が横断幕(“令和幕府、公職進出の刻!”)を掲げる。
放課後、校門前。
――選挙活動解禁初日、**街頭演説戦**が開幕した。
「我が公約、第一に! 生徒会に“合戦休暇制度”を導入する!」
「……何?」
「すなわち、戦(大会・テスト)前には部活動及び学習に集中する時間を保証し、出陣前の備えを重んじるという制度!」
「要は“部活優先デー”の整備ね」
「第二に! 学食に“将軍御膳”を定期導入!」
「まだ食うのかお前!!」
聴衆の笑いが弾ける。だがその中には、何人か頷いている生徒もいた。
――“わかりやすくて、おもしろい”。それが田所政権の最大の武器だった。
◆
一方その頃、ライバル陣営も始動していた。
「これが、真のマニフェストだ」
氷川清志、生徒会長陣営。掲げるは、実利と冷静の政策集。
「提出物の期限調整、試験前の活動制限、予算透明化、そして“文化系団体の展示スペース拡充”」
「やだ、ちゃんとしてる……!」
「てか、真面目すぎて逆に刺さるやつ」
冷静な語り口に、真面目な生徒たちの支持がじわじわと集まりつつあった。
「浮かれた“幕府ブーム”に頼らず、実績で勝つ。それが俺の政道だ」
演説後、拍手。
だがその中に、ひときわ大きな声が割って入った。
「YO〜! そんなお堅い政策じゃ、令和の民は動かねぇ〜〜!」
――そう、来たるは第三の勢力。
五十嵐士門、通称「武将系YouTuber」、現・ノリと再生数の暴君。
「というわけで、今から“突撃! 即席インタビューで票ゲット☆”開始しまーす!」
カメラを回しながら、通行人(=同級生)にインタビューを始める五十嵐。
「将軍と生徒会、ぶっちゃけどっち推し?」
「えっ、えっと……幕府は面白いけど、真面目に考えるなら生徒会……」
「へ〜! 面白いけど責任感が心配、ってやつね。じゃあ俺、“中間層を取りに行く第三勢力”として立候補したの、正解じゃね?」
「うわ……うまいこと言ってる……!」
「チャンネル登録よろ☆」
再生数を政治力に変える男。
そして彼の動画は、“生徒会選挙ライブ”シリーズとして、校内SNSで連日拡散されていた。
◆
「拙者、まずいと思う」
その夜、田所将宗は珍しく弱気だった。
文化祭での人気、SNSでのバズ――すべてが味方と思っていたが、
本気の氷川と、勢いの五十嵐という強敵が、想像以上の速さで迫ってきている。
「やはり我が政は……ただの“遊び”なのか……?」
「違うでしょ」
藤宮柚葉が、ポスターの貼り替え作業をしながらつぶやいた。
「田所くんは遊んでたんじゃなくて、面白くて、でもちゃんと伝えようとしてた。“ふざけてるようで真面目”じゃなきゃ、私は参謀なんてやらないよ」
風魔も言う。
「俺は殿の“やりすぎ感”に救われた。マジで影薄かった俺が、“風の部隊”名乗れるまでになったのは、殿のせいだ」
「ううむ……それ、拙者の責任では……?」
「褒めてんの!!!」
わはは、と笑いが起きた。
そのとき、田所は思い出した。
“真面目で、つまらなくて、何も言えなかったあの頃”。
――でも今の自分は、たとえ茶化されても、「政」を語れる。
「拙者、出陣する!」
夜の校内、貼り替え終わったポスターの下で、田所は拳を握る。
「今度は、“ふざけてる”と言われてもいい。ただ、“本気だった”と、最後に言わせる!」
◆
そして、ついに――
選挙戦最終日。
討論会、開幕。場所:体育館。全校生徒+職員が注目する最終決戦。
「理性の政を貫く、現職・氷川清志!」
「バズと行動力の男、YouTuber・五十嵐士門!」
「そして最後は、バカで真面目な将軍こと……田所将宗!」
三人が壇上に並んだそのとき、
司会役の教師が思わず漏らした。
「……なんで、こんなに注目されてるんだろうな、この選挙……」
だが、生徒たちは知っていた。
**ふざけた仮面の下に、たしかにあった“本気”**が、
この選挙を“熱く”したことを――