第12話(生徒会選挙編①):政(まつりごと)へ出陣!幕府、選挙に挑む!
2作目でござる。毎日エピソード更新する所存。
それは、秋の終わりに届いた一通の文書から始まった。
――生徒会選挙、告示。
「来たか……決戦の刻が」
田所将宗、自称・征夷大将軍。
彼は資料室の一角、自作の“政庁”スペースで膝をつき、巻物(Googleスプレッドシートを和紙風印刷したもの)を広げていた。
「これはつまり……拙者に、“真の政”へと進めという天啓!」
「殿……まさか、出馬するおつもりで?」
参謀・藤宮柚葉が口元に手を当て、眉をひそめる。
「当然であろう。これまで我らが築いてきた幕府の実績、戦、文化、そして萌え政策――すべてを次の段階に押し上げる好機ぞ!」
風魔一雅、腕を組んでうなずいた。
「“風”が……吹いている……選挙勝利の風が……!」
「いや、窓開いてるだけだからね」
藤宮が冷静に突っ込むも、もはや止まらない。
「この選挙、すなわち“政道の本陣”! 幕府が“ごっこ”でないと証明する時!」
田所の目が、かつてないほど本気だった。
◆
放課後。選挙管理委員会の前に並ぶ立候補者たち。
「生徒会長立候補者――田所将宗!」
「まさか、本当に出したのか……」
氷川清志。現・生徒会長、学年トップの“常識の砦”。
前回の文化祭で“ツンデレ正妻”扱いされたトラウマを乗り越え、今回も出馬を決めていた。
「将宗、お前……遊びじゃないんだぞ、選挙は」
「うむ。拙者も、それを重々承知の上。もはや“遊び”では、ここまで来られぬと悟った」
「……」
その眼差しに、氷川は一瞬、言葉を失った。
ふざけているようで、実は誰よりも“本気”。それが田所将宗という男だった。
◆
翌日。
生徒会選挙の掲示板に、ポスターが並ぶ。
【氷川清志】
「実績で語る、生徒第一の政」
【田所将宗】
「令和幕府、いざ公職進出へ! 天下布政!」
そしてその横にあった副題に、皆が足を止めた。
《討幕か?共闘か? 幕府vs生徒会、最終章へ――》
「副題が漫画かよ!!」
校内に、再び爆笑とざわめきが巻き起こる。
◆
選挙戦、開幕。
田所陣営は、戦術会議(※図書室)を開始した。
「票田の攻略を考えねば……! 剣道部、演劇部、美術部は親幕派。しかし、野球部と吹奏楽部は中立……」
「学食の常連に“将軍割”導入で票を集めよう」
「風魔、なにその買収くさい政策!」
「否、これは政略――“胃袋外交”だ」
一方、氷川陣営も動いていた。
「幕府の影響力が拡大しすぎた。もうネタで済まされないぞ」
「会長、田所は前回の文化祭で票を稼ぎすぎました……。あと、“将軍グッズ”が地味に人気で……」
「公式マスコット“たどころまさむね君”のLINEスタンプ、学校内1位です」
「ぐぬぬ……!」
理性と真面目を武器にしてきた氷川にとって、田所の“熱狂と混沌”は最大の難敵だった。
◆
選挙演説会当日――体育館。
壇上に立った田所は、堂々と語り始めた。
「拙者、田所将宗! ここに、政の覚悟を以て、立候補を表明する!」
観客、くすくすと笑う。
だが、すぐに静まり返った。
「拙者は、ただの戦国オタクでござった。だが、文化祭で学び、SNSで叩かれ、先生に正座させられながら、こう悟った!」
「政とは、民の声を聞くこと。ふざけながらも、真剣に応えること!」
「ふざけてるようで、真面目に、真面目すぎてふざけて見える――それが幕府の政道!」
ざわつく会場。
風魔の目が潤む。
「……殿、かっけぇ……!」
藤宮もつぶやく。
「なんか……本当に、変わったね。あの頃の“戦国バカ”じゃない……」
一方、氷川清志は静かに拳を握っていた。
「面白い。なら本気で叩き潰す。遊びでも狂気でもない、“理性の政”を見せてやる」
田所が舞台から降りたその時。
会場から、一人の生徒が立ち上がった。
「追加立候補を表明する!」
現れたのは――五十嵐士門。
「面白そうだから、俺も混ぜてくれよ。“再生数で政を測る系男子”としてな!!」
まさかの三つ巴!
田所、氷川、そして五十嵐――
“令和最大の政戦”が、今始まる――!!