第10話:紅葉の伏兵!幕府、社会科見学に出陣す
2作目でござる。毎日エピソード更新する所存。
秋――それは知の収穫と、行楽の季節。
そしてその日、田所将宗(自称:征夷大将軍)は“ある戦場”へと出陣していた。
「本日は……拙者、幕府代表として、“社会科見学”に参る所存!」
行き先は、歴史民俗資料館。つまり、“文化と学び”が同時に楽しめる市内の定番スポットである。
が、田所はすでに、テンションが異様に高かった。
「殿、その鎧レプリカ、どこから調達を……」
「メルカリだ。七千八百円。刀は百均の竹製だが、志は本物!」
風魔は半笑いで言った。
「資料館の受付で、また止められる未来しか見えませんぞ……!」
その予言は、秒速で的中する。
資料館入口。
「ええと……団体見学の方ですか?」
「拙者、征夷大将軍・田所将宗。歴史の魂を受け継ぐ者として、直々に視察に来た次第!」
「……えー……あ、あの、写真はOKですが、館内でチャンバラはご遠慮くださいね?」
「心得た!!」
館内ではクラスメートが静かに展示を見ている中――
「見よ! この甲冑! 我が家に伝わる家紋に酷似しておる!」
「それ、どう見ても“NHK大河ドラマ展”のやつ……」
藤宮柚葉は平然とツッコミを入れつつ、音声ガイドを片手に副官モードである。
「殿、こちら“江戸時代の寺子屋模型”。学習制度の再考に資するやもしれませぬ」
「む……これは“文政幕府改革案”に取り入れるべきか……」
なお、その改革案は「土曜も登校・午前は剣術、午後は自由学習」という令和にして令和じゃない制度であった。
一方、五十嵐士門はというと――
「おっ、こっちの“古文書解読体験コーナー”、動画映えしそう!」
「士門殿、それは“公文書保管室”でござる。勝手に開けてはならぬ!」
「うわっ職員来た! 逃げろ田所!」
「待たれい! 拙者は潔白な将――」
「確保されてるぞ、将軍!!」
結果:
社会科見学の“注意喚起一覧”に「武将風衣装の生徒、要注意」が追加される。
帰りのバス。
車窓から見える紅葉を眺め、田所はぽつりと呟く。
「かくも美しきは、民の歴史……この葉の赤も、先人たちの血と汗が染みし証か……」
「いや、それ普通に紅葉……」
「静かに。殿の“秋ポエムモード”だよ」
車内が笑いに包まれる中、将軍の目はキラキラと輝いていた。
その夜のブログ更新タイトル:
【視察完了】歴史民俗資料館、令和幕府の“聖地”に認定!
コメント欄:
「将軍のテンションが紅葉より赤い」
「資料館も被害者ww」
「次はどこの自治体を巻き込むのか期待」