Hustle blood before you
何気なく見ていたテレビ。
私はそこに「推し」を見つけた。
見つけてしまった。
なんてカッコいいの!それに、なんて洗練されてるの?
仕草1つに目が釘付け。胸が躍る。
こんなこと滅多にないよ!
貯め込んだ小銭でプレゼント攻撃。
推しに注ぎ込むってこう言うことか!
ライブ配信のチケット買い占めてお財布すっからかん。
これはある種の中毒症状。
あなたがいればなんにもいらない。
お目々をハートにしてテレビにかじりつく。
地方に住んでるから彼のいる都会まで遠い。
彼のブログに書き込み常連。
名前を覚えてもらった!
落ち着け、落ち着け。ストーカー化しちゃなんねえ。
適度に距離を保ちつつ、美味しいところを掻っ攫って。
私ゃハイエナか?!
でも、本気で好きなの!この想い誰にも止められない。
もしも直で会ったなら、自制できる自信がない。そのくらい好き!
本能のままに生きてるのさ♪
そう、生きている!なんて素晴らしい!
「大丈夫ですか?」
電信柱に抱きついていた私に誰かが声をかけた。
「大丈夫ですぅ」
見ると、推しが地方巡業で来ていた。
生の推し!
鼻血が……。
「この人具合悪そうだよ」
推しがマネージャーさんに言う。
「うちのボクちゃんのファンの方ですか?」
「はい」
「さわっちゃダメですよ」
「はい」
「落ち着いてください。すぐ去りますので、自制心を強く持って!」
「はい」
推しが行ってしまう。
私はその場に泣き崩れた。