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9 ギルドは設立したし毎日は日常だし




 シンたちは手に入れた屋敷をさっそく活用すべく大掃除を決行し、生活に必要な設備と個室、あと作戦室なんかも用意した。

 でも空き部屋がまだいっぱいある。

 いつか超巨大ギルドに成長すればこの屋敷を使いこなせる日が来るのだろうか。


 とりあえず拠点も完成したので街のギルド協会に行って、私立ギルドの設立登録申請を行ない、許可をもらった。

 登録内容は以下。


=======================

○ギルド名『ゾンビパウダー』

○ランク:E

○資本金:金貨350枚

○登録冒険者(数5名)

・ギルドマスター:シン

・サブマスター:クレア

・一般メンバー:ローゲリアス、エミーリア、フリーデ

=======================


 ちなみにフリーデはイツオのパーティを書面上で脱退させ、こちらに移籍させた。もちろんイツオ達には内緒だが。

 これで彼女は本当に名実共にただの寄生虫だ。

 でもまあこちとらまだ駆け出しギルドだし、ドラゴンを飼う余裕などないから仕方ない。

 屍骸は食事をせずとも生き続けられるが、フリーデは食べることが好きだからな。


「今晩は鳥を用意させているの」


 そう言って彼女はイツオパーティに帰って行った。

 フリーデ自身も働かずに飯だけ食う姫生活になんだかんだ適応してきているみたい。何よりですな。


 あとギルドの資本金はクレアとシンの貯金から。とはいえシンはパーティに搾取されていたので大部分はクレアだが。

 あとレイナ様とプリシラもいくらか祝い金もくれたのでそれで。


 これでいよいよ(シン)ギルドがスタートとなる。

 それに伴い、今後、拠点にはシン、クレア、エミーリア、ローゲリアスの四人が住み込むことになった。




「うーむ! これはなかなか! 立派な拠点じゃないか! なあ、マオー様よ!」


 一通りの仕立てを終え、シン・クレア・ローゲリアス・エミーリアの皆で屋敷を見上げている中、感慨深そうにエミーリアが言った。


 正式に隷属となったことで、エミーにはクレアの服を与えた。かなりサイズが余っているが。

 それと風呂に入れてキレイにしてもあげたら、意外と美少女なことが判明した。いや、外見的に美幼女と呼ぶべきなのか? 実年齢は知らないけど。

 とにかく目鼻立ち整っている。桃色の長い髪に八重歯がキュートだ。


 彼女は驚くまでの更正ぶりで、今ではすっかり従順な部下である。

 はちまきを頭に巻き、その道の大会で優勝を目指しているのかと錯覚するほどの熱血闘魂ぶりで、一心不乱に掃除してくれた。


「ああでも、お庭の死体を片付けないとですね。ちょっと腐ってきちゃってますし」


 クレアがそこらで腐りかけているゾンビの残骸を残念そうに見つめて言うと、


「アホなのか小娘! 死体を捨てるなどと、勿体なさ過ぎかあ!?」


 エミーが怒り出した。


「良いか! 死体は腐りだしてからが本番じゃい! メンタマかっぽじってよおーく見ていろ! めっちゃ役立つからなあまじ!」


 そう言うと急に似合わぬ真面目な表情になり、地面に手をつきなにやら詠唱を始める。


「アアァァアアアァアアアー」


 すると全ての死体たちが突然起き上がり、ゾンビとしての活動を開始した。


「きゃああああーー!!」


 そしてクレアは悲鳴を上げる。


「なんじゃワレ、もしかしてこういうの苦手かあ? 幽霊とかそういうのダメなんかあ?」


「べ、べつに……」


「んー? にひひひ」


「きゃあ嘘です、そうですう! ごめんなさい近づけないでえ! お化けとか、幽霊とか、怖いの苦手なんです! やめてえぇっ」


「ほおう、良いこと聞いたのう」


 ニヤリと悪い笑みをするエミー。ジリジリと彼女を包囲するようにゾンビを集めていく。


「ひ、ひいいやめ、やめてください、それ、こっちに近づけないでくださいいい! クレアは幽霊もゾンビも信じません! いないいないいないいないいいい!」


 死霊系モンスターの存在が全否定されていて笑う。


「俺の力で生き返った屍骸は平気なのに」


「シンさんの屍骸は特別です! だって生きてます! でも幽霊は脚がないしゾンビはそもそも死体です! 動いちゃダメです! だって動くと怖いですから!」


 とりあえず理屈じゃないってことは分かった。


「なんじゃ死体を差別するな、同等に扱え!」


「別に差別してません! 嫌いでもありません! ただ怖いといってるんです! お願い近づけないでえ!」


「ほうーれ、ほうーれ」


「やめてええやめてえええひいいいい」


 すっかりオヤジと化しゾンビで追い詰めるエミーと、雷に怯える少女の如く顔面蒼白で縮こまるクレア。

 あのクレアにこんな弱点があったなんて意外だ。


 ゾンビがウガアアと口を開き、そこから何かの粘液がダラダラと流れ落ち、彼女の額から頬に垂れていく


「ぷつん」


「え?」


 次の瞬間、クレアの中で何かが切れた。

 一瞬の静寂。

 そして直後、神速の居合いが彼女を取り巻く全てのゾンビを一刀両断した。

 さすが街で三本の指には入るアタッカーだ。太刀筋が全然見えなかった。


「ぎゃああアタイのゾンビちゃんたちがああああ!!?」


「うるさいです! こんなに嫌がってるのにやめてくれないのが悪いんです!」


「でもゾンビ、千切れても動けちゃいまあああす!! 無駄です残念でしたあああ!!」


「ぎゃああああ胴体分離でも動いてますううう!!! え、ていうかよく見るとなぜこのゾンビたちってブラジャーしてるの?」


「やっと気付いたか。だからよく見ろと何度も言うたのに。ゾンビたちも裸じゃ可哀想じゃ。だからお前の部屋から拝借してきた。なかなか意外と攻めたブラを付けとるのうお前」


「はあ!? あっこれ全部クレアのじゃないですか! あっこれお気に入りの!? いやあ変な緑色の汁が染み込んじゃってる! ズブズブじゃないですか! もうクレアのブラズブズブになっちゃってますよ!? ヒドい! どうしてこんなことするんですか!」


「この際だから言っておくぞ、アタイは全世界の巨乳女に漏れなく嫉妬している! 敵じゃ! ブラ付けられる奴らはことごとく敵なんじゃ! アタイだって付けたいんや! 配慮しろ! お前らも付けるな! ズルいじゃろ、だって!」


「――――ッ! ――ッッ!」

「――! ――――!!!」



「「………………」」


 シンは喧嘩を始めた二人をぼんやりと眺めていて、やがて隣で似たような顔で突っ立っているローゲリアに「茶にしないか?」と誘った。

 二人で我関せずと屋敷に入る。

 その後、人生で初めて淹れたという元公爵領主ローゲリアスの茶を二人で啜りながら、ほのぼのとする。


「ちょっと渋いかもな」


「左様か。申し訳あらぬ。次回はもう少し浸出時間を減らそう」


 その後シンはローゲリアスより剣の指導とかも受けてみたり。


「ほほう、流石は我が主。なかなか筋が良いですな」


「なんでだろ? 前に剣を握った時はてんでダメだったんだけど」


 今はブンブンいい感じに振れる。もしかすると死骸術の何かが作用してるのかもしれない。要検証だな。


 みるみる剣術が上達して気分が良かったので、今後も継続して指導を受けることにした。


 まあ、そういう一日。

 新しい日常はなかなか居心地がいい。少し前まで根暗マン根暗マンと言われてこき使われてたのが嘘みたいだ。


「言っておきますけどクレアがノーブラで日常送るととんでもないことになりますから! シンさんクレアからひと時も目を離せなくなっちゃいますから! クレアの程よいサイズのオッパイに夢中です、残念ご愁傷さま!」


「ふははは馬鹿め、愚か者め! マオー様は既にアタイのまな板ぽっち胸の虜! おまえのだらしない巨乳など眼中にないわ! 言っとくがブラさえなければ我らは同等! 否、むしろそこは我ら貧乳のフィールド! 負けはせぬわぶわあーかめ!」


(…………まだやってんのか)


 既に三時間ほど続いていたそのケンカは、それからさらにニ時間も続いてやっと終了した。仲良すぎかおまえら。


 ゾンビは結局、ギルド拠点の敷地を守るガーディアンとして採用されることになった。昼夜問わず、屋敷のまわりを彷徨い続け、侵入者がいれば排除してくれる。

 でもそのせいでクレアは外出する際にゾンビをすり抜けるのに少々難儀していた。数日で適応したが。


 やがて街では、日替わりで下着を変える大量のゾンビに護られる屋敷として有名になる。


 シンはそのゾンビたちの姿を日々つぶさに観察し、一つの推論をたて、それを本人に訊ねてみた。


「さてはクレアって薄水色と花柄が好き?」


「シンさん!?」

という日常回?でした


昼か夜にまた更新します


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