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10 ”超高待遇”でメイドを"雇う"




「おはようございます、シンさま」


 いつぞやのメイド、ルナが屋敷にやって来た。

 手には荷物、そして肩の上には例の狐のフェアリーもいる。


「ルナ? どうした?」


 他の三人もエントランスに集まってきて、ルナは若干言いにくそうにする。


「実は、プリシラさまの屋敷での仕事を辞めてきた」


「え?」


「それで、……シンさまにお願いがある」


 お願い?


「私に、この屋敷の……ううん、シンさまの身の回りのお世話を、是非とも任せて欲しいの」


 彼女は意を決したように、真摯な眼差しでそれを告げる。


「シンさんの……身の回りのお世話……」


「ひぐぅっ」


 横でクレアがシリアルキラーの眼光をともしたので、怯えてルナが変な声を出す。


「ほう……マオー様の、夜のお世話か」


 エミーリアの発言にルナは歓喜の表情で反応する。


「夜も? 夜もしていい?」


 エミーリアはルナの胸部をしかと観察し、やがて告げる。


「おまえ、なかなか見所があるな」


「ほんと? 嬉しい」


 どうやらルナの胸部の膨らみはエミーリアの審査を通ったらしい。


「アタイ同伴での夜のお伽、今晩から開始するぞい!」


 おい、クソ幼女もどき、やめろ。




 ルナは誠心誠意、頭を下げる。


「お願いします! 私っ! あの屋敷でシンさまに会った時、分かった! この人こそ、私が一生かけてお仕えするべき人だって! ビビッときた!」


「キキっ!!」


 彼女の肩の上で狐のフェアリーも『そうなんです!』と敬礼をする。可愛い。


「でもなあ……申し訳ないが、今お給金を払えるだけの余裕がうちにはないんだ。ルナだって、タダ働きはイヤだろ?」


「うん、タダ働きはイヤ。しっかりと対価は頂きたい」


「だろ。だから申し訳ないが……」


「違う。勘違いしないで。私が言いたいのは、対価はなにもお金でなくてもかまわないということ」


「え? 金でなくてもって……なら、なにを?」


「ええと、たとえば空気を」


 なにを言ってるんだろう。


「……吸い放題なんだが?」


「うんと、詳しく言うと、空気は空気でも、シンさまがお吸いになったばかりの空気――つまりは吐息のこと」


「ほう」


 シンは頷く。ただし何も分かってない。


「つまりお前は、俺と同じ部屋の空気が吸いたいとか、そういうことを言っているのか?」


「違う」


 彼女はきっぱりと首を振り、学び場の講師のごとく滔々と、真摯に説明する。


「吸う距離は限りなくゼロが良い。私と鼻が触れあうほどの距離でものすごくハアハアと荒々しく、顔に向かって息を吹きかけて欲しい。それを私は思う存分美味しく吸う。それで満足」


「「……………………」」


 ルナの頭のおかしな発言、否、性癖に、シンとローゲリアスが言葉を失っていると、


「ねえ、シンさん」


 クレアが健やかな笑顔で、刀に手をかけつつ言った。


「どうやらまだ屋敷のお掃除が全部済んでいなかったみたい。片付けたいので少しばかり目を閉じていてください。うふふ」


「落ち着けクレア、絶対にダメだ」


 いったいお前なにを片付ける気だ。絶対殺る気だろ。


「違いますう! お掃除ですう! ハウスクリーニングです! その汚物を!! 汚らしい汚物を!! ハアハアってなに!? なんなの!? 消す! そいつデリートします! お願いさせてええ!!」


 腰の刀を抜き、なかなかの半狂乱でガチの殺意を放ちだすクレア。それをローゲリアスが全力で止めていた。


 ローゲさんナイスです。さっそく新居を訳あり物件にされるところだ。

 まあ既に庭でゾンビ飼ってる物件だけど。


「シンさま、お願い。シンさまの近くにいたい。そうしたい気持ちを押殺し、忙しさに謀殺されて、あとで後悔するのはもう絶対にイヤ」


「……後悔、か」


 彼女がプリシラの家の庭で泣いていたことを思い出す。

 気持ちが少し揺らいだ。


「何だったら、雇ってくれるのなら、お金も出す」


「は?」


「それも毎月。雇用のお礼でわたくしがシンさまにお金を支払う」


「えーと」


 雇うとは?


「私、こう見えてけっこう裕福。実は親がエルフ自治連合領域の領主の一人。お金には困ってない。スカーレット家には、人族との交流の一環で奉仕にだされていたけど、シンさまへの熱い想いを知れば故郷の皆も許してくれる。エルフは愛には弱いから。その為にきっとお金も出してくれる。いくらが良い? 百? 二百?」


 金貨の数を指で示していく彼女。

 軽く提示しているが、金貨ニ百枚といえば、中小ギルド登録冒険者の平均年収である。


「わかった、月額三百。どう? 毎日私の顔に息を吐き、近くに置いておくだけで、なんと毎月三百もお支払いしちゃう」


「月額三百、だと……?」


「シンさん! 甘言に誑かされてはいけません! 月三百など……この私がすぐに稼いでみせます! だから――」


 クレアが迫真で制止する。

 そうだよな……、そんな、そんなお金なんかに釣られてなるものか……。

 そもそも息吐きかけてお金もらうなんてそんな……。

 それに三百と言えばほぼ今のうちの資本金と同額で――


「わかった、じゃあ一回三百にする。月額じゃなくて、私の顔に息をハアハアして私を満足させる度に三百枚支払――」


「採用っ!!!!!」


「やったああっっっ!!!!!!」


「ぁぁぁっぁぁぁあっぁああああああああああ……シンさああん!!」


 というわけでなんと、ハアハアする度に三百金貨くれる変態メイド(エルフ族の上流貴族)が仲間に加わった。

 とりあえずルナもギルドメンバーに登録しておく。これでメンバーは六人に。


「……ロコス、ゼッタイロコス……ロコス……ルナ、ロコス……」


 あと屋敷にはしばらくクレアによる謎の暗号文の暗唱が響き続けていたという。

また夜に更新します

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