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十四話 黒騎士ユタカの魔城見学

 


 半年後。

 俺はリズ様、レジィと共に魔城に来ていた。

 天使達の魔城改装が終わったとの事で、ファリーヌの案内で最終チェックをする事になった。



「レジャンデール様、お元気そうで何よりでございます」

「えへへ、ファリーヌも元気そう~! あ、なんだか明るくなったよね。ふふ、そっかそっか~! いつかお城を使わせてもらわないとだね」



 ファリーヌのどこに変化があったのか俺には全くわからなかったが、レジィはニコニコと花を振り撒きながら笑っている。



「貴方は何でもお見通しなのですね、お恥ずかしい限りです」



 なんだかわかり合っている二人が手を繋いで歩き出した。

 俺とリズ様はその後に続く。

 話についていけていない俺に、リズ様はそっと耳打ちしてくれる。



「城のメイン施設は結婚式場なのだ。それを使いたいのであれば、ファリーヌに春が訪れたということだろう」

「あのファリーヌに」



 詳細を知りたいような知りたくないような。

 めちゃくちゃ強いやつなのだろうか。想像できない。



「お二人共、こちらがメインの愛を誓う場所です」



 エントランスを抜けた大廊下の先の扉が開かれた。



「わぁ、すげぇ」



 俺は広がる景色に自然と声が出ていた。

 城の中央に広い中庭ができており、植物と空に見守られる式場になっている。

 桃色と薄紫のグラデーションが綺麗な、地球では見た事もない植物が庭を装飾していてとても幻想的だった。


 柳みたいに垂れ下がっているものや、鈴蘭みたいに小さい花が並んでいたり、デカいタンポポの綿毛みたいなものもあり、植物の形は様々で見ていて飽きない。

 魔界の植物のアーチの道を進むと白い祭壇があり、全体に魔力契約の補助のための魔方陣が複数、紺色で描かれている。

 魔力が通ると透き通った青色になるらしい。



「見事な庭園だな」

「魔王が植物をお好きなのだと、関係者全員からの要望でしたから」



 そういえば俺もアンケート取られたな。全員一致とは面白い。

 大きな噴水もアーチの両側にあり、白いテーブルと椅子も点々と配置されている。

 挙式を眺めながら食事をしてもいいらしい。

 ホームパーティー感のある挙式を豪華にしたらこうなるんだろうな。



「こちらに別途、誰も呼ばず、ひっそりと二人だけで愛を誓う場所も用意してます。なるべく人目につかないよう、背の高い植物を配置してあります」



 茂みを掻き分けた先に、隠れ家のような空間に小さな祭壇があった。

 ユーザーへの気遣いが行き届き過ぎていて、なんとなくこれはファリーヌが欲しかったんだろうと感じた。

 ひっそり誓い合いたい相手がいなければ思い付かない気がする。

 他にもあと二カ所、テーマの違う挙式ができるスペースがあった。

 種族が入り乱れる予定だから、数は多い方がいい。



「食事をメインに楽しむホールもありますよ。そちらはイーグル様とファムエールが仕上げてくれています」



 案内してもらうと、鉄板焼きの店みたいに目の前で調理を見られるスペースのある、広いホールだった。

 神殿のような清潔感のある空間で、イーグル監修なのがよくわかる。

 程よく観葉植物も配置され、天井には芸術的に組み上がった柱がそびえ立ち、見応えがあった。

 隙間から空が見える構造になっていて幻想的だ。



「あれ、イーグルいないじゃん」



 俺がキョロキョロしても、ホールにいるのは細かい作業をしている魔物数名だけだ。

 ファリーヌが俺を見て当然のように答えた。



「いつもの事です。イーグル様は宿泊所でファムエールと遊んでいるのでしょう」

「遊ばれているの間違いだろう」



 リズ様。辛辣。

 宿泊所を見るのは後回しにしたいと俺が申し出たら採用された。

 イーグルの可哀相な声を聞きに行く趣味はない。



「あー! 勇者と神と魔王だー!」



 次の見学先を考えている時にパノヴァが元気に駆け寄って来た。

 何故かパノヴァは子供を抱えている。

 パノヴァの胸にしがみついて顔はわからないが、五、六歳だろうか。ウェイブがかった長い髪をした少女のように見える。



「パノヴァ、お前、いつの間に子供を」

「違う違う、ファムエールとイーグル様の子供」

「は!?」



 俺と同時にリズ様も目を見開いた。

 俺の声に驚いたのか、チラリとこちらを向いた子の額には目があった。

 確かに魔神だ。



「女の子?」

「ううん。と~っても可愛いけどエクラエルは男の子だよ~エルって呼んでね~!」



 パノヴァの紹介で恐る恐るエルは会釈した。

 ファムエールとイーグルの子供とは思えない引っ込み思案のようだ。



「パノヴァが預かってんのか」

「違うよ、エルは私が拾ったから私のもの! ファムエールとイーグル様は自分の子供ってことも知らないと思うよ」

「え!?」



 俺はリズ様を見た。神界の常識がわからない。



「ユタカには衝撃かもしれないが、神は新たな神を産み落としたら基本的には放置するものだ。死なないし、自然と育つからな。手元で育てる方が稀だ」



 いつか俺とリズ様がそうなった時にどうするのかを話し合わないと大変な事になりそうだ。

 神は子育てしないのはわかったけど、魔物はどうなのだろう。



「おっレジィとリスドォルはよく見るけど、ユタカは久し振りじゃん」



 背後からフリアンの声がして俺は振り返った。



「フリアンんん゛!?」



 俺は瞬時に噴き出していた。

 フリアンそっくりの獣耳の子供が三人もフリアンにくっついていたからだ。

 こちらは三歳前後といったところか。

 久し振りと言っても半年程度の間の出来事なので、神も魔物も人間の子供と違い、成長速度がとても早いようだ。



「ベビーラッシュ!?」

「ユタカは元気だなぁ」

「フリアン、おま、強い奴が見付かったのか!?」



 確かフリアンはリズ様くらい強い存在と子作りしたがっていた。

 そんな奴そう簡単にいるのか?

 俺の考えが顔に出ていたのか、フリアンが手招きをした。

 慌てて近付いてフリアンに耳を寄せるとこう告げた。



「相手は、異世界の勇者だぜ!」



 俺の疑問は一瞬で納得に変わった。

 やっぱり俺の正体を隠しておいて正解だったと改めて思った。



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