十五話 炎の勇者デュラムの果実の行方
いやぁ、いきなり魔神と戦う事になるわ、悪魔に魔王が操られるわ、慌ただしかった。
ある程度話し合いも済んで、どうやら今回の双子魔神襲撃事件は解決したらしい。
神界の事になるともう俺じゃ話題にもついていけないからな。
誰も死ななくて良かった良かった。
クラウンは教育係とやらに会うために帰っていった。
ようやく落ち着いて久し振りの三勇者で話ができる事になった訳だ。
「デュラム、これ土産」
「うお~! これが地球の食料! サンキュー、ユタカ」
ユタカが約束通り地球の飯を持って来てくれた。
結構重い。孤児院の子供の人数分あるみたいだ。
「おい、こんなに貰って大丈夫なのか!? かなり金かかったんじゃ……」
「それが子供の小遣いで買えちゃう値段なんだよ」
缶詰、インスタント麺、レトルト食品という聞き馴染みの無い言葉を並べられた。
見た感じ、どうやら日持ちに特化した物を持って来てくれたようだ。
味は魔王がさっきからずっと指差して一つ一つ褒めている。
美味くて長期保存ができる食品なんて、こっちじゃめちゃくちゃ高価なんだがな。
地球、恐るべし。
「今回は保存食がメインだから、今度落ち着いて日本に遊びに来てくれたら、もっと美味しい料理を御馳走する」
「マジ? 孤児院に余裕ができたら是非とも旅行したいねぇ」
ジンがかなり手伝ってくれているとは言え、単純に子供の世話をできる人数が足りてない。
信頼できる人員が確保できるまではお預けだが、必ず行きたい。
「デュラム」
「ん、どうした魔王」
「食べてみたいと言っていただろう」
そう言って魔王が差し出してきたのは見たこともない透き通った果実。
これはまさか。
「魔界一美味な果実!?」
「孤児院の院長就任祝いだ」
めちゃくちゃ嬉しい。
でも催淫効果があるんだっけ。
食べるにしてもかなり計画的じゃないと問題が起きそうだな。
「これって保存はできんの?」
「この箱に入れておけば半永久的に朽ちる事はない」
ただの木箱だが、この果実がなる木で作った物らしい。
便利だなぁ。
これで準備を整えてから食べる事ができそうだ。
準備ってなんだって感じだが。
結婚したい相手ができるまでお預けか。まあいいけど。
「ありがとな、助かる」
「ふっ、デュラムがそれを活用するのはまだまだ先になるだろうからな」
「ひでぇな。俺がモテないって言いたいのかよ~」
別にモテない訳ではない。ホントにホントに。
かといって女とも男とも遊んでる暇がないから浮ついた話がある訳じゃねーけどさ。
「そうではない。いずれ必要になるが今ではないだけだ」
「何それ、魔王って予知能力まであんの?」
これ以上万能になるのやめてよね。
まるで俺の将来のパートナーを知ってるみたいに言われると期待しちゃうだろ。
「それは俺でもわかるけどな」
「そうだね、僕でもわかるや」
「えっ、お前らも!?」
ユタカとフランセーズまで俺の将来の事がわかってんのかよ。
でもこういうのって他人の事はよくわかるけど、自分の事はわからないもんだよな。
「三人が受け入れてるって事は、俺にとって悪い相手じゃないってことだな」
「まあそうだな、私は期待している」
「俺も楽しみ」
「僕も幸せになって欲しいと思う」
有望視されてるな、俺の将来の相手は。
◇◇◇
魔王城で食事をしてから解散した。
別れがあっさりしてるけど、今は魔王の加護がある者同士、連絡が楽になったのだ。
たとえ世界が違っても、誰かがピンチになれば気付く事ができる。
離れていても繋がってるというのは思いのほか落ち着く。
魔界で魔王とユタカが結婚式をする計画を立てているそうだ。
招待してくれるみたいだから今から心が躍るな。
魔王とユタカに見送られ、俺とフランセーズは孤児院に戻ってきた。
フランセーズはテリアを迎えに。俺は帰宅だ。
「ただいま」
「先生! お帰りなさい!」
ジンが飛び出してきて、俺の腰に抱き着いた。
それに続いて他の子供も俺にくっついてくる。
もみくちゃにされながら、テリアを見付けて声をかける。
「テリア、いつも子供達の面倒を見てくれてありがとな、助かった」
「またいつでもお手伝いするよ」
テリアは多忙な王子様なのに時折、孤児院に顔を出してくれる。
よく遊んでくれるため子供達からは大人気だ。
見ていてもわかるが、テリアは子供が大好きなんだろう。
いつかフランセーズと子供ができたら孤児院に遊びに来て欲しいな。
フランセーズとテリアをみんなで見送り、ようやく普段の生活だ。
テリアとジンが殆どの仕事をやってくれていたお陰で、もう子供達を寝かしつけるだけになっている。
しかも、みんな布団に入るなり眠りに落ちた。
「ビックリなくらいみんな寝付きいいな」
「テリアさんがいつもより元気に遊んでいたので」
「あー、勇者になったから体力が上がったんだな」
俺がジンと二人で孤児院をやっていられるのも、勇者の底無しの体力があったからだ。
勇者の力がなくなったら急いで人員を増やす必要があった。
それが本来の形だから、力が無くても平気だと言ったことに偽りはない。
だけど、勇者の力が残ってありがたいのも事実だ。
魔王に感謝したことで、預かり物を思い出した。
「あ、ジン。これ魔王がお前にもって」
「なんですか?」
「求愛のアイテムだってさ」
魔王は俺の分とジンの分で、果実を二つくれた。
なんだかんだ魔王はジンを気にかけてくれる。
ジンにはまだ早いだろうけど、いつかは必要になるはずだからありがたく貰った。
「求愛、ですか。どういったタイミングに使うのでしょう?」
「魔界だと子供が欲しいと思った時みたいだぜ」
「じゃあ経済力が持てたらですね」
「しっかりしてるね……」
ジンなら相手を不幸にはしなさそうだから、安心だな。
きっと幸せな家庭をつくる。
「ジンもいつかは結婚するのかぁ」
「はい、します。絶対に」
もう決めてるの?
大人だな!?
「先生は結婚に必要な条件ってなんだと思います?」
「え、俺~? やっぱ金かな……金に困らないって幸せな事だと思うよ」
もう二度と路上でゴミを漁って、泥水を啜る生活はしたくない。
頼れる人間のいないった俺には、金が一番わかりやすい助けでもあり、力だった。
金があれば。
それしか浮かばないって、夢も希望もなかったな。
言葉にして少しだけ後悔した。
「わかりました。俺、お金いっぱい稼ぎます」
しかし、ジンはハッキリとそう言った。
数年後、ジンは世界でも名を轟かせる商人となり、莫大な富を築く。
そして俺は、その富と共にジンからあの果実を渡される事になるのだ。




