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七話  ユタカは新たな勇者誕生を見守る

 


 フランセーズもデュラムも元気そうで良かった。

 テリアの攻撃もかなり効いてるし、今のうちに二人から力を貰おう。



「フランセーズはわかったけど、デュラムはいいのか?」

「ん? ああ、俺は子供らが守れる程度の強さがありゃ十分だし。勇者になる前からそれくらいの腕っ節はあったから大丈夫だよ」



 こちらもあっさりである。

 本来なら強大な力が必要ない世界が一番良いに決まっている。

 過ぎた力を望む人間は少ないのかもしれない。



「じゃあ俺の腹に手を」



 便利な魔力通路になってる俺の腹に二人が触れる。

 金色の光がどんどん吸い込まれていく。

 俺に、リズ様の神の力があるお陰でレジィとのやり取りも難しくない。

 しっかり魔界にいるレジィに繋がっている。



「ユタカ、デュラムを掴め」

「え、はい」



 リズ様がそう言うとガクンとデュラムの全体重が俺に掛かった。

 フランセーズはしっかりリズ様が抱き留めている。

 完全に二人から神の力が無くなった影響なのか、気を失ってしまったみたいだ。



「大丈夫なんですか?」

「健康には問題ない。今のうちに二人をまた勇者にするぞ」

「そう言うと思いました」

「自分の身は自分で守ってもらわないと足手まといだからな」



 そういう建前ですね。

 レジィに二人をよろしくと言われた時点で、リズ様は自分の神の力を二人に分け与えると決めていたんだと思う。

 互いに記憶が無くてもレジィはリズ様のために頑張っていた。

 リズ様もレジィのため、メルベイユのために出来る事はしてあげたいはずだ。



「常に強い魔力を持っていても、今回のように外部から狙われる事もある。テリアに渡した短刀のように、武器を所持している時にのみ任意で勇者になれるようにする」

「変身戦隊ものみたいでいいですね」

「私が魔王なせいでどちらかと言えばヒーローよりも敵の幹部だな」



 そんな事を言いつつ、眠っているフランセーズの腕に真っ黒な聖剣が抱かれている。早い。



「真っ黒になった聖剣って英雄的に大丈夫なんでしょうか」

「心配ない、中央の宝玉に触(ふ)れれば今までのデザインにもなる」



 至れり尽くせり。ボタン一つで色が変わるペンライトみたいだな。

 地球の知識が入ったせいなのか、考える機能が俗っぽくなっていくリズ様が面白い。



「フランセーズは聖剣でいいが、デュラムは普段から持てるように包丁にでもするか……」

「外でも使いやすいようにナイフの方がいいんじゃないでしょうか」

「では折りたたみとシースナイフどっちがいい」

「俺としてはデュラムが鞘に格好良くナイフを片付ける姿が見たいです。あ、二刀流とかどうですか?」

「ふむ、いいだろう」



 本人の要望ではなく俺の要望でデュラムはシースナイフ二本になった。

 そうこうしてるとデュラムが起きた。



「ん……なんかあんま変わった気がしねぇな……」

「今、お前の手にあるナイフが新しい勇者の証だ。普段は普通の人間だが、これを持って私に願えば勇者の力が発揮できる」



 簡潔に説明を終わらせるリズ様にデュラムは苦笑いだ。



「勇者って言うより魔王の眷属みたいだな」

「その認識でも間違ってはいないな」

「ありがとな。守るものが増えた今、正直いざという時のために、この力はありがたい」



 デュラムはナイフをギュッと握り、その手を見詰める視線の力強さに、それが本心からの言葉だとわかる。

 数人の人間相手くらいならデュラムが言っていたように本当に問題はないだろう。

 しかし武装した集団だった場合はただの人間では限界がある。

 野盗や他国の軍からの襲撃は、この世界では珍しい事ではないんだ。



「あれ……僕は寝ていたのかい?」



 リズ様の腕にいたフランセーズも目を覚ます。

 直ぐにリズ様が説明を始める。



「フランセーズ、新しい聖剣だ。これでしっかり民を守るのだぞ」

「え、え? 何、なんで聖剣があるの? しかも真っ黒じゃないか……僕の心はいつの間にか汚れてしまった!?」



 珍しくフランセーズが慌てている。面白い。



「そうではない、ベースが私の魔力だからそうなっているだけだ。ここを触ればお前の色に戻る」



 言われるままフランセーズが試すと、いつもの白銀の姿が現れる。



「ああ、良かった……」



 安心しているフランセーズにも、再び勇者となった説明をリズ様がする。



「事後報告になるが、この聖剣を通して私に祈れ。さすればこれまでの様に英雄として力を振るう事が出来るだろう」

「……ふふ、あんな事を聞いておいて、また勇者にするだなんて意地悪だなぁ」



 そう言うフランセーズの声は柔らかかった。



「正直、とてもありがたいんだけど……これって、聖剣を握っている間だけなのかい?」

「いや、起動装置なだけだから手放しても問題はないが……」

「そう、ありがとう。助かる」



 フランセーズが妙に真面目な顔付きで礼をした。

 まあ剣を取り落とした瞬間に弱体化じゃ大変だもんなぁ。

 そんなほのぼのとしていた時、まだ俺達が戦闘の最中(さなか)にいた事を思い出した。



「魔王リスドォルッ!!」

「貴様だけは許さん!!」



 激昂した声が聞こえ、大気が震える程の怒気だ。

 それは魔神の声だった。あ、二人の男って双子なのか。そっくり。

 ミステリアスさのある綺麗な顔立ちの、どちらかと言えば中性的な雰囲気のあるスラリとした姿は、筋肉を誇示するイーグルとは正反対なタイプだ。

 首に並んだ目が双子の怒りを表すかの様に血の涙を流している。



「何で名指しなのだ……何で私なのだ」



 リズ様は全く心当たりがない様子なのに、明らかに双子の目的が自分であるとわかった瞬間、その場で崩れ落ちてしまった。



「り、リズ様、今度お祓い行きませんか……?」

「ど、ドンマイ……塩でもかけるか?」

「僕も浄化の魔法をかけようか?」



 思わず俺達三人は戦闘中である事も忘れ、口々にリズ様を慰めていたのだった。



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