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十一話 ユタカとリスドォルは魔神を助ける

 


「意識が戻っても神界に戻りもせずにこんな所で留まっているという事は、棲み家まで把握され恐ろしくて帰れないといった所か」



 リズ様がそう言うと、イーグルがうなだれてしまう。

 力尽くで手に入れる気満々だな、ファムエール。

 ここでも弱肉強食の怖さを知ってしまった。


 リズ様は一通り身を清め、服を着たので俺も続いて準備する。



「イーグル、何をしている、早くあがれ」

「は?」

「一応、必要があれば簡易的に作るつもりだった客間がある。すぐに用意してやるから来い」



 イーグルはキョトンとした顔をして固まっている。

 そんなイーグルにリズ様が苦笑しつつ少し声を柔らかくした。



「お前には手厚く寝食を世話になったからな。礼くらいしてやるさ」



 そういや軟禁時のリズ様の生活環境めちゃくちゃ良かったもんなぁ。

 イーグルはどう反応していいのか戸惑っているようなので、俺が温泉から引っ張り出して服とタオルを渡し、一から順に数を数えながら手を叩く。



「いーち、にーい、さーん、しーい」



 なんとなくそれに急かされたイーグルは手早く支度を終える。


 リズ様が歩き出すが、それでもまだイーグルは迷子の子供みたいに様子を窺っているので、俺が手を引いて強引に案内した。



 ◇◇◇



「こんなものか」



 リズ様は自宅の少し離れた太い木に触れ、変形させていき、幹の中を空洞にした。

 そこから更に改装されていき、ほんの十五分ほどで人が住める家にしてしまう。



「魔界の木に魔法が使えるのか」



 イーグルが驚いたように呟いた。



「厳密には魔法ではない。私は“お願い”をしているだけだ。その対価に魔力を注いでいる」



 対象に主導権があるということか。

 魔力にも色々な使い方があるんだな。

 三人で一緒に中を見てまわると、ビジネスホテルくらいには生活に必要なものが揃っている。



「最低限の物しかないが、しばらくの寝泊まりには困らないはずだ」

「ああ、十分だ」



 そろそろ眠気も戻ってきたし、一旦寝てまた明日話そうということになった。



「私の家にも好きに入ってくれて構わない。台所や食糧は一階にあるから自由に使え」

「おう、わかった」

「ではな」



 俺とリズ様は家へ戻り、寝室のベッドに入る。

 少しリズ様とお話でもできたらと思ったけど、なんだかんだ疲れていたようで即眠りに落ちていた。



 ◇◇◇



 めちゃくちゃ良い匂いがする。

 これは、ご飯の準備がされている新婚さんの生活みたいなやつでは!?

 ニヤニヤしながら目を開けると、リズ様の麗しい寝顔がある。

 あれ?

 そうなるとこれは……。



「ユタカ、リスドォル! もう昼だぞ、起きれるなら起きてこい!」



 ゴンゴン寝室の扉を叩きながら、イーグルの俺達を呼ぶ声。



「起きてる! すぐ行く!」

「む……イーグルの食事か」



 リズ様も起きてすぐ反応した。

 心なしか声が弾んでいるように感じる。



「もしかしてイーグルの用意する食事って美味しいんですか?」

「美味い」



 とても簡潔な返事だ。

 あの時にイーグルの所に長居していたらリズ様は胃袋を掴まれていたかもしれない。

 そうなる前に連れ出せて良かったと今更ながら胸を撫で下ろした。



 一階へ行くと、サラダと肉がバランスよく並んだ皿と、蒸かしたての芋が目に入る。カットされた果物と紅茶も彩りがあって目でも楽しめる食事だ。

 イーグルは大柄で食事も豪快さがありそうなのに、カラフルで小分けにされたカフェ飯が出てきて裏切られた気分だ。

 いや、筋肉に気を使っている人ほど野菜中心のヘルシーな食事だったっけ。



「どうせ暇だから作ってやった。暇だっただけだからな」



 これがツンデレか。


 リズ様は気にせず席について、頂きますの礼をして食べ始める。これは俺の家に行ってから続けているらしい。

 俺も頂きますを言ってから食べていく。


 甘味のあるタレと香辛料が絶妙に絡み合った肉が美味い。

 サラダと一緒に食べても合う。


 芋はフライドオニオンのようなカリカリしたものがかけられていて食感も楽しめる。

 味は爽やかなハーブの香りとバターのような塩気とこってり感が良いバランスで、どんどん食べてしまう。


 カットフルーツには蜜のようなものがかけられている。食べてみると、フルーツに酸味があるため、中和させているのだとわかる。


 紅茶には花びらが浮いており、気になって口に含むと甘かった。お洒落な味だ。


 全て食べ切るまで集中し過ぎて無言だった。それくらい美味しかった。

 イーグルはデュラムと友達になった方がいいんじゃないか。

 最後の紅茶まで飲み終えてから、ようやく俺は言葉を発した。



「ご馳走様でした。イーグル、めちゃくちゃ美味しかった。絶対金取れる。俺の世界でもなかなかないクオリティだと思う」



 それから食べながら感じた事を全て丁寧に伝えた。



「お、おぉ……」



 イーグルはこれまでにあまり感想を貰った事がないのか返答に困っている。

 そもそも魔神ってあんまり好かれてないんだっけ。

 誰かのために料理を出す事自体が少ないのかもしれない。



「私もユタカの言葉に同意だ。いつ食べてもイーグルの出す食事は美味だ。毎日食べても飽きないだろう」

「ま、ま、まあ。暇だからな、暇潰しにまた作るだろうから、作り過ぎた分はお前らが食べても俺サマは怒ったりしねーからなぁ!」



 リズ様の誘導もあり、それから毎食イーグルが用意してくれるようになったのは言うまでもない。



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