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十五話 勇者ユタカは勇者を譲る

 


 レジィは小学生くらいの小さな男の子の姿をしていた。

 髪は薄い黄緑色で、ふわふわしていて、絵画の中の天使みたいだ。



「やあユタカ。色々と騒がせちゃってゴメンね」

「俺はリズ様に出会えたからレジィに呼ばれて良かった」

「ふふ、あのリスドォルが誰かとくっつくなんて思いもよらなかったなぁ」



 昔を懐かしむように、柔らかい笑みを浮かべるレジィ。

 前よりも声の感じが大人っぽい。

 無くなっていた記憶はレジィに大きな影響を与えていたみたいだ。

 親友って言ってたし、リズ様と過ごした時間は膨大だったのだろう。



「もうある程度聞いたと思うけど、レジィはもう大会のルールに縛られずに動けるようになった。神としてできる限りの事はしようと思ってる。ユタカはレジィの世界で何か望むかい?」



 異世界は異世界で面白い場所だし、せっかく仲良くなったフランセーズとデュラムとは出来れば交流を続けたい。

 リズ様との異世界買い食いデートもしたい。

 そんなもんかな。



「ユタカには勇者となって得たレジィの力も、リスドォルの神の力もあるからね。レジィが拒絶しない限り移動は好きにできるよ」



 レジィは言葉にしなくても心を読むから楽だな。

 それなら話は早い。俺にはそれだけで十分だ。



「ユタカは勇者としての名声は必要ないんだね」

「その世界の名声はその世界の人間に必要だろ。俺は有名人になりたい訳でもないし、リズ様と幸せな家庭が築ければそれでいい」

「じゃあ、勇者の名声をフランセーズにあげてもいい?」



 それはいいな。

 魔王を倒した勇者っていう箔がつけば、フランセーズは自分の国を持ちやすいだろう。

 王様が世界一強いって、国民にとっては最高じゃないか?

 俺はレジィの提案に賛成だ。



「じゃあ、勇者フランセーズが魔王リスドォルを倒すという筋書きでユタカにも協力して欲しいな」

「俺が協力できる事なんてあるか?」

「あるある! 魔王を守る黒騎士がいた方が物語として盛り上がるよ!」

「やる!!」



 物語性は大切だな!

 是非とも『黒騎士が倒されて嘆き悲しむ魔王』のシーンが欲しいところだ。

 死に際の最期の口付けなんてのもロマンチックじゃないか!?

 色々と妄想が膨らんだが、俺だけ盛り上がってどうする。



「フランセーズ本人はこの事を知ってるのか?」

「うん、全てユタカの判断に委ねるって言われてるよ」



 わお、俺の返事で全てが決まってしまったのか。

 しかし、デュラムも勇者なのに勝手に決めていいのか。

 本人は勇者にこだわりがないのはわかってるけど。



「デュラムの願い事はどうなるんだ?」



 俺はデュラムの報酬が心配だった。

 正直、俺の要望よりデュラムに色々与えて欲しい。



「望むのなら何でも与えるよ。そうだね、折角だから直接聞こうか」



 レジィがそう言うと、突然デュラムが現れた。



「んお!?」

「よお、デュラム」

「ユタカ! と、神か?」



 すぐに現状を把握したデュラム。さすができる男は話が早い。



「今ね、ユタカと今後の事を話していたの。報酬、デュラムは何を望む?」

「あ、ちゃんと貰えるのか。うーん、金が一番必要だけど、それだけじゃダメなんだよなぁ」



 デュラムは孤児院をつくりたいという夢を話してくれた。

 既に魔王城で孤児を一人保護しているらしい。何が起きていたんだ魔王城で。

 話を聞いてレジィは提案する。



「適切な時に適切な援助が得られるよう、デュラムの運を少しだけ上げるのはどうかな」

「そんな事もできんのか」

「もちろん運だから何もしてない事に対して影響は出ないよ。頑張った時のチャンスが増えるだけ」



 急に大金を貰っても扱いに困るもんな。

 まだ立地も環境も決まってない今は建物を要求することもできないし。

 長い目で見ると、それが一番得られるものが多そうだ。

 デュラムも同じ結論だったようだ。



「じゃあそれで。今慌てて報酬を貰っても、後からこうしときゃ良かったって思いそうだしなぁ」

「こんな補助がなくたって、デュラムなら上手くいく気がするけどね」



 クスクス笑うレジィの言葉に、俺も同意する。

 勇者に選ばれているだけあって、デュラムもカリスマがあるし、自ら道を切り拓けるだけの実力もある。

 フランセーズ同様、今後の世界をより良く導く存在なのだと強く感じる。



「ま、苦労は少ない方がありがたいし、遠慮なく頂くさ」



 デュラムがそう言うと、金色の光の粒が雪にように降り出した。

 光の粒はデュラムに触れるとキラキラ輝いて体に入っていく。

 俺が光の粒に触れても通り過ぎるだけだ。面白い。



「はい、これで大丈夫。では次!」



 レジィが元気に手を叩いて俺達の意識を向けさせた。

 ステータスアップの余韻とか全くないな。



「勇者が魔王を倒したという事実を広める役目を、デュラムの新しい家族にやってもらいたいんだ」

「あー、なるほどな。伝説を広めるなら証人がいた方がいいわな」



 魔王城に宝を求め、忍び込もうと命懸けの旅をした少年が見たものは、勇者と魔王の直接対決だった。

 その様子を少年が町に駆け込んで広める。

 話半分で聞かれている所に、勇者が現れ、魔王討伐の証である二本の角を見せる。

 少年の話が真実となる瞬間だ。


 神殿には魔王が来ると黒くなる像があって、魔王が討伐されるとその色が白になるので、情報自体は大都市中心に直ぐまわるらしい。

 一応、俺もデュラムも村人A、Bになって、少年の話を面白おかしく追加で広める役目がある。



 そんな感じの広報活動をすることになった。

 ちなみにリズ様に角はないが、一定ダメージを与えるとドロップする設定らしい。



「おっしゃ、んじゃ起きたらジンに頼んでくるわ!」

「俺もリズ様と設定詰めたい!」

「じゃあレジィはフランセーズに教えてくるね!」



 こうして『フランセーズ英雄化計画』が開始したのだった。



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