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十一話 炎の勇者デュラムは二人を出迎える

 


 いくら待てど、ユタカは待ち合わせ場所に戻って来なかった。

 上流階級は好かないから、あまり上には行きたくはなかったが、そんな事も言っていられないので神殿にも探しに行った。

 ユタカは確実に来ていたようだが、神殿に入ってからの足取りが完全に途絶えていた。



「いきなり当たりを引いたか?」



 正直、ユタカを拉致れるような人間がいるとは思えないから心配はしてない。

 まあいいか。

 俺は魔法で文字を書き、フランセーズに飛ばした。



『ユタカが消えた。多分こっちの神殿が正解だったっぽい。戻ってきたら連絡するからゆっくりしてくれ』

『了解した。僕の事は気にしないで合流できたら城へ戻ってくれ』

『あいよ』



 やっぱりフランセーズも心配はしていないようだ。



 さて、俺も折角の地元だから、やりたい事をしよう。


 今まで、自分の腹を満たす事しか考えてなかったが、ユタカとフランセーズが喜んで俺の料理を食べてくれたのを思い出した。

 あの時、人のために料理を作る純粋な喜びを再確認したんだよな。


 食材を買い込んで、炊き出しでもすっかな。

 俺がいた時よりも、孤児がとても増えていた。

 少しでも美味い物を食べさせてやりたい。

 食うにも常に困っていた、過去の俺みたいな子供に喜んで貰いたい。



「結局こんな強さがあっても腹は満たせないんだよな」



 勇者の力を得て、一人で出来る事は増えたが、沢山の子供を救ってやるには金も人員も足りない。



「落ち着いたら、孤児院でも建てるか」



 とても良い考えだと思った。




 ◇◇◇




 それから一週間後、魔王の魔力を感じた。

 戻って来たのだとわかったので、すぐさま当初ユタカと決めていた待ち合わせ場所へ向かう。


 人通りが多い方が目立ちにくいので、一番大きな広場の噴水を指定していた。

 黒髪二人は案外すぐに見付かった。二人とも村人っぽい服装をしている。

 ユタカは完全に地元民だが、魔王はやはり顔立ちが浮き過ぎるな。



「よぉ、戻ってきたか」

「デュラム! 急にいなくなってごめん! まさか一週間も経ってるなんて思わなくて……」

「別になんも心配してねーよ。俺は俺で地元でゆっくりしたしな」



 この様子だと狙って魔王の所に行けた訳じゃないな。

 謝り倒すユタカの髪をグシャグシャにする。



「魔神ぶっ倒したんだろ?」

「おう、ちゃんと魔王様を取り返せた」

「ユタカ」



 咎めるような魔王の声にユタカは自分の口を押さえる。

 恐る恐るユタカは言い直した。



「リズ様」

「お~、お前、いつの間に魔王と名前で呼び合う仲になったんだよ?」



 これはもしや、進展したのか?

 ニヤニヤしていると魔王が俺を睨みつける。



「お前もだ、デュラム。街で魔王と呼ぶな。いつ誰が聞いているかわからぬ。リスドォルと呼べ」



 なんだ、そういうこと。

 まあ、その通りだな。誰もこんな所に魔王がいるなんて思わないだろうが、誰かに気付かれる要素は、減らすに越したことはない。



「あ、俺もリズって呼んじゃ駄目なの?」



 ユタカがギョッとした顔をして俺を見る。

 魔王がその様子に微笑みながら、ユタカの膝をポンと軽く叩く。

 おやおや?

 魔王は俺に視線を戻し、ハッキリと告げる。



「駄目だ。ユタカ専用なんだ」



 どうやらマジで進展したらしい。おめでとう。

 ユタカが真っ赤になった顔を両手で覆って震えている。



「リスドォルね、了解」



 別にそれは構わないんだけど、純粋に気になるからつい聞いてしまった。



「もしかして一週間もかかったのって、ヤりまくってたから……」

「ち、ちげーよ!!」

「ユタカ、静かにしろ、人が見ている」



 魔王は落ち着いてんなぁ。

 意識しまくってるのはユタカだけか。煙でも上がりそうなくらいの赤面っぷりである。



「ま、そっちであった事は道中にでも教えてくれ。とりあえず城に帰ろうぜ」

「そうだな。あまり外で目立って人間を刺激したくはない」



 そう言って魔王は腰掛けていた噴水の縁から立ち上がるが、しっかりユタカの手を握っている。

 想像より、魔王もちゃんとお付き合い出来ているのかもしれない。



「フランセーズはどうした」

「婚約者の所に神殿があるからそっちにいる」

「ふむ。いつかそっちにも行ってみるか、神と連絡が取れるかもしれぬ」

「急用ならこのまま向かうか?」

「いや、そこまでではないから大丈夫だ」



 まあ、魔王が大丈夫だと言うなら問題ないだろう。



◇◇◇



 セモリナを出て、魔法で飛ぶためにユタカを抱えようとしたが、奪うように魔王がユタカを横抱きした。

 別にお姫様抱っこ自体は俺もユタカを運ぶ時にしていたからいいんだが、違和感はそこじゃなくて、ライバル心を感じたんだよ魔王から。やめてくれ。



「リズ様!?」

「なんだ、うるさいぞ」



 やっぱ少し不機嫌そうな魔王の声。

 ユタカもさっき魔法で移動の空気になったら完全に俺の方に向かっていたし。互いの暗黙とは違う方向から抱き上げられたのは驚きだろう。

 俺もユタカが目前で消えて驚いた。



「あの、その、デュラムにお願いしようかな~……って思って……」

「ほう。お前は私以外の男と触れ合いたいと、そう言うのか?」



 おお、意外や意外。魔王は結構嫉妬深いようだ。



「言いません! さっきまで『魔法使えなくて俺カッコ悪い』とか思ってましたけど、今は魔法使えなくて最高って思ってます!!」

「宜しい」



 本当に宜しいか?

 なんか魔王って結構ユタカを子供扱いしてる所あるよな。



 うん、まあ、二人が幸せそうだしそれでいいだろ。



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