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十二話 黒騎士ユタカは神と会う

 


 気が付くと、最初にこの世界へ来た時に見た幻想的な草原だった。

 デカい木が目の前にあるからわかりやすい。

 俺は魔王様に運ばれて寝ていたはずだから、多分これは夢だろう。



「その通り!」



 ほらな。



「ヤッホー! 神のレジャンデールだよ、レジィって呼んでね」



 なんとなく神なのはわかってたけど、初めて名前まで知った。

 木って呼ぶのは微妙に言いにくかったし助かる。



「俺が勇者やめても連絡一つなかったのに急になんだよ」



 使命放棄を怒られるのか? 強制送還か? と、色々と考えたがこの様子では違うようだ。

 レジィが言いにくそうに俺に問い掛けた。



「魔王のこと、本当に倒したい?」

「魔王様が望むなら」



 その気持ちは本当だから即答しておく。

 離れたくはないけど、今の俺はワガママ放題の子供でしかない。

 でもそれに気付くことができた。ならばどうするか。

 相手の意思を尊重する。それしかない。

 一度離れても、成長して、魔王様に相応しい大人の男になって、迎えに行けばいい。今の俺より受け入れて貰えるかもしれない。

 そんな期待を抱いても、そもそも自分だけで世界を移動できるのかもわからないけど。



「魔王はこのまま魔界に帰らなくていいかもって思ってるよ」

「は!?」



 喜びたいが、プライバシーとかねーのかよ。

 そんな重要な情報は、魔王様から直接聞きたかった。

 まあ残りたい理由が俺とは限らないし、本当に喜べるかはちゃんと後で確認しよう。



「レジィはね、魔王が残りたいならそれでいいと思ってる。でも、危険なんだ」

「何が危険なんだ? 魔王様の影響で世界が危なくなるとか?」

「ううん。知っての通り、魔王っていうか魔物は依頼以上の事はしないからこの世界は安全。だから安心して神々は魔物を人間の間引きに使うんだよね」



 間引きって言っちゃったよ。

 人間のことを植物とでも思ってるのか。

 レジィはそんな俺の心を読んだのか、そうだよって当たり前のように返事をする。神って結構ヤバい奴なのかもしれない。



「魔王は魔物の中で、その時に最も力の強い者が選ばれるんだけど、リスドォルは本当に強いんだよ」

「ぶっちゃけ俺にはあんまりそこら辺がよくわかってないんだよな。魔王様が温厚だから、そのお力を見る事がなかったし」

「これだから魔法のない世界の人間は! 魔力のわかる人間なら魔王がどんだけスゴイのかわかるのに!」



 へー、起きたらフランセーズに聞いてみよ。

 魔王様がどんな風に見えてんのか気になるな。



「魔王以外の魔物は、強さで言うならまあ、替えがきくんだけど、魔王は神レベルでね」



 魔王様凄い。神に神レベルって言われるなんて。

 でも魔王討伐に連れて来られた俺も神レベルってことか?

 全く想像できん。

 皆みたいにかっこよく魔法も使えないし。

 異世界に来たところでほとんど俺は何も変わらなかったしな。



「魔界はすんごく広いし、魔物は単独行動が好きで、争いを好まないから、みーんな隠れててなかなか見つからないの。神みたいにお仕事の契約でもしないと本当ぜんっぜん出会えないんだよ」



 魔物なんてこの世界で大量に見たし、片っ端から倒してきたからそんなレアだったなんて想像もつかない。



「だからね、珍しく魔界から出ている魔王の力を狙う奴がいるんだよ!」

「狙うって、仲間にするのか?」

「バッカじゃないの、これだからお子ちゃまは!」



 見た目は木だし動きも一切ないけどプリプリ怒ってんだろうなってのが声でわかる。



「繁殖に使われるに決まってるでしょ!」

「はん!?」



 繁殖って、つまりセックス? 種馬的な?

 魔王様は俺に告白されても男同士だからと止められたことはないから、性別とか関係ない可能性も?

 繁殖に使うって言葉が衝撃的で、神やら魔物の常識がわからなくて大混乱だ。

 なんにせよその言い方では、合意の上で行われる行為ではなさそうだ。



「言っておくけど、普通に勇者が魔王を倒してたら、安全な魔界に戻れて、そんな心配なかったんだからね!」

「え、俺のせい?」

「だからレジィ頑張って他の勇者もすぐ送ったでしょ。魔王が長く滞在すればする程、外部から存在がバレやすくなるんだから必死に帰そうとしたのに!」



 ごめんなさい。

 好きな人をそんな状況に陥らせていたなんて。

 騎士なんて言って、結局俺は魔王様にとっては邪魔な存在でしかなかったわけだ。

 本当にダメダメな男だけど、最後くらい役に立ちたい。



 その願いが通じたのか俺は飛び起きていた。



 だけど、部屋を飛び出して目にした光景は、俺が間に合わなかったのだと悟るには十分だった。



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