十一話 炎の勇者デュラムの目的
突然、神から勇者に選ばれたんだが、俺は魔王の被害に遭っちゃいねぇ。
かといって世のため人のために頑張るぞってタイプでもない。
何故俺が選ばれたのか疑問だった。
神曰く、今度は報酬で動くタイプを選んだらしい。
今度って何だよとは思ったが、まさか俺の前に二人も勇者がいたなんてな。
魔王を倒したあかつきには、俺の願いを叶えてくれるんだとよ。
俺は貧乏な育ちだから、日々生きるので精一杯だった。
食べるもんも、ろくになかった。
背があんま伸びなかったのもそのせいだ、絶対。
まあ、そんなだから、腹一杯の飯が食べたくて。
善行も悪行も、なんでも必死に頑張った結果、空腹で倒れるなんてことがないくらいの生活は手に入った。
でもそうなると、今度は美味いもんが食いたくなる。
人の欲って際限がねぇんだ。
行き着いたのは料理の道だ。
美味い店で修業したり、自分で研究したり、食材を求めて旅をした。
俺も二十七になって、そろそろ店でも持ちたいと思ってた。
でも旅人じゃ金も貯まらないし、住む家すらないからキッチンに向かう事すら最近はできてなかった。
だから最低でも、キッチンのある家が欲しいと思ってた。
でもせっかくの願いはもっとデカい方がいい。
いっそ城でも貰うか。
でもそれだと維持費が大変そうだ。
生活が安定しそうな宮廷料理人になった方が現実的か?
願いは何個叶えてくれんのか聞いとけば良かった。
単純に大金を要求するだけでいいのかもしれない。
神は最初に、俺に必要な力を与えるとか言って、炎の力をくれた。
料理にとって火加減はめちゃくちゃ重要だから正直かなり嬉しかった。
戦闘でも大活躍だったしな。
こりゃアッサリ魔王も倒せるんじゃねーのって思ってたんだが、なんか妙なことになった。
魔王城には魔物すらいないし、外で魔王が散歩なんかしてる。
一気に焼き尽くすつもりで全力の魔力をぶつけようとしたら少年に相殺されるし、ウザい攻撃してくるし。
ただの石とは思えない威力で本気で殺されるかと思った。
銃弾だよ。あの破壊力。
ガンガン地面がえぐり取られていくんだもんよ、当たらないようにマジで必死だった。
速度が異常にあるから、こっちは魔力で炎を練ってる余裕もなくて、本当あの地味な石投げのせいで何もできなかった。
途中で仲間が増えたと思ったら魔王と話し始めて、聞いてたらなんかめっちゃ魔王はイイ奴だし。
思わず泣いちまった。
当事者の少年なんてうずくまって号泣するから俺の涙が引っ込んだ。
休戦状態になって、現在は魔王城にお邪魔してる。
少年を寝かしつけた後、情報交換をすることになった。
魔王城で元勇者二人が魔王と同居しているらしい。
どういう状況だよ。
「僕は魔物の侵略で、国が滅ぼされた元王子でフランセーズ」
「デュラムだ。重い……重過ぎる」
「デュラムはどういった理由で勇者に?」
「俺は魔王に恨みはねーが、神に願いを叶えて貰えるからだ」
「僕にはそんな報酬なかったんだけど」
俺に言われても困る。
拗ねたような王子様を無視して魔王が会話に入る。
「どんな願いを欲したんだ」
「美味い物が一生食べられますよーに」
「ふむ、食欲はひときわ強い欲望だからな……神はそこに反応したのであろう」
そんな単純な話なんだ。
「私は倒されること自体は望むところなのだが……」
魔王は歯切れの悪い様子で思案している。
「あの少年?」
「ああ。今まで絶対に私を倒さないと言って、魔王の騎士になった男だ。それが急に私を倒したいと言い出す理由を聞きたいのだ。だから今はデュラムに倒されるわけにはいかぬ」
フランセーズ情報だと少年は魔王に恋愛感情を抱いているらしい。
ちょっと面白そうだから、その話は俺も見届けたい。
「いいぜー別に俺は急がないし。それに、魔王さん……めちゃ強いっしょ」
「そうだな、異世界の勇者が呼ばれるくらいには」
口の端を少し上げただけの笑みが酷く冷たいものに感じる。
多分、魔王が本気で俺を迎え撃つと、ほぼ負ける気がする。
フランセーズと共闘でも勝率は半分もないかもしれない。
特別な呼び出しを受けた、型破りな力を持った異世界の少年でも無傷では済まないだろう。
魔王と直接対峙してみて、魔王討伐が出来レースで良かったと本気で思った。




