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2-8 見つけてしまった。
こん月は、春の下弦の月っこ。浅みどり、とでもしゃべるんだが、水だんた空さ、その月っこ浮いで、林の中さも月影、松葉だがろ一ぺえごぼれ落ぢちゃあ。だばって、爺っちゃは、まんだぐっすど眠ってら。蝙蝠、はだはだど木の虚がら飛んでく。爺っちゃは、ふとおどがっで、もう夜さなってらんずへでまっで、
「こぃは、まねじゃ。」
としゃべり、すぐ眼の前さ浮くの、あのみっつどしちゃあ婆っちゃの顔ど、おごろい聖人の顔っこで、ああ、こぃは、なんなんだばど、あのふとたぢはまんだわーばおごっだ事は無えばって、だばって、してもろ、こったにおせぐ帰ってまれば、なんぼぶわりいんだ、えい、酒っこ無えが、と瓢ば振るど、底さわんかピチャピチャど音っこす。
「あるんた。」ど、べろっどやれと、一滴のごさねえで飲んでまり、ほろりど酔っで、「や、月出てらじゃ。春宵一刻、――」などど、つまんね事ば呟いで木の虚がら出ばるど、
オヤ ナンダガナ バシライジャ
ミレバ キタエダ ユメナンダガ
という事さなるんだ。