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2-6 雨
春の夕立ぢは、珍すい。だばって、剣山ほどの高え山だば、こうだんた天候の異変も、すばすばあるど思わねばまね。山は雨にかって白ぐ煙り、雉、山鳥があぢごぢがら、ぱづぱづど飛び立づで矢ぐれえ早ぐ、雨ば避げる林の中さ逃げ込む。爺っちゃは、うるだがねえで、にたじっで、
「この瘤、雨さ打だぃでヒンヤリすのも悪ぐねびょん。」
としゃべり、なおもすばらぐ岩の上さねまったまま、雨の景色ば眺めでらばって、雨はいよいよ強ぐなり、なんも止まねえはんで、
「こりゃ、なんもろ、ヒンヤリすすぎで寒ぐなっだ。」どしゃべって立ぢ上り、でげぐくしゃみば一づすて、そがら拾ひ集めだ柴ばしょい、こそごそど林の中さ入ってぐ。林の中は、雨宿りの鳥獣でつけでら。