第七話 二日目の異世界
ベーコンの方です。この作品史上最長だと思います。
お楽しみください。
「こっけこっこおおおおおおおおおおwwwww」
騒がしすぎる。昨日の夜、「目覚まし」という魔法をかけてみた。頭の中で思い浮かべるだけでその音のアラームがなるという魔法だ。 とはいえニワトリの鳴き声を実際にアラームにするものでは無いと身をもって感じた。
関係ないが、翻訳のスキルがあるのに魔法の技名が英語なのはなんでだろう。そんなことを考えているとノック音がした。
「トシキ、起きてる?」
せっかくならソフィアの声をアラームにすれば良かった。可愛い声で起きれただろうに。
「ああ、起きてる。でも朝食にはまだ早くないか?」
「ええ。一緒に散歩でもしない?」
デートのお誘いじゃん。部屋が同じというのはさすがに気が引けたが、朝からソフィアと歩けるのは嬉しい。ついでにこの世界のこともさらに聞いてみるか。
「そうだな、少し歩くか。」
っと、その前に「洗浄」。
寝癖直さないとな。
「お待たせ、それじゃいk...」
扉を開けると、そこに居たのは寝癖の付きまくったソフィアだった。
「ははは...私寝癖がひどいんだよね...時間が経てば勝手に治るんだけどね。」
もしかして洗浄で寝癖を直すのは普通じゃないのか?
「洗浄で直さないのか?」
「!!!トシキあったまいい!洗浄。〇△□✕%※」
ソフィアの姿が一瞬光に包まれて寝癖が直った。なるほど、周りから見るとこうなってるのか。
「みんなは洗浄でなおしてないのか?」
「そもそも寝癖がつくっていう人があんまりいないからね。中には寝癖のことを知らなかったり、あえてそういう髪にしてると思ったりしてる人もいるくらいだから、周りの人も洗浄で治せーなんて言わないの。」
なるほどな。この世界の人達は寝癖が付きにくいのか、羨ましい。
「あっ、いっけない、部屋着のままだった。ちょっと部屋入るわよ。」
「ここに入ってどうすんだ?」
「決まってるじゃない?着替えるのよ。」
「はっ!?」
「あ、別にトシキは部屋にいてもいいわy」
ソフィアが言い終わる前に部屋を出た。あいつどれだけ羞恥心というものを知らないんだ。
「もう、別に出ていかなくたっていいじゃない。」
「いやいやいや、女子の着替えなのに同じ部屋にいるのはまずいだろ!」
「何がまずいの?どうせ魔法で着替えられるのに。」
あっそうなの。服まで。便利だなあ魔法って。
「そうだったのか。ん、じゃあなんで部屋に入ったんだ?」
「なんでって、魔法とはいえ人前で着替えるなんて失礼でしょ?」
そう言われてももといた世界では人前で着替えるという行為自体考えられなかったから失礼云々なんてわからない。
そんなことを考えながら宿の人に外出届を提出して散歩に行った。
外に出ると、やや肌寒かった。そう言えば、今の季節はいつだろう。
春夏秋冬...ってそんな概念がまずあるのかもわからんが。
何となく春な気もするが、どうなのだろう。
「今の時期って春か?」
「ええ、そうよ。春はちょうど冒険家が増える時期だから、新冒険家に向けて簡単な依頼が多いの。トシキにとってもちょうど...よくないか。めっちゃ強いんだもんね。」
「だが、そうは言っても自分のランクのひとつ上までしか受けられないんだろ?ならこの方が好都合だ。」
依頼がなくなっても困るしな。とはいえ、春だと朝は少し冷えるな。暖かくなる魔法...なんて都合のいいものはさすがにあるはずもなく。厳密には火を起こす魔法とかはあるが、自分の体感温度を上げたりする魔法はないらしい。ファイアーアローを自分に当てたらあったかくなるかな。やらんけど。
「ねえ、トシキ。今は依頼受けてるけど、将来的にはこの世界で何をするつもりなの?」
考えたこともなかった。元の世界なら就職するつもりだったが、この世界では何をしよう。
「一生依頼受け続ける...とか?」
何言ってんだ俺。そんな人生社畜もびっくりだよ。
「ふふっ、トシキらしいかも。」
俺ってそんなに労働者のイメージあったのか...
「そろそろ朝ごはんの時間ね、帰りましょうか。」
「ああ、そうだな。今朝はどんな飯かな...」
宿に着いたら、ぴったり朝飯の時間だった。朝のメニューは目玉焼き定食。卵は...名前を忘れたが魔物のものを使っているらしい。オークとゴブリンしか出会ってないから、名前を覚えるのには少しだけ苦労しそうだ。まあ、元の世界でドラ〇エとかのゲームやってたから、知ってるのも出てくるかもだけど。
「ねえ、トシキ、トシキがもといた世界のご飯ってどんなものがあるの??」
朝食後、ソフィアの部屋に入り会話をしていた時に、そんな質問をされた。
「うーん...この世界とそこまで変わらないな。というか、ほぼ一緒。」
種類が違うだけで料理自体は変わらない。強いて言うならそばやうどんだが、この世界に小麦粉とかがあるのかすらわからないからな。説明がめんどくさくなるから省こう。
「んじゃあ、昼は何食う?ってかどこで食べる?」
「そうね...とは言っても、お金があんまりないから安いものにしなきゃ。まあ今日分くらいなら奮発しても大丈夫だとは思うけどね。コツコツ貯めていくのも大事だから。」
...お金があんまりない?
「おい、ソフィア、もしかしてお前、俺と会った時の所持金って...」
「ん?持ってないわよ?銅貨1枚も。」
マジかよ。俺と出会わなかったらどうするつもりだったんだ、こいつ。
野宿か?こんな美少女が?不審者ホイホイじゃん。
結局、昼は各々で別行動で食べることにした。俺は昨日の夜のステーキがうまかったから近くの店で食べてきた。
大銅貨1枚と手頃な価格だった。って言ってもこの世界の金銭感覚にそこまで慣れていないからはっきりとは言えないが。
それから、俺は朝のメモの続きを書いた。
「えっと...この世界のお金は銅貨...大銅貨...」
メモしてるだけなのに1人でボソボソ言っちゃうんだよな。この癖直したいんだが。
それからは、昨日と何ら変わらずにソフィアと夜飯を食べ、洗浄、就寝といった流れだ。2日目にして、以外とこの世界に慣れてきたかもしれない。明日はまた依頼を受けるとしよう。
「おやすみ、俺。」
そう言って、俺は朝の反省を活かしてソフィアの声を目覚ましにセットし、眠りについた。
完全に自分のペースで物語進めちゃってるんですよ。お互いが。なので軌道修正のしあいみたいな感じになってるかもしれませんが、そこはご愛嬌ということで(笑)
次回もお楽しみください。