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白黒の玉座  作者: 白と黒
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第1章:1話白き者の噂


 精霊街道---それは精霊たちが人間界へ出向くための道。

 精霊以外がその道を利用することは滅多に無い。

しかしここ数日精霊以外の存在が街道を進んでいた。

 

「ここがそうなの?」

「はい、私達はこの泉を通って人間界に召喚されます」

「金色の輝きを放つ泉か~これは珍しいまるで水そのものが生命力で溢れているようだ」

 

 金色に輝くその泉は精霊街道の終着点にひっそりと存在していた。

 精霊たちに道案内を頼みここへ連れてこられた僕は今まさに異世界へと足を

 踏み入れようとしている。憧れた世界へようやく行けるのだ。僕の心は今はち切れんばかりの

 高揚感に満ちていた。


「泉の水面を御覧ください。あちらの世界が見えるはずです」

「あ!ホントだ。 たくさんの人の顔が見える」

「それは精霊を求める人間たちの顔です」

「人間の?」

「はい、私達精霊は彼らの発する魔力によって契約者を選び召喚されます。

 今ご覧になられている人間は中の下程度の魔力を保有し中級精霊程度なら

 養うことができるでしょう。我々の生きる糧は生命の魔力ですから」

「その本質は理解してるよ、だけど僕がここへ来た理由はそっちじゃないんだ。

 自然召喚のほうなのさ」

「自然召喚ですか? しかしそれには大量の魔力を自ら消費し移動することになりますが

 大丈夫なのでしょうか? 見るからに所持魔力量は基準値を満たせてないようですが」

「それは大丈夫僕は魔力の他に違う力を持ってるからね。それを代用して移動するから」

「違う力……ですか」

「うん、だから自然召喚の工程を教えてよ」

「工程は簡単ですこちらにある扉をくぐるだけでございます」


 人ひとりが通れるような小さな扉。

 

「これを開けばいいの?」

「はい」


 僕は言われるがまま扉を開く。

 開いた瞬間周囲に光が溢れ、そして


「それではよい旅を」

「うん、世話になったね。ありがとう」

「私は案内人の役目を果たしただけですので」

「それでもありがとう」

 

 光は僕を飲み込み光のみちた世界へと誘い導いた。

 再び目を開くとそこは僕の知らない世界だった。

 

 …………

 ……

 

 精霊師、それは精霊と契約し精霊の力を得て魔法へと変換する精霊魔法師の通称。

 精霊師にも階級が存在する。下から見習い精霊師に始まり下級精霊師中級精霊師上級精霊師

 などが存在する。中でも最上級精霊師は上級召喚が可能で精霊の力をフルに発動することができる。

 その上には司祭や大司祭という役職もあり力は上級精霊師を遥かに凌ぐ魔力を持ち合わせている。

 そんな精霊師たちの業界で、今最も話題になっていることは数日前に起こった不可解な

 召喚事件についてだ。

 

 桃色をしたボブカットヘアーの少女。目は黄金色に輝き整った顔立ちは品格さえも漂わせる。

 彼女リリス・ラングレイはその日、精霊協会で起こった不可解な事件について聞き取り調査を行っていた。


「本当に見たんだ私は」

「何を見たんですか?」

「白い天使さ、あれは間違いなく天使だった」

「いや私が見たのは大きな犬だったよ? 白くて可愛くてでもなにか神々しい感じがしたね」

「神々しい犬ですか?」

「いや、だからあれは絶対天使だって」

「あんたの目は節穴かい? どう見たってあれは犬だったよ」

 

 中年の男と中年の女が何を見たかで言い争ういなりもみ合いの喧嘩へと反転する。

 そもそも何故こんなことになったのかと言うと、話は数日前に遡る。

 彼らの話によると精霊協会に精霊の祈りをしに訪れた時突然泉が光りだして

 その光の中から白いなにかが飛び出して来たのだという。不思議なことにその光を浴びた

 人間は見違えるように健康になり生気に満ち溢れたという。精霊協会の支部長はそれを

 精霊王がもたらした奇跡だといい精霊協会の本部。王立精霊師協会に調査を依頼。

 その結果若干16歳で上級精霊師となったリリスにその調査が任された。

 胡散臭い匂いがかなりする事件だ。前にも一度支部の協会で精霊王が降臨した。

 この協会は今精霊王がおわすのだ、などと虚言を話した支部長がいた。

 実際その言葉につられて多くの来訪者が訪れその支部は大いに賑わったのだ。

 その後調査の結果そんな存在は確認できず、後に支部長の嘘だったということが判明し

 その支部長は破門されたとかされなかったとか、とにかく今回も同じような報告なので

 リリスは怪しみつつ調査を続けていた。しかし全快の例とは違って今回は本当に

 傷や病が治っていることが判明した。今言い争いをしているこの2人に関しても

 男の方は足を失い片足で生活していたのにその光を浴びた瞬間足が突然生えたかのようにして

 生成されていた。女の方は毎日止むことない喘息に悩まされ参拝していた当時もひどいせきをしていた のに光を浴びたその日から喘息にはならず普通に生活できるようになったという。

 喘息はともかく足が生えるなんて聞いたことがない。どんな神聖な魔法だって失った

 部位を再生させることなど敵わないのだ。 


 リリスは2人に一礼しスタスタと協会を後にした。

 

 彼らは天使や白い犬を見たという。実際そんな驚異的な力を持つものが現れたのなら

 協会はなんとしてもその存在を探し当てないと行けないだろう。それがもし伝説に

 歌われる精霊王や精霊神ならば我々は最大のもてなしを持って協会に招かねばならないからだ。

 

 リリスは考えながら外で待つ2人の護衛に声をかけた。


「あなた達も町で話を聞いたのでしょう? なにか変わったことはなかったのかしら?」

 

 すると赤髪の20代後半の男がローブ姿で口を開いた。


「面白い話を聞いたぜお嬢」

「私も聞きました」

 

 黒髪の男も20代後半か、それより少し若いような人相で同じくローブをまとっている。

 ふたりとも腰には剣が備え付けられローブの奥からはわずかに鉄のこすれるような音も聞こえてくる。

 彼らはリリスの護衛であり、友でもあった。


「どんな話を聞いたの?」

「俺は町の冒険者ギルドの酒場で死んだのに生き返ったって妙な話を聞いたんだ」

「死んだ人間が生き返る? そんな馬鹿な話があるわけ……」

「俺も最初はそう思って馬鹿にしてたんだが、その態度が悪かったみたいでなぁ~

 この話をしてくれた男が突然合わせてやるよって言ってき実際死んだはずの人間の元まで

 案内してくれたんだ。そしたらその男AA級の冒険者で嘘をつく意味もない感じの男でよぉー

 男は確かにS級魔獣に殺され息絶えたらしい。で、気がついたら戦った場所に倒れてて

 外のメンバーも皆四肢が再生した状態で生き返ってたらしいんだ。で、さらには苦戦して倒すことすら

 叶わなかった魔獣を何か鋭利な刃物で切り裂かれたような状態で死滅している魔獣の死骸がそこにはあったらしい、冒険者たちはそのまま帰還して

 今街中でその事を言いふらしてるらしい。本当におかしな話だが実際に起こった出来事らしいんだ」

「死んだ人間の完全蘇生……エストニア帝国の魔法聖導師は蘇生魔法を扱えると聞くわ。しかし

 彼らの蘇生した人間は何かを失った状態で蘇生され魔力も多くを放出し数ヶ月はまともに歩くことすら

 ままならないらしいわ。帝国の魔法聖導師の実力はS級魔道士にも匹敵するらしい。それを考えると

 冒険者を蘇生させた存在はそんなS級の魔道士すら到達できない完全蘇生魔法使い彼らを蘇らせた。

 驚異的ね、おそらく伝説級の魔法。でもおそらく私達が追っている人物でもあるわ」

「私も同じような話を聞きました。話によると魔獣を倒した人間を見たというもので

 その人物は白い髪に男か女かわからないほどの美貌をした若い人間だったらしいです。

 側には白色の犬を連れ、男が何か魔獣につぶやいたその瞬間、目にも止まらぬ速さで

 一閃し、魔獣は真っ二つになって死滅したそうです。そして去り際白い犬が次々と

 人間たちを丸呑みにし始め、彼も食べられてしまったらしいです」

「その話はおかしいぞ? その犬に食べられたんだろう?なのになぜそいつや外の冒険者が生きている?」

「それはわからない。だが不思議なことに彼らの負っていた傷がすべて治癒していたらしい」

「それはおそらく治癒系の召喚獣ね、世界にはそんな特殊な召喚獣を扱える人間がいるらしいわ」

「召喚獣……S級魔獣を一閃で倒せる実力に信じられないほどの治癒系魔法。一体そいつの正体は何なんでしょうね……」

「私にもわかりません。だからこそ我々は探さなくてはなりません。その者が何者で何をなそうとしているのかを」

 

 その日、リリスラングレイの日誌にはこう書かれていた。

 

 伝説の精霊王か、それとも天の使いか、いずれにせよそれは人の形をした人ならざるものだ。

 私達はそんなとんでもない存在を探さなくてはならない。兄上様私は今非常に憂鬱です。

 こんな面倒ごとを押し付けるなんて精霊協会のたぬきジジィーどもめ、許さないわよ!

 私が大司祭になったあかつきにはまっさきにあのジジィーどもを酷使してやるんだから

 

 っとその日の日誌には書かれていた。

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